希少遺伝性疾患を胎児期に治療、ドイツの研究者らが成果
胎児の段階でタンパク質薬を注入することにより、汗腺を持たずに生まれてくる子供を治療する実験がドイツで成功を収めた。だが、実験の対象となった疾患は非常に希少であり、妊婦にリスクがあるため、市販される可能性はほとんどない。 by Antonio Regalado2018.05.16
妊娠中の適切な時期にある種のタンパク質を注射することで、1組の双子と1人の子どもが、汗腺を持たずに生まれることを免れたと考えられる。
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの症例報告に記載されているこの実験は、2016年にドイツで、稀少な遺伝性皮膚疾患を専門とする診療所で実施された。牙のような前歯と汗をかくことができない状態で生まれてくるXLHED(X染色体連鎖低発汗性外胚葉異形成症)と呼ばれる疾患を特に対象とした。
この疾患の原因は、汗腺を作るために必要な特定のタンパク質が体内で生成されないことにあった。
ドイツのエアランゲン=ニュルンベルク大学の診療所は以前、幼児を対象としたXLHEDのタンパク質補充療法の臨床試験に参加したことがあった。
だが、そのときに使った薬は子どもには効き目がなく、臨床研究は中止になり、製薬会社のエディマー・ファーマシューティカルズ(Edimer Pharmaceuticals)は倒産した。
そこで、コリンナ・Tというドイツ人看護師の登場である(プライバシー保護のため仮名)。彼女は息子が2歳のとき、XLHEDにかかっていることに気付いた。
「息子は身体が熱くなり過ぎて、絶え間なく泣き叫んでいました」。XLHEDの子どもたちは成長するにつれて、涼しいタイル張りの床に横たわったり、冷水を浴びたりして、自分で対処する方法を学んでいく。
「幼い時には生命に危険が及ぶ可能性があります。車内に置き去りにされたりしたら、すぐに熱くな …
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