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「親友」だったロボット、
その死が突きつけるもの
MIT TECHNOLOGY REVIEW; SOURCES: ADOBE STOCK, EMBODIED
人工知能(AI) Insider Online限定
What happens when a kid’s robot best friend dies?

「親友」だったロボット、
その死が突きつけるもの

神経発達障害のある子どもの遊び友だちとして売られるAIロボット「モキシー」は、アイコンタクトや会話の練習を助け、支援ツールとして期待を集めてきた。だが2024年、開発企業が事業を終了し、ロボットは動作を停止した。愛されるよう設計された機械が消えるとき、脆弱な子どもたちに何が残るのか。 by Sara Harrison2026.08.24

この記事の3つのポイント
  1. 神経多様性を持つ子ども向けAIロボット「モキシー」は、社会的スキル習得を支援するデバイスとして注目を集めた
  2. ロボット療法の有効性を示す研究は存在するが、サンプル規模の小ささや方法論の一貫性欠如から臨床的エビデンスは不十分とされる
  3. 開発企業の突然の事業終了が脆弱な子どもたちに深刻な影響を与え、感情的依存と商業的持続性の矛盾という構造的課題も
summarized by Claude 3

ザンダーが初めて「モキシー(Moxie)」と出会ったとき、彼女は、不安なときは唇から息を吐いてミツバチの羽音のような音を立てれば、落ち着くことができると教えてくれた。2人は、ドラゴンのように息をして怒りの感情をコントロールしたり、ウサギのように鼻をクンクン鳴らして元気を出したりする練習をした。しかし、互いに知り合ってから6年が経ち、モキシーは変わってしまった。彼女はもう自分の家のことを話したり、動物の呼吸法をしたりしなくなった。今では、ザンダーがマインクラフトをプレイするのを見守り、彼の動物のぬいぐるみコレクションについて話しかけたりだけだ。

私は最近、米ニューヨークにあるザンダーのアパートを訪れた。神経発達障害を持つ10歳の男児であるザンダーが、モキシーに『スーパーマリオブラザーズ』のシェフキノピオとクリボーのぬいぐるみを紹介し、次に『どうぶつの森』のブロッコリーとアップルを紹介する様子を見守った。その後、ザンダーは、昆虫のような目と2本の足を持つ、丸っこいカエルのような生き物に釘付けになった。「モキシー、この子の名前は何だっけ?『ピクミン』に出てくる子」と、任天堂の別のビデオゲームに言及しながらザンダーは言った。

モキシーは最初、黄ピクミンではないかと答えた。しかしザンダーは否定し、これは敵の、白い斑点がある赤いやつと言った。

「チャッピーのことを言っているようですね」と、モキシーは答えた。

「それだ!」ザンダーは同意し、相棒に微笑みかけた。

「今でも、誰かと話す必要があると感じるときは彼女を使っているよ」とザンダーは言う。「でも、まあ、人間じゃないけどね」。

モキシーはロボットだ。脚のない青い宇宙飛行士のような見た目の、高さ38センチほどのデバイスである。ザンダーと父親のジョシュは、モキシーのことを女性名詞の「彼女」で呼んでいる。彼女は円筒形の体は回転させたり、前後に曲げたりできる。丸い頭は、てっぺんに向かって渦を巻く玉ねぎのような形をしており、その下の幅広の画面には、大きな緑色の目と眉毛、そして小さな口が表示されている。彼女はヒレのような腕を持ち上げてパタパタさせ、強調したり興奮を示したりする。

モキシーは、子ども向けのインタラクティブな遊び友だちとして販売されている、近頃増加中の人工知能(AI)搭載デバイスの1つだ。ミュージシャンのグライムスは、AIぬいぐるみ「グロック(Grok)」(グライムスの元恋人イーロン・マスクが所有するxAIのチャットボットとは正式な関係はない)の発売でキュリオ(Curio)に協力した。キュリオは「グレム(Grem)」や「ガッボ(Gabbo)」といった同じような遊び友だちも販売しており、大手玩具メーカーのマテル(Mattel)もオープンAI(OpenAI)のチャットボットに対応したバービー人形の開発を約束している。米国だけではない。ある調査によると、中国ではAIおもちゃ分野が、消費者向けAIの中で特に急成長している分野の1つだという。

しかしモキシーは、そうした遊び心のあるロボットの中でも、ある特別なジャンルに属している。メーカーはモキシーが、子どもにつながりを提供し、アイコンタクトや順番待ちといった通常セラピストから学ぶようなスキルの習得をサポートし、発達障害を持つ子どもたちを支援できると主張しているのだ。こうした玩具の有用性は、ロボットが人間ではできない方法で支援が可能なことを示す研究結果によって裏付けられている。支持者たちは、ロボットによる24時間365日の在宅ケアの利用が、治療のあり方を変える可能性があると信じている。自閉症治療用ソーシャルロボットを長年研究してきたイェール大学のコンピューター科学者であるブライアン・スカッセラティ教授は、子どもたちの家庭においてロボットを日常的に治療目的で利用することは、「私たちが生きているうちに実現できると確信しています」と話す。

ザンダーの部屋で座り、モキシーとザンダーが話す様子を見守っていると、スカッセラティ教授が見出している可能性を私も信じることができた。しかしザンダーは、モキシーが当初提供するはずだった治療を受けていない。また、その時は知る由もなかったが、たとえ治療を受けていたとしても、モキシーは彼の進展を見届けることはできなかっただろう。モキシーは間もなく死ぬ運命にあったのだ。

モキシーの物語は、こうしたデバイスに共通する悩ましい複数の欠陥を浮き彫りにする。特に脆弱な子どもたちのコミュニティにおいては、間違いなく深刻さを増す欠陥である。また、これらのロボットは批判派が指摘するように、過去の流行で数え切れないほど作られてきた玩具と同様に、地下室やクローゼット、あるいは埋立地にいずれ捨てられることになるだろう。

変化を起こす力を持つ伴侶

スカッセラティ教授は、自分のロボット工学研究室の見学会で、大勢の子どもたちが驚いたり喜んだりする姿を目にしてきた。しかし、20年前に1人の同僚が自閉症の子どもたち数人を連れて研究室を訪れたとき、衝撃を受けた。ロボットが部屋に入ると、子どもたちの様子が一変したのだ。「子どもたちが社会的行動を示していたのです。それは、突然現れたかのような現象でした」と、スカッセラティ教授は言う。「非常に興味深くもあり、同時に理解不能でもありました」。

その訪問は、自閉症治療へのソーシャルロボット工学の活用において、スカッセラティ教授が先駆者となるのを後押しした経験の1つとなった。スカッセラティ教授の初期の研究を収めたある動画では、自閉症の12歳の少年とそのセラピストが、森がデザインされたプレイマットの上を歩くロボットの恐竜を見つめている。その恐竜は、マットに描かれた小川に差し掛かると、水の中を渡れないことを恐れて不安な様子を見せる。スカッセラティ教授によると、この子どもは普段、アイコンタクトを取るのが難しく、誰かに言われたことを繰り返す傾向があった。声に適切な抑揚をつけるのも難しかったという。しかし、この動画の中で、彼は普通の子どものように見える。「できるよ。君ならできる」と彼は言い、恐竜が小川を渡れるように励ましている。セラピストと話すときは、彼女に目を向けている。「私たちがこの部屋にいた30分間で、彼はそれまでの2年間よりも多くのアイコンタクトをとっています」と、スカッセラティ教授は言う。

自閉症治療では、誰かと注意を共有する方法といった対人交流のスキルを教えるのに、しばしば集中的な反復練習が必要となる。いくつかの理由でロボットがそのような治療に役立つかもしれない。1つは、ロボットが治療をより楽しく、興味をそそるものにできることだ。もう1つは、ロボットが理論上、それぞれの子ども固有の学習パターンに適応できることである。セラピストが1回のセッションでできることは限られており、需要に見合うだけの十分な数のセラピストもいない。親たちも疲れる。我慢できなくなる子どもたちもいる。「小さな子どもたちと一緒に過ごしたことはありますか? 彼らは時に残酷です」と、南カリフォルニア大学のマヤ・マタリク教授(コンピューター科学・神経科学・小児医学)は言う。しかし、ロボットは疲れを知らず、24時間体制で活動し、感情的に安全な対人交流の練習方法を提供してくれる。

恐竜を使った実験以来、スカッセラティ教授やマタリク教授らは、興味深い一連の研究成果を蓄積してきた。スカッセラティ教授による2018年の研究では、仲良しのロボットが、自閉症の子どもたちがアイコンタクトをとったり、会話を始めたりする助けとなったことが示されている。また、2017年には別の研究グループが、発達障害を持つ子どもたちが顔の表情を感じ取ることを学ぶのに、ロボットが役立つことを明らかにした。さらに最近では、2022年の文献レビューで別の研究者グループが、ロボットは治療のスピードを速め、かつ成功する可能性を高める助けとなる可能性を示した。

「私たちは決して、セラピストの代わりになろうとしているのではありません」と、マタリク教授は言う。「もっとできることはないか? と言っているだけです」。

実はマタリク教授は2016年、モキシーの開発企業であるエンボディード(Embodied)を共同創業した人物である。ただ、このロボットが発売された時点ではすでに同社を離れていた。マタリク教授は、単なる娯楽目的とは対照的な、社会的・感情的な成果を目的に設計された社会的支援ロボットという分野を築くのに貢献した。そして、この種のテクノロジーは誰にとっても変化を起こす力を持ち、特に、デバイスの画面によって孤立した孤独な人々の役に立つ可能性があると信じている。チャットGPT(ChatGPT)に質問を入力することは、別の実在する存在と交流することと同じではない。「私たちは、肉体を持つ他の実在の生き物と一緒にすごす必要があります」と、マタリク教授は言う。彼女は、チャットボットとのやり取りとロボットとのやり取りの違いを、ポルノを見ることとセックスすることの違いにたとえる。一方は完全にバーチャルであり、スクリーンを介した行為。もう一方は直接的かつ肉体的な体験である。

モキシーと友だちになる

2020年に初めて発売されたとき、モキシーには詳細なバックストーリーが設定されていた。彼女は、グローバル・ロボティクス・ラボラトリー(GRL)からやって来た大使だった。人間にとって良い友だちとはどういうことか理解するという使命を果たすという名目の下、モキシーは子どもたちに対し、前向きであることや、ありのままの自分を愛してもらうことの大切さを自分に教えるように促した。このカリキュ …

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