KADOKAWA Technology Review
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知性を宿す機械 Microsoft Thinks AI Will Fill Your Blind Spots, Not Take Over Your Job

マイクロソフトのAIも「人との協働」目指す グーグルとカブる

グーグルを猛追するマイクロソフトは、人間と人工知能(AI)の共同作業を改善する構想を打ち出した。つまり、AIは必ずしも人間に取って代わる必要はなく、より良い仕事をする手助けをするということだ。 by Jamie Condliffe2017.07.13

Eric Horvitz, managing director of Microsoft Research, speaking in London.
ロンドンで講演するマイクロソフト・リサーチのエリック・ホロヴィッツ最高業務責任者

グーグルを猛追するマイクロソフトは、人間と人工知能(AI)がより効率的にお互いを補い合うことを可能にする構想を打ち出した。

2017年7月12日にロンドンで開かれたイベントでマイクロソフトは、ワシントン州レッドモンドの本社にある基礎研究機関マイクロソフト・リサーチのAI部門の管轄下に、100人のエンジニアと研究者から成る新しいチームを結成することを発表した。今までAIの別々の分野で働いてきた研究者の間にある障壁を取り除くための取り組みだという。マイクロソフト・リサーチのエリック・ホロヴィッツAI担当責任者はイベントで、この構想は「人間の知能の神秘を理解する道のり」へと導くだろうと話した。

構想の大部分を占めるのは、人間とAIの共同作業の改善を手助けすることだ。「コンピューターが人間と対話し、さらに、知能指数(IQ)で表される賢さと心の知能指数(EQ)で表される共感がバランスを取れるようになったら、あらゆる人がコンピューターと共同作業ができるようになるでしょう」と、マイクロソフトのAIリサーチ・グループのハリー・シャム上級副社長は説明する。マイクロソフトの動きは、7月10日の週の始めのグーグル(2017年版スマート・カンパニー50)の発表と重なるところがある。この発表でグーグルは、人間と機械のお互いとの働き方の改善を目指す新しいプログラム、「人間+AI研究(People + AI Research=PAIR)」の開始を明らかにしたばかりだ。

人間とAIがうまく共生できると確証することは、ビジネスにおいて非常に重要だ。現在、人々はアルゴリズムのことを、非常に単純な補佐官程度しか思ってないかもしれない。その一方で、将来的にはアルゴリズムが人間の仕事を奪ってしまうという話もよく聞かれる。しかし、この二つの現実の間には大きな隔たりがある。真実はというと、人間と機械はこの先何十年間、共に働くことになるのだ

マイクロソフト(2017年版スマート・カンパニー50)はとりわけ、単に人間の知能をコンピューターを用いて再構築するのではなく、いかにAIが人間の知能の隙間を埋める手助けができるかに焦点を当てたいと話す。同社の新しいチームは、たとえば物忘れや気が散りやすい性質といった人間の知能の穴を識別するために、認知心理学に重点を置いている。認知心理学の成果を使って、人間の見落としがちな点を埋めるAIを構築するのだ。

例えば、同チームは現在、機械学習を使って過去の医療事例を整理して、医師が診断したり、退院を許可したりする際に見逃しうる問題について警告する研究のプロジェクトを進めている。つまり、AIは必ずしも人間に取って代わる必要はなく、より良い仕事をする手助けをするということだ。

さらに、研究所での業務に当たった場合でも現実世界で錯乱したりせず(例えば「Why Microsoft Accidentally Unleashed a Neo-Nazi Sexbot」を参照)、訓練に使うデータセットを通してAIに忍び込むバイアスを排除するように、機械学習ツールを試験するための新しい方法の開発も試みている。

マイクロソフトは最終的には、AIに自分自身について説明させるという難問も探究しようとしている。現在、深層学習システムがどのようにして決断にたどり着くかを理解するのは非常に難しい。このことは今後、銀行での融資の承認から法廷での法の執行まで、人間に影響を及ぼす決断を人工知能が下す機会が増えてくると大きな懸念材料となる。

「通常で言うところの説明とはみなされていないものであっても、できることはたくさんあると思います」と、MIT テクノロジーレビューの質問に対する回答の中でホロヴィッツ責任者は話した。「それは『もし仮にこうだったらどうだろう(what if)』という質問に対する回答に似ているかもしれません。医療事例でいうと『もし私が肝炎でなかったらどうだろう?』とか、『もし私が男ではなく女だとしたらどうだろう?』といったものです。これらは感度分析と呼ばれる手法で、ある提案が異なるインプットに対していかに頑強か、またはいかに不安定かを視覚化するものです。この意味では、別の種類の説明ともいえます。私たちのチームは説明の多くの異なる次元を見ているのです」。

しかし突き詰めていくと、現在、AIが下すあらゆる決断を理解しようと神経過敏になっているのは一時的なものであり、テクノロジーがいったん身近になってしまえば懸念は薄れるかもしれないとホロヴィッツ責任者は考える。「いつの日か、最も優秀な専門家は、データ、推論、証明、AI機械のすべてを使いこなすと知って、みんな安心していることに気づくでしょう。車の中の部品であるキャブレターを信頼するのと同じです。毎朝、キャブレターが今日どのように動くかの説明を聞く必要などないでしょう?」

(関連記事:「AIの未来は人間との協働、グーグルが新プロジェクト」、「人類に残された、AIを信用しない、使わない、という選択肢」)

 

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クレジットImage courtesy of Microsoft
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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