カリフォルニア州が目指す
「理想的な送電網」、
再生可能エネに諸刃の剣
カリフォルニア州議会で、米国西海岸各地に広がる送電網を統合する法案の検討が進められている。しかし、エネルギー政策の異なる他の州と契約を結ぶことで、カリフォルニア州がこれまで進めてきたクリーン・エネルギー政策が阻害されてしまう恐れがある。 by James Temple2018.07.23
理想的な送電網は、広大な領域にまたがる高速線を持ち、相互に繋がったネットワークを形成し、消費者需要の変動に合わせて即座に、何千キロも離れた場所から風力や水力、太陽エネルギーによる電力を供給できるものだ(「二酸化炭素排出量削減に「直流」がいま重要な理由」を参照)。
カリフォルニア州議会である法案を進める動きが広がりつつある。法案は米国西海岸各地に広がる送電網を統合するための基盤を整えるもので、上記のような理想的な送電網の実現を目指している。しかし、法律の専門家の中には、この法案が成立すると、正反対の結果が生じるのではないかと懸念する人もいる。カリフォルニア州が送電網に対する把握力を失い、米国内でも最も厳格なクリーン・エネルギー政策を実施することができなくなってしまうのではないかということだ。
トランプ政権下では、この危険性がさらに鮮明なものとなっている。送電網事業者を監督する米国連邦エネルギー規制委員会は、「クリーン・エネルギーを優先する措置を実施している州を罰して、電力市場を意図的に歪めようとしています」とダニー・カレンワード博士はいう。カレンワード博士はエネルギーを専門とする経済学者兼法律家で、カーネギー研究所に務める研究者でもある。
(カレンワード博士と共著者らは、連邦エネルギー規制委員会と地方市場の複数の事業者によって最近進められているこの動きのリスクに焦点を当てた新しい論文を7月12日付けで投稿した。同論文は、今秋刊行の「イェール・ジャーナル規制年報(Yale Journal on Regulation Bulletin) 」に掲載されることになっている)
こうした政治的な力によって、地域ごとの送電網を作って広げていく国中の取り組みが損なわれ、送電網の維持すら阻害されてしまう可能性がある。そして、送電網のシステムが持つはずのより安価かつ容易に二酸化炭素の排出を削減する力を制限してし …
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