トランプ政権、「炭素の社会的費用」操作で環境規制緩和を画策か
環境規制の緩和を目指すトランプ政権は、気候変動の経済的コストを過小評価することで、この評価値の無効化を狙っている。しかし、これまでと異なる評価値は、根拠がないとして提訴されるリスクもある。 by James Temple2017.05.18
気候変動の経済的コストを評価する重要な手法を悪用して、環境規制の白紙化計画を正当化しようとしている。トランプ政権に対してそんな訴訟が起こされそうだ。
いわゆる「炭素の社会的費用」の背景にあるのは、温室効果ガス排出による経済的損失を見積もることで、規制当局が公共政策のコストと効果をより正確に評価できるという考え方だ。オバマ前大統領の経済諮問委員会で主任エコノミストだったマイケル・グリーンストーンは、「これまで聞いたこともない最も重要な数値」と呼んだ。
だが3月末、トランプ大統領はオバマ前大統領の炭素の社会的費用に関する作業部会の解散と、現在の「炭素の社会的費用」の評価の裏付けとなっている文書の取り消しを命じる大統領令に署名し、さらに当局に対して今後の評価には14年前の行政予算管理局のガイドラインを参考にするように命じた。同じ大統領令で、オバマ政権下で整備された一連の環境規制の見直しも連邦機関に命じており、「適切な場合」は規制の「一時停止、修正、撤廃」を指示している。
炭素の社会的費用は現在、1トンあたり約40ドルと評価されており、数字は徐々に上昇している。だが連邦機関がこの数字を無視したり大幅に少なくしたりすれば、政権は気候行動計画やクリーン・パワー・プラン(米国オバマ政権時に発表された電力事業者向けの二酸化炭素排出削減に関する政策)、燃費基準を撤廃したり、議論の的となっているパイプライン(カナダからメキシコ湾に原油を運ぶパイプライン、オバマ政権では環境問題を理由に却下)、シェールガスの採掘に使われる水圧破砕法を許可したりできる。炭素の社会的費用の変更は、再生可能エネルギーの開発や二酸化炭素回収テクノロジー、車の燃費改良研究に大きな影響を与える可能性がある。
次回の環境規定が、今よりもずっと低い費用の評価額を根拠に定められれば、法的な異議申し立ては必至だ、とオバマ大統領の経済諮問委員会で主任エコノミストを務めたハーバード大学のジェームス・ストック教授はいう。
事実、環境防衛基金(EDF)と天然資源防護協議会(NRDC)の弁護士は、どちらも政権の次のステップに注視していると語っている。
「これらの問題の扱われ方と、今後下される決定を注意深く見守 …
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