KADOKAWA Technology Review
×
Innovators Under 35 Japan 2026 候補者募集開始!
Cable TV Service Will Get Cheaper But No More Interesting

ケーブルテレビの革新的未来
保守的事業者に潰される

米国の規制当局はセットトップボックスを廃止し、新たなエコシステムを構築することで加入者から徴収されるばく大な料金を抑えようとしたが、ケーブルテレビ事業者の巻き返しにより、ほとんど何も変わらないことになりそうだ。 by Mike Orcutt2016.09.14

近い将来、ケーブル会社はセットトップ・ボックスを貸与しなくなり、無料ソフトに置き換わるだろう。だが、米国が改定するケーブルテレビの新規制で、顧客の体験が変化することもなさそうだ。

米国連邦通信委員会(FCC)が提案する新規制で、ケーブルテレビ用のセットトップ・ボックスはなくなるかもしれない。FCCのトム・ウィーラー委員長は9月29日の投票で導入の可否が確定する新規制で、加入者の年間支払額は年間何十億ドルも安くなるという。

確かにケーブルテレビ代は安くなるだろうが、新規制でFCCが本来意図していた番組の検索と選択をサポートする革新的なサービスの幕開けは訪れそうにない。ケーブル会社による熱心なロビー活動により、FCCは、商品の広告や番組宣伝の重要な広告枠であるユーザーインターフェイスをケーブルテレビ会社が持つことを引き続き認めた。したがって、特定の番組やオンデマンド映画の宣伝はタブレットでケーブルテレビを見る場合でもなくならず、広告も表示されることになる。

4月、FCCはユーザーエクスペリエンスを改善する提案により、ケーブルテレビとアプリの新しいエコシステムを創出しようとした。当初の提案では、ケーブル事業者は、第三者のハードウェアやソフトウェアの開発者に、番組そのものと、番組表情報(時間と内容)、あるデバイスが番組に対し何ができ何ができないか(録画など)という3つの重要データへのアクセスを許すことを義務づけていた。開発者は、こうしたデータを使って、視聴者が映画や他のケーブルテレビの番組を発見し、視聴し、推薦することをサポートする新しいツールやサービスを提供できただろう。

ところがケーブル会社は、著作権侵害行為への懸念を盾に、構想に反対した。さらに、コムキャスト(最大のケーブル会社で、テレビ局のNBC、映画会社のユニバーサルスタジオと同じグループ)はすでに米国人はセットトップ・ボックスの使いたがっておらず、その傾向に逆らうような政府の支援はいらないと論じた。コムキャストはRoku(ストリーミングビデオのサービス事業者)やサムスンスマートテレビのユーザー用に新開発したアプリの存在を引き合いに、もうケーブルボックスの代わりのサービスを提供している、というのだ。

現在、FCCはかなりの提案を改定した。ケーブルテレビの未来には、4月の時点で構想されていたような第三者ソフトやデバイスはもうない。コムキャストによれば、未来の姿はむしろ「アプリベース」になる。ケーブルテレビ事業者は、自分たちのアプリを、取引先だけではなく、RokuやアップルのiOS、Android、ウィンドウズ等の「幅広く展開された」プラットフォームに対応させることになる。しかし、ケーブルテレビ事業者は、ユーザーインターフェイスの排他的制御は保持し続けるだろう。

ウィーラー委員長は、新規制でケーブルテレビの加入者が得られる最大のメリットのひとつに「統合サーチ」をあげる。だがその実態は、Apple TVやRokuなどのストリーミングデバイスがあれば、付属の検索機能がインストール済みアプリの番組にアクセスし、ケーブル事業者の有料番組も表示される、ということに過ぎない。

FCCで新規制が採択すれば、事業者は2年間従わなければならない。

人気の記事ランキング
  1. It’s time to address the looming crisis in entry-level work. 「コーディングを学べ」もう通用せず、AIが若者の雇用を奪い始めた
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  3. Anthropic’s Code with Claude showed off coding’s future—whether you like it or not 「Claudeに任せてしまおう」 たった1年で激変したソフトウェア開発
マイク オルカット [Mike Orcutt]米国版 准編集者
暗号通貨とブロックチェーンを担当するMITテクノロジーレビューの准編集者です。週2回発行しているブロックチェーンに関する電子メール・ニュースレター「Chain Letter」を含め、「なぜブロックチェーン・テクノロジーが重要なのか? 」という疑問を中心に報道しています。
▼Promotion
社会実装都市「ひろしま」の魅力に迫る ローカル ✕ イノベーション
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る