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地球を人工的に冷やす
「太陽地球工学」研究、
いまどこまで進んだか
John MacNeill | Courtesy of IRIS AERO CORP.
気候変動/エネルギー Insider Online限定
Hacking the atmosphere: Geoengineering gets a reality check

地球を人工的に冷やす
「太陽地球工学」研究、
いまどこまで進んだか

火山の噴火を模し、成層圏に微粒子をまいて太陽光を跳ね返す——地球を冷やす「太陽地球工学」の研究が、コンピューター・シミュレーションの段階を超え、実際にどう実行するかを問う工学の段階に入りつつある。高高度機の設計や、まく物質の選定が具体的に動き出した。だが安全性もコストも未知数で、そもそも地球規模の介入が許されるのかをめぐり、賛否は鋭く割れている。 by James Temple2026.06.23

この記事の3つのポイント
  1. 太陽地球工学の研究がシミュレーション段階を超え、航空機設計や粒子散布技術など実用工学の段階へ移行しつつある
  2. 成層圏への物質散布に必要な高高度航空機や観測インフラ等、未解決の工学的課題が多く、初期展開だけで350億ドル・10年超を要する可能性がある
  3. 研究の加速が地球工学実施の既成事実化を招くという批判がある一方、支持者は早期の工学的理解こそが将来の安全な判断を可能にすると主張する
summarized by Claude 3

ジム・フランケが、自身のオフィスのコの字型のデスクに置かれたプレゼンテーションの表紙をめくると、ずんぐりとした胴体から巨大な翼が伸びる、奇妙な形状の航空機のイラストが現れた。

この無人機は、民間ジェット機の飛行高度よりも数千メートル上を飛行する。それは、地球の丸みが見えるほどの高さだ。まさに、地球を人工的に冷却するために必要なタイプの航空機と言えるだろう。その巨大な翼は、機体と搭載物を地表から約20キロメートル上空の成層圏に留めておくためのものだ。成層圏の空気密度は地表付近のわずか5%程度と非常に薄い。成層圏の高度に達すると、無人機は機体から物質を放出する。この物質は、いくつかの化学反応を経て、太陽光を宇宙へと反射させる。

「近い将来に20キロメートルの高度に到達したいなら、これが恐らく最良の選択肢でしょう」と、シカゴ大学で研究助教授を務めるフランケは話す。彼は、地球温暖化に対抗するために気候システムに人為的に介入するという、物議を醸している太陽地球工学(ソーラー・ジオエンジニアリング)に関連する工学的課題の解決に力を注ぐ、少数ながらも増えつつある科学者グループの1人だ。

彼らのコンセプトは火山活動から着想を得ている。過去の大規模な噴火では、二酸化硫黄をはじめとする化合物が成層圏に吹き上げられ、太陽光を散乱させる粒子へと変化することで、世界的な気温の低下をもたらした。ここ数十年の間に実施された数百もの研究は、このメカニズムを人間が模倣すれば、少なくとも気候モデルの枠組み内では、迅速かつ効率的に効果を発揮するだろうと示唆している。

しかし、こうしたコンピューター・シミュレーションは、現実世界の仕組みを近似的に表現したものに過ぎない。そこでは多くの課題が見落とされている。たとえば、必要な量の物質を積載して必要な高度まで運べる航空機は存在しない。あるいは、放出する物質の大部分が凝集して空から地上に落下してしまうのではなく、微細な反射性エアロゾルに変化するように放出する確かな方法が分かっていない。また、安全性、コスト、有効性に関する疑問が未解決で、航空機に搭載する具体的な物質の種類さえも定かではない。

こうした未知な要素が積み重なる中、太陽地球工学に関する研究は、コンピューター・シミュレーションの段階を超え、気温を下げるための作戦を実行するうえで必要となる詳細な設計や実用的工学作業へと突き進んでいっている。必要なタスクは、高高度航空機の開発から、物質散布における精密な化学反応の理解と散布メカニズムの確立、さらには実際に効果があったかどうかの確認に必要な監視インフラの構築まで多岐にわたる。

地球を地球工学的に改変すべきかどうかという問いには、明確な答えはない。壊滅的な熱波、洪水、干ばつ、飢饉の危険性を軽減することで、何百万人もの命を救うことができるかもしれない。しかし、多くの人は、これほど大規模で複雑かつ相互に関連し合う地球規模のシステムを人為的に操作した場合、その連鎖的な影響を予測することは不可能だと主張し、検討することさえ危険極まりなく、あまつさえ真剣に研究することなど論外だと考えている。

研究を批判する人々は、この研究段階における勢いの高まりによって、依然として未知の要素や世界の一部地域への危険性を顧みず、ついには世界のどこかで誰かが地球工学プログラムの実施に踏み切る可能性がますます高まるだろうと主張している。

「科学技術の現状を考えると、これは非常に危険なことだと思います」と、アイルランドのメイヌース大学で「気候正義」を専門とするジェニー・スティーブンス教授は述べる。「投資が増えれば増えるほど、技術が進歩すればするほど、地球工学的な改変が実施される可能性は高まります」。

一方、この実践的な研究の支持者たちは、太陽地球工学プログラムをどのように実施するかをシミュレーションすることで、潜在的なメリットとリスクへの理解が深まり、もし誰かが気候を人為的に操作しようとした場合でも、少なくとも情報に基づいた、より安全な方法で実行できる可能性が高まると主張している。

地球工学は依然として非常にニッチな研究分野である。現在進行中の研究の多くは、シカゴ大学の気候システム工学イニシアチブ(CSEi)で実施されている。CSEiは、著名な地球工学研究者であるデビッド・キース教授のリーダーシップのもと、2024年に正式に発足した。

地球科学の博士号を取得する前は熟練のエンジニアだったフランケは、地球工学における多くの不確実性の解消を目的とした、相互に関連する一連の研究プロジェクトや共同研究を統括している。その中には、現在彼の机上にある設計図、つまり地球工学プログラムの初期段階で使用される可能性のある航空機を表現したレンダリング図の作成も含まれる。

フランケは、コンピューター・シミュレーションをいくら増やしたところで、この分野に残された大きな疑問、中でも最も切実な「起こり得る最悪の事態」に対する答えは得られないと主張する。

「個人的には、モデル開発やシミュレーションを増やしても、そうした疑問が十分に解決されるとは思っていません」と彼は言う。「ですから、これ以上モデルを増やすことにはあまり興味がないんです」。

フランケとしては、次のステップに進むべきタイミングという考えだ。「これをやろうというのなら、実際にどうやるのか見てみたいのです」。

分かっていないこと

太陽地球工学は往々にして、気候変動に対する比較的安価で容易な解決策として論じられる。しかし、研究者たちがその細かい部分を掘り下げていくと、かなりの不確実性やツールの不足、さらにはインフラの未整備が明らかになる。

これらは必ずしも計画を頓挫させるものではないかもしれないが、太陽地球工学プログラムの初期段階を実施するだけでも、必要な要素の開発には時間と資金が必要となる。この研究の本質は、実際に何かを立ち上げることではなく、それを実現するために何が必要かを解明することにある。

サンフランシスコに拠点を置く新興非営利団体のリフレクティブ(Reflective)は最近、この分野の科学者たちと協力し、まだ分かっていないことがどれだけあるのかを明らかにしようとした。

この取り組みは、寄付者から資金を集めて地球工学研究に充てているリフレクティブが、「適切に管理された、適度な」シナリオと表現する構想の概要を示すことから始まった。2035年に、ある国家または国家グループが小規模な地球工学プログラムの展開を開始し、成層圏で反射性エアロゾルに変化する二酸化硫黄または硫化水素ガスを北極と南極付近に同量ずつ散布するというものだ。この初期プログラムでは、気温を約0.1℃下げるのに十分な量の物質が放出され、産業革命以降に世界全体で起きた約1.4℃の温暖化のうち、そのごく一部を解消することになる。

このシナリオをはじめとする初期段階の地球工学シナリオにおいて、極地が重要な位置を占める理由は単純だ。極地では成層圏が高度7キロメートルから始まるのに対し、赤道付近では高度約18~20キロメートルから始まるからである。そのため、極地では成層圏への到達が容易になり、既存の航空機を若干改造するだけで、かなりの量の積荷をそこまで運ぶことが可能になる。

問題となるのは、冷却効果が最北端と最南端の緯度でより顕著になるという点だ。その理由は、他の複雑なメカニズムに加え、熱帯上空の成層圏の高温が、極付近で放出されたエアロゾルが赤道方向へ流れていくのをほぼ阻止してしまうからだ。したがって、北極や南極地域で地球工学的な試みを実施しても、熱帯周辺の高温で貧しい国々、つまり気候変動に対して最も脆弱な地域への効果は比較的軽微なものにとどまる可能性が高い。

世界を均等に、そして公平に冷却するには、最終的には赤道付近への飛行を増やす必要があるだろう。リフレクティブのシナリオでは、今後10年ほどでプログラムは規模を拡大し、新型航空機が亜熱帯上空を飛ぶようになり、地球全体の気温を0.5℃低下させるのに十分な量の物質が放出されることになる。

地球工学の研究者たちが次に検討したのは、「もしこのようなシナリオを実行に移すとしたら、それを成功させるためには他に何が必要になるのか?」という問いだった。

その結果、やるべきことはかなり多いことが判明した。2026年に入って、リフレクティブはSAI不確実性データベース(SAIは「成層圏エアロゾル注入」の略)を公開し、さまざまな科学的未知数と6つの工学的課題を明らかにした。

その中には、プロジェクトの初期段階を実行するために、既存の航空機を改造するのがどれほど困難で、どれだけの費用がかかるかを把握することが含まれていた。また、極地での展開には、新たな空港の建設、物資輸送のための新たな航路や鉄道の整備、そして原材料を処理する施設(例えば、元素硫黄を燃焼させて二酸化硫黄を生成する施設など)の建設も必要となる可能性がある。

さらに、より多くの観測機器を開発し、気球、ドローン、その他の航空機に搭載して成層圏に送り込み、成層圏の基本的な化学組成、反射率、化合物の分布を観測するとともに、新たな物質が放出された後にどのような変化が生じたかを追跡する必要もある。

そのうえ、成層圏を宇宙から観測する主要な衛星が今後数年以内に運用を終了する予定であり、2025年に『米国気象学会報(BAMS:Bulletin of the American Meteorological Society)』に掲載された論文が警告したように、「差し迫ったデータ不足」のリスクが生じている。いくつかの新しい観測機器が開発中または打ち上げ準備段階にあるが、基準となる状況を明確に把握しておきたいタイミングで、観測データに空白が生じる可能性があると、リフレクティブは指摘している。

リフレクティブでCEO(最高経営責任者)を務めるダコタ・グルーナーは、同団体が太陽地球工学の活用を推奨しているわけではないと強調する。その一方で、気候モデルの仮定を検証するために、工学的な不確実性への取り組みを今すぐ始めることが、この分野にとって重要だと述べている。それは、コンピューターシミュレーションで検討されたシナリオが、現実世界で実行可能か …

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