KADOKAWA Technology Review
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「神の声」に従っただけ——
信者から300万ドルを集め
草コインを売った夫婦の末路
Matt Nager
カルチャー Insider Online限定
God told them to sell crypto. Their investors lost everything.

「神の声」に従っただけ——
信者から300万ドルを集め
草コインを売った夫婦の末路

キリスト教徒を中心に500人以上が、ある夫婦の発行した草コイン(実体の乏しい小規模な暗号資産)に300万ドル以上を投じ、そのすべてを失った。夫婦は詐欺を否定し、自分たちはただ「神の声」に従っただけだと主張し続けている。宗教コミュニティの信頼を利用した「アフィニティ詐欺」の訴追が相次ぐ一方、米国では暗号資産の規制と取り締まりが大幅に緩んでいる。 by Katia Savchuk2026.09.17

イーライ・レガラードは、初めて神の声を耳にしたとき、自分が幻聴を聞いているのではないかと疑った。今では、その体験を「自分のものではない思考が浮かんでくる」ようなものだと表現している。神聖な言葉が、映画のセリフや愛する人の声の記憶のように、心の中で響くのだ。「『こうしなさい』といった命令調ではありません」とイーライは説明する。「ただ内側から『自分はこれをするのだ』と確信させられるような感覚なのです」。

神聖なメッセージは、イーライが祈ったり、本を読んだり、テレビを見たりしている最中に毎日のように届く。それらは時として、預言的な夢や見知らぬ人からの便りという形で現れる。また、イーライがふと立ち止まり、「主よ、ここで何をおっしゃりたいのですか?」と問いかけた瞬間に、その答えが示されることもある。

イーライの妻ケイトリンの場合、天からの知らせはシャワーを浴びているとき、つまり、ようやく自分一人になれる時間に届くことが多い。また、自ら天に助言を求めることもある。「日記を書きながら祈り、問いかけ、そして聞こえてくる言葉こそが神のものだと、ただ信じるのです」とケイトリンは語る。

神からの指示はこれまで多岐にわたってきた。レガラード夫妻によると、神は彼らに結婚し、家を買い、子どもをもうけるよう告げたという。イーライがコロラド州でマーケティング会社を経営していた頃には、社名や採用すべき人材、引き受けるべきクライアントまで神が指示した。その後、神はイーライに、自宅のリビングやオンラインで説教を始めるよう命じた。レガラード夫妻は常にその指示に従った。

2021年、イーライが41歳、ケイトリンが28歳のとき、神の導きは2人を予期せぬ新たな方向へと向かわせた。それは「暗号資産」だった。

その年の10月、後にレガラード夫妻が法廷で証言したところによると、イーライの姉妹夫婦から、あまり知られていないあるデジタルコインの保有分の一部を譲り受けた。そしてイーライは、「富の移動のために、これを私の民のもとへ持っていきなさい」という神の声を聞いた。イーライとケイトリンは、その暗号資産を仲間のキリスト教徒に販売することこそが、自分たちに与えられた使命だと感じた。

その後、暗号資産に関する知識や経験がまったくなかったにもかかわらず、レガラード夫妻は「独自のコインを立ち上げることこそ神の望みだ」と信じるようになった。夫妻は手探りで学びながら、「INDXcoin」という新しい暗号資産を開発し、家族や友人、そして福音派キリスト教徒のコミュニティ内の知人を通じて宣伝を行った。夫のホセと共にINDXcoinを購入した70代の元調剤助手、デビー・ボニージャは、「これが新たな時代の波だと強く感じていました」と語る。ボニージャ夫妻はINDXcoinについて、友人の牧師夫妻から教わった。その牧師夫妻もINDXcoinに投資していた。「私たちはただ、彼らの判断が正しいと信じたのです」とホセは語る。

2022年11月から、デビーとホセは退職金口座から計7万ドル(2人の老後資金のかなりの割合)を引き出し、INDXcoinを購入した。最終的に、500人以上の人々が合計300万ドル以上の資金をレガラード夫妻に手渡した。

しかし、ボニージャ夫妻がINDXcoinを購入してから1年も経たないうちに、このプロジェクトは破綻した。レガラード夫妻に多額の現金を託した投資家たちはそのすべてを失い、多くの人が資金の行方に思いを巡らせる一方で、巧妙な詐欺の被害に遭ったのではないかと疑う人もいた。

「パッとお金が消えてしまいました」とデビーは私に語った。「どうしたらそんなことが起きるの?という感じでした」。

イーライは神に暗号資産の世界へと導かれていると信じていたが、最初は不安を感じていたと主張する。「絶対に無理だ」と思ったと、イーライは振り返る。「自分は暗号資産について何も知らないし、教会絡みの詐欺に巻き込まれたくなかったのです」。

当時、暗号資産市場は好況に沸いており、レガラード夫妻は初期段階のコインに投資して一財産を築いた人々を知っていた。しかし、デジタル資産への関心の高まりは、同時に暗号資産詐欺の増加も意味していた。

ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)によると、2025年には世界中で暗号資産詐欺によって少なくとも140億ドルが騙し取られ、その額は前年比で17%増加した。また米国では、詐欺的な暗号資産投資スキームの被害者が米国連邦捜査局(FBI)に報告した被害額は72億ドルに上った。

詐欺が増加している背景には、暗号資産に投資する多くの人々がその仕組みを十分に理解していないことや、デジタルコインを立ち上げることが比較的容易であるという事情がある。Webサイトの CoinMarketCap(コインマーケットキャップ)によると、2026年8月だけで300万種類以上の暗号資産が新たに発行された。暗号資産関連の訴訟で専門家証人を務めた経験を持つ元FBI特別捜査官のジェイソン・ゲティアンは、「誰でも作れるものなのです」と説明する。

米国では、暗号資産市場の大部分において、透明性の確保や顧客資産の保護といったルールを含む、従来の金融分野に存在するような監視体制や投資家保護の仕組みが整備されていない。米商品先物取引委員会(CFTC)の元委員長であるティモシー・マサドは、「適切な情報開示がなされておらず、詐欺や価格操作、利益相反といった問題も存在します」と指摘する。このセクターは、CFTC、米証券取引委員会(SEC)、米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)など、州および連邦の規制当局が絡み合った複雑な体制の下で監督されている。しかし、「各機関がそれぞれ独自の判断基準や定義を設けています」と、暗号資産規制に関する教科書を執筆したアーカンソー大学法学部のキャロル・ゴーフォース教授は語る。「複雑かつ断片的で、往々にして一貫性のないアプローチです」。

2024年の大統領選をはじめとする一連の選挙では、業界が暗号資産に好意的な候補者を支援するために約1億3500万ドルを投じた。その後、連邦政府は法執行の取り組みを大幅に縮小させた。昨年、司法省は暗号資産関連の犯罪を専門とする部署を解体し、トランプ政権下のホワイトハウス(大統領府)は「デジタル資産に対する規制の行き過ぎを排除する」ことを目的とした作業部会を立ち上げた。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、SECは、暗号資産企業を相手取った係争中の訴訟の大半を取り下げたり、追及を緩めたりしており、その中にはトランプ大統領と金銭的なつながりがある企業も多く含まれていた。ロイター通信の最近の試算では、ドナルド・トランプとその家族は、再選以降、暗号資産関連の事業で少なくとも23億ドルの利益を上げている。2026年8月、SECは暗号資産取引が証券法の適用対象となる範囲を狭める新しいルールを提案し、同業界に対するSECの監視権限をさらに制限する動きを見せた。ゴーフォース教授は「今後の取締りは困難を極めるでしょう」と語っている。

暗号資産プロジェクトが適正に運営されている場合であっても、その価格は投機によって左右されることが多く、激しい変動が常態化している。専門家は、暗号資産への投資には相当なリスクが伴うと指摘する。「ステーブルコイン(安定通貨)を除き、暗号資産は本質的にポンジ・スキームです」とアメリカン大学法学部のヒラリー・アレン教授は説明する。「暗号資産には裏付けとなるものは何もなく、キャッシュフローも生産能力もありません。したがって、価値を高める唯一の方法は、より多くの人を巻き込むことだけなのです」。

近年、州および連邦当局は、宗教コミュニティを標的とした暗号資産詐欺に関与したとされる人物を次々と訴追している。これは「アフィニティ詐欺(特定のコミュニティにおける親近感や信頼関係を利用した詐欺)」と呼ばれる詐欺手口の一例だ。その中には、信仰心に訴えかけることで主にハイチ系移民から10億ドル以上を騙し取ったとされる夫婦や、イスラム教徒のフォロワーから1200万ドル以上を集めたInstagram(インスタグラム)のインフルエンサー、そしてスペイン語を話す信徒から数百万ドルを盗んだとして告発されたマイアミの牧師などがいる。「『神のお告げがあった』と言われたら、誰がそれに異議を唱えられるでしょうか?」とゲティアン元特別捜査官は語る。

コロラド州証券局のタン・チャン局長は、「詐欺を働く人間が利用するのは、他者との結びつき、つまり信頼関係です」と指摘する。2024年1月に提起された民事訴訟において、チャン局長はレガラード夫妻が投資家のキリスト教信仰を利用して、「実質的に無価値な」暗号資産を購入するよう騙したと主張した。

デンバー地方裁判所に提出された訴状では、レガラード夫妻は調達した資金の40%近くにあたる約130万ドルを個人的な支出に充てたとされている。その使途には、豪華な旅行、高級ブランドの衣類、宝飾品、審美歯科治療、高級SUVのレンジローバー、オペア(住み込みの育児・家事担当者)の雇用、そして大規模な自宅改修などが含まれていた。訴訟の中でチャンは、レガラード夫妻の「金儲けへの欲求」に匹敵するのは、「証券法を平然と無視する無謀さ」と「投資家に対する著しい良心の欠如」だけだったと主張した。

その後、2025年7月、デンバーの地方検事はレガラード夫妻を窃盗やラケッティアリング(脅迫やゆすりなどの組織犯罪活動)、証券詐欺など、40件の重罪で起訴した。有罪判決が下れば、数十年の懲役刑を科される可能性がある。しかし、レガラード夫妻は、自分たちは何も悪いことはしておらず、単に神の望みを実行していただけだと主張し続けている。

「もし主に従うことが無謀だと言うのなら、ええ、私たちは確かに非常に無謀だったでしょう」とイーライは私に語った。「私たちはただ耳を傾け、主が言われた通りにしただけですから」。

イーライによると、彼が初めて「天からの声」を聞いたのは、獄中にいた時のことだったという。

それは2002年、イーライが22歳の時のことだ。ホンダ・シビックを盗んだ罪で、イーライは8年の懲役刑に直面していた。もともと20歳のときに判決を受けていたのだが、わずか7か月で釈放されていた。しかし、ある男性の顔にビール瓶を叩きつけて保護観察の条件に違反したため、再び刑務所に戻されていた。

イーライの説明では、再度の収監中、国選弁護人からは、再び早期釈放されることは「法的に不可能」だと警告されていたという。しかし、イーライは頭の中で「お前に保護観察を与える」と繰り返される声を聞いた。そして実際にその通りになった。裁判官が刑の執行猶予を言い渡したのだ。この出来事はイーライの世界観の核となった。「まず(中略)完全に不可能に見えなければなりません」とイーライは語る。「そうして初めて、神がそれを蘇らせてくれるのです」。

出所後、イーライの宗教的情熱は長続きしなかった。イーライは「金儲け」という世俗的な目標に没頭した。「人から価値ある人間だと思われるために、成功者の仮面をかぶる必要がある」と考えていたと、イーライは当時を振り返る。そして、応募書類の重罪前科に関する質問には「いいえ」と回答した。やがて自分に営業の才能があることを見出した。掃除機から業者向けの見込み客情報に至るまであらゆるものを売り歩いた後、イーライはマーケティング分野へと舵を切った。

2010年、デンバーを拠点とする『イコサ・マガジン(Icosa Magazine)』誌が、イーライをコンサルタントとして迎え入れた。当時の編集長だったジャン・マゾッティはイーライについて、「彼は、私がこれまでの人生で出会った中で、最もカリスマ性のある『ホラ吹き』です」と語る。マゾッティはイーライから、イーロン・マスクの弟であるキンバル・マスクが、自分のレストランで同誌のイベントを開催してもいいと申し出てきた、という話を聞かされたことを覚えている。「そこに電話してみたら、『何の話かさっぱり分からない』と言われました」(イーライはこの出来事を覚えていないとしている)。

2013年、イーライはクラウドファンディング・キャンペーンを専門とするマーケティング会社「マッド・ハッター・エージェンシー(Mad Hatter Agency)」を立ち上げた。初期の従業員だったニコ・ロバトは、イーライが「売る」ことに高揚感を覚える様子は、映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でレオナルド・ディカプリオが演じた主人公を彷彿させるものだったと振り返る。ロバトによると、イーライはあまりに多くの案件を引き受けすぎたため、時に「約束しすぎて、実際には期待通りの成果を出せない」という事態に陥っていたという。私が取材したクライアントのうち、4社は満足していたが、3社は不満を抱いており、そのうち1社は、「パフォーマンスの低さ」を理由に契約を打ち切っていた。起業家であり著述家のマイク・ステンプルは、イーライが自身の講座のマーケティングを手伝うと申し出たものの、結局何もしなかったと私に語った(イーライは「性格の不一致」があったとしている)。ステンプルはメールの中で「イーライ、私の願いは、誰にでも何でも売ることができる君の才能が(中略)簡単に破壊的なものになり得るのだと理解してくれることです」と記している。

イーライの私生活は混乱を極めていた。「常に誰かと付き合っては別れる、という繰り返しでした」とイーライは語る。「酒を飲み、パーティーに明け暮れ、薬物もやっていました」。イーライはビジネスでの失敗の原因は、コカインの使用と「精神的に追い詰められたこと」にあったとしている。40歳を目前に控えた2018年には、「何者にもなれないこと」への恐怖に駆られ、自殺さえ考えたと語った。イーライが3日間にわたるコカイン漬けの状態から抜け出しかけていたとき、母親からシンガポールの牧師ジョセフ・プリンスの著書『The Power of Right Believing(正しい信仰の力)』(未邦訳)を渡された。そして、その内容に深く感動した。イーライはそこから、預言や癒やし、異言といった要素を含み、神との強固な個人的関係を重視する「カリスマ派」キリスト教にのめり込み始めた。

神の導きに従い、イーライは薬物を断ち、自身のマーケティング会社(社名は「グレース・レッド・マーケティング(Grace Led Marketing)」に変更)に友人や親族を10人近く雇い入れたと語る。さらに、従業員との毎日の聖書勉強会を主導し、自宅のリビングルームで毎週開く集まりでは説教もするようになった。2020年には「ビクトリアス・グレース(Victorious Grace)」という教会を設立し、Facebook(フェイスブック)で説教の配信を開始した。

その年の夏、イーライはパーティーでケイトリンと出会った。13歳年下のケイトリンは、すらりとした体型で物腰が柔らかく、ストレートの黒髪と輝くような笑顔が印象的な女性だった。ケイトリンは私に、出会ってすぐに「この人になら自分の人生を委ねられると思いました」と語っている。初デートのディナーの席で、ケイトリンは「救い」を体験した。それから4か月もしないうちに2人は結婚し、デンバーで家を購入し、ケイトリンはグレース・レッド・マーケティングの運営を担うようになった。

しかし、2020年の終わり頃には、新婚夫婦の収入は急激に落ち込み始めた。クラウドファンディングのキャンペーンは不振で、クライアントからの支払いも遅れがちだったと2人は説明する。イーライは16万ドル以上の未払い税金を抱えていた。「自分を人生の敗北者のように感じていました」とイーライは当時を振り返る。

レガラード夫妻は、ここでも自分たちが神の意志とみなすものに従った結果、さらに財政状態を悪化させた。2021年3月に妊娠がわかると、ケイトリンは自身の401k(確定拠出年金)から6万ドルを引き出し、建築家に自宅リフォームの図面作成を依頼した。当初は小規模だった構想は次第に膨らみ、最終的には家の延べ床面積を元の約2倍に広げる計画となった。主寝室の拡張や新たな寝室の増設に加え、ホームオフィス2部屋、ジム、そしてバー付きのファミリールームまで設けることになった。「主は『自分たちが望むようにやればいい』とおっしゃっているようでした」とケイトリンは振り返る。数か月のうちに、2人は401kの資金を使い果たした。さらに別の「神のお告げ」に従い、レガラード夫妻はマーケティング事業を閉鎖した。「私たちには、経済的な奇跡がどうしても必要でした」とケイトリンは語る。

ある日、レガラード夫妻は午前4時半頃、テレビの大音量で目を覚ました。画面には、シカゴ近郊を拠点とし、テレビでキリスト教の礼拝や説教を行う伝道師ビル・ウィンストンが映し出され、「種を蒔くこと」について語っていた。「繁栄の福音」と関連付けられることが多いこの教えは、価値ある相手にお金を寄付することで、信者が将来の祝福を受けるための条件を整えることができるとするものである。

「神は、100倍の恵みを受けるために、ビジネス口座と個人口座の両方にある全財産を捧げるよう私たちに告げている」とケイトリンは2021年10月中旬の日記に記している。当時、レガラード夫妻には収入がなく、請求書の支払いに苦労していた。それにもかかわらず、第一子が生まれる直前、彼らは手元に残っていた最後の2718ドル44セントを「ビル・ウィンストン・ミニストリーズ(Bill Winston Ministries)」に送金したという。

それからわずか2週間後、神からの恵みとも言えるものがもたらされた。後に民事裁判でレ …

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