KADOKAWA Technology Review
×
AT&T’s Plan to Hack the Electrical Grid to Provide Cheap Wireless Broadband

AT&T、電信柱で
インターネットを拡大

無線信号を電信柱から送信すれば、インターネット接続を拡大できる。 by Tom Simonite2016.09.21

世界の多くの地域で、あらゆる家庭や事業所に電力を供給することは、20世紀のインフラの大きな課題だった。米国の通信事業者AT&Tは、高速インターネットを普及させる今世紀の課題を解決するために、電力網を活用する。

Wireless hardware developed by AT&T upgrades electrical poles to deliver high-speed wireless broadband.
AT&Tが開発した無線ハードウェアは、高速の無線ブロードバンドを実現するために、電柱をアップグレードする

20日に明らかにされた新プロジェクト「AirGig」は、送電線を誘導路として使い、高速無線データ信号を長距離に送信して、電気インフラをインターネット兼用にアップグレードする。AT&Tは、入居するオフィスビル間を接続することで、このテクノロジーを試験済みで、来年の一般向け試験の実施母体を探している。

AT&Tのジョン・ドノバン最高戦略責任者は火曜日、送電線に便乗することで、通常のデータケーブルを敷設したり、電波塔や無線アンテナの基地局を設置したりするより、AirGigはずっと安価に構築できる、という。米国以外でも、非都市部のブロードバンドの安定供給を促進できる、とドノバン最高戦略責任者はいう。

米国では、非都市部の低所得者は、ブロードバンドを利用できないでいる(「米国の恥部「ネット接続料高すぎ」問題」参照)。インフラ構築のコストは、世界の人口の半数以上にブロードバンドを提供できない主な理由だ。

AirGigは、電柱に小さなプラスチック製の基地局を取り付ける。送電線から無線給電された基地局は、無線信号を送る。信号は、送電線がガードレールのような役割を果たすように調整される。AT&Tによれば、リンクごとに数億bpsでデータを送信できる。AirGigシステムは通常の携帯電話やWi-Fiアンテナでユーザーのデバイスをインターネットに接続する。

AirGigシステムは、送電線そのものではデータ信号を送らないため、送電線でブロードバンド通信を実現する従来の方法で普及の阻害要因になった、コストと信頼性の問題を避けられる。AT&Tは、自社ネットワークでAirGigを使うのはもちろん、他社にも提供するという。ケーブル型無線接続は、Wi-Fiや携帯電話用よもり高周波数帯のミリ波を用いる。

AT&Tは、ミリ波信号が、インターネットインフラのコストを削減できると主張している企業のひとつだ。検索エンジン大手のグーグルのGoogleFiberプロジェクトは、米国のブロードバンドを強化することを目指しており、いくつかの都市で光ファイバーサービスを開始しているが、AT&T同様に無線テクノロジーに集中するよう方針を転換している(「有線インターネットの終わりGoogle Fiberを無線で提供へ」参照)。また今年フェイスブックが始めた無線ブロードバンドプロジェクトもミリ波を使う。(「壮大すぎるフェイスブックのユーザー増加策」参照)。

人気の記事ランキング
  1. Advanced solar panels still need to pass the test of time ペロブスカイト太陽電池、真の「耐久性」はいつ分かる?
  2. Why hydrogen is losing the race to power cleaner cars 「いいことずくめ」の水素燃料電池車はなぜEVに負けたのか?
  3. I used generative AI to turn my story into a comic—and you can too プロンプト不要、生成AIで誰でも物語からマンガが作れる
  4. Trump wants to unravel Biden’s landmark climate law. Here is what’s most at risk. 「もしトラ」に現実味、トランプ返り咲きで気候政策はどうなる?
トム サイモナイト [Tom Simonite]米国版 サンフランシスコ支局長
MIT Technology Reviewのサンフランシスコ支局長。アルゴリズムやインターネット、人間とコンピューターのインタラクションまで、ポテトチップスを頬ばりながら楽しんでいます。主に取材するのはシリコンバレー発の新しい考え方で、巨大なテック企業でもスタートアップでも大学の研究でも、どこで生まれたかは関係ありません。イギリスの小さな古い町生まれで、ケンブリッジ大学を卒業後、インペリアルカレッジロンドンを経て、ニュー・サイエンティスト誌でテクノロジーニュースの執筆と編集に5年間関わたった後、アメリカの西海岸にたどり着きました。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Advanced solar panels still need to pass the test of time ペロブスカイト太陽電池、真の「耐久性」はいつ分かる?
  2. Why hydrogen is losing the race to power cleaner cars 「いいことずくめ」の水素燃料電池車はなぜEVに負けたのか?
  3. I used generative AI to turn my story into a comic—and you can too プロンプト不要、生成AIで誰でも物語からマンガが作れる
  4. Trump wants to unravel Biden’s landmark climate law. Here is what’s most at risk. 「もしトラ」に現実味、トランプ返り咲きで気候政策はどうなる?
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る