KADOKAWA Technology Review
×
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
High-End, Cord-Free VR Headsets Are Nearing Reality

VRゴーグルは
コードレスがいい

パソコンと接続されていないと、VRの体験はずっとよくなる。 by Tom Simonite2016.09.19

タコは、私の右側、地面から約1.5mのところに浮かんでいた。体の向きを変えて、タコの方に歩いて近付く。しかし、大きな黒い実質現実(VR)ゴーグルを顔面に取り付けているのに、ゴーグルとPCを繋ぐためにあるはずの、背中を伝うケーブルはない。周りの誰もが、私を馬鹿っぽいと思っただろう。

試用したゴーグルは、現在販売されている製品と異なり、コードレスという点で際立っている。モバイル製品向けの半導体基板メーカーであるクアルコムがデモで見せたのは、宙に浮かぶタコだけでインタラクティブではなかった。しかしVR820の設計は、この種のコードレス型ゴーグルによって、実質現実が幅広く使用されることを予期させる。

サムスンのGear VRやグーグルのカードボード、近日発売予定のDaydreamなど、ディスプレイや処理能力をスマートフォンで代替するゴーグルでも、ケーブルレスで実質現実を体験できる。しかし、ゴーグルにスマートフォンを差し込む機種では、たとえばタコを調べるようとして動くとき、空間内の頭の位置を追跡できない。見回そうとして首を振れば映像も追随するが、立ち上がったり、前かがみになったりしても、視座は変化しない。

Qualcomm’s design for a virtual-reality headset eschews the cables seen in the leading devices on the market today.
ケーブルレス設計のクアルコムの実質現実用ゴーグル(現在市販されている主要デバイスは有線式)

フェイスブックに買収されたOculus RiftとHTCのViveは、頭の位置を追跡して、より現実的に空間内を探索できる。しかし、この2機種は処理能力の高いPCと接続し、使用する場所で位置情報を取得するセンサーを設定する必要がある。一方で、クアルコムのゴーグルは内蔵のモーションセンサーとカメラで外界を捉えることでユーザーの位置を追跡できる。自己完結型のデバイスは、ゲーム用PCまでは高性能ではなく、複雑な映像は表示できない。また、クアルコムのデバイスが、RiftやViveの位置追跡精度に、どこまで迫っているかは明らかにされていない。クアルコムは、豊富な3Dゲームと体験に対応している、という。

ただし、クアルコムは設計をハードウェア・メーカーに提供する企業であり、ゴーグルを自社では販売しない。提供先企業が自社バージョンを製作することで、半導体基板の販売を増やそうとしているのだ。クアルコムの予想では、数カ月以内に最初の製品が販売される。

インテルは、今夏の初め、自社製一体型ゴーグルを発表し、クアルコム同様の戦略を展開しているが、製品を試用できる段階には達していない(「インテルMS連合VRゴーグルを提供」参照)。また中国では、さまざまな一体型ゴーグルがすでに市販されている。

クアルコムのヒューゴ・スワート上級役員(製品管理担当)は、クアルコムの計画に合わせて製造されるゴーグルは、タブレットの上位機種と同程度の価格になるべきだ、という。したがって、販売価格は500ドル以下となり、1400ドル以上かかるOculus RiftとPCの組み合わせ(日本国内では20万円以上かかる場合がある)に比べれば、ずっと低価格だ。

 

人気の記事ランキング
  1. A new US phone network for Christians aims to block porn and gender-related content ポルノもLGBTも遮断、キリスト教徒向けMVNOが米国で登場
  2. Musk v. Altman week 1: Elon Musk says he was duped, warns AI could kill us all, and admits that xAI distills OpenAI’s models 「オープンAIを蒸留した」マスク対アルトマン第1週、法廷がざわめく
  3. Will fusion power get cheap? Don’t count on it. 核融合は本当に安くなるのか? 楽観論に「待った」をかける新研究
トム サイモナイト [Tom Simonite]米国版 サンフランシスコ支局長
MIT Technology Reviewのサンフランシスコ支局長。アルゴリズムやインターネット、人間とコンピューターのインタラクションまで、ポテトチップスを頬ばりながら楽しんでいます。主に取材するのはシリコンバレー発の新しい考え方で、巨大なテック企業でもスタートアップでも大学の研究でも、どこで生まれたかは関係ありません。イギリスの小さな古い町生まれで、ケンブリッジ大学を卒業後、インペリアルカレッジロンドンを経て、ニュー・サイエンティスト誌でテクノロジーニュースの執筆と編集に5年間関わたった後、アメリカの西海岸にたどり着きました。
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
AI革命の真実 誇大宣伝の先にあるもの

AIは人間の知能を再現する。AIは病気を根絶する。AIは人類史上、最大にして最も重要な発明だ——。こうした言葉を、あなたも何度となく耳にしてきたはずだ。しかし、その多くは、おそらく真実ではない。現在地を見極め、AIが本当に可能にするものは何かを問い、次に進むべき道を探る。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る