KADOKAWA Technology Review
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Election Day’s Tech-Related Triumphs—and Failures

大統領選と同時の住民投票で、テクノロジーは勝利したか?

大統領選の結果をどう解釈するかにかかわらず、住民投票の結果からは地方レベルのイノベーションのニュースが見えてきた。 by Jamie Condliffe2016.11.10

有権者がドナルド・トランプをアメリカの次期大統領に選んだ投票所では、エネルギーや気候、生物医学に関する州レベルの政策を決める住民投票も実施された。策定が間近に迫った全国のテクノロジー政策にシリコンバレーは関心を持つかもしれないが、地方レベルでの結果を集めると、少なくともいくつかよいニュースがある。

フロリダ州では、有権者が屋上太陽光発電の拡大を制限する修正条項を否決した。提案された州憲法の修正は、太陽光施設について、送電網維持費の一律課金の撤廃を目指していたが、自宅に太陽光発電がある人の支出が増え、送電網に送り返した電気の売上を失いかねなかった。この投票結果は太陽光発電がフロリダ州で普及し続ける後押しになる。

一方ネバダ州では、有権者は州の電力市場の規制緩和を選択した。現在、家庭用と事業用の電力はどちらもNVエナジーという電力会社1社から供給されている。規制緩和への投票結果は最終的に電力の独占体制を解体するかもしれないが、この政策を成立させるには2018年に再投票が必要だ。

住民投票にかけられた問題のいくつかは、その影響がまだ明らかになっていない。たとえばフロリダ州モンロー郡の有権者は、ジカ熱と戦うための遺伝子組み換え蚊の放出を承認するかの判断を巡って意見が分かれたようだ。投票速報では、試験が計画されているモンロー郡の街、キーヘイブンの有権者の65%が提案を拒否したが、郡全体の投票結果は58%が賛成だった。この投票結果に拘束力はないので、フロリダキーズ蚊駆除委員会が計画を進めるかどうかを最終的に決定する。

速報から、シアトルは「サウンド・トランジット3」計画を承認する可能性が高い。シアトルの交通システムを刷新する総予算540億ドルの野心的な提案で、新しく100kmのライトレール(軽量軌道交通)ネットワークを敷設して37の新駅を建設し、交通渋滞と環境汚染を低減する。だが、もし自律自動車が都市交通問題を変革してくれるなら、この計画は建設が始まる前にも時代遅れになる可能性があると批判もされている。

そしてもちろん、いくつかの州ではプラスの影響を生んだかもしれない法案に反対票を投じられた。最終結果はまだ不明だが、予想ではカリフォルニア州の有権者は期待を裏切って薬価切り下げをねらった政策に反対票を投じたようだ。カリフォルニア州の「プロポジション61」は、製薬会社が米国合衆国退役軍人省に提示する値引き価格を超えた額を、医療保険が支払うことを禁止しようとした(メルク、ファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソンが資金提供した1億900万ドルのキャンペーンも、おそらく功を奏したのだろう)。

たぶん一番がっかりするのは、ワシントン州の有権者がアメリカ初の炭素税を否決することを選んだニュースだ。すでにカナダで可決されている同様の炭素税は、二酸化炭素1トンあたり15ドルから始まり、今後数年で100ドルまで徐々に税額を引き上げる。だがこの政策は論争の的になった。実際、環境保護論者でさえこの法案への反対を選んだのは、再生可能エネルギー計画のための資金を集めるには至らない不安があったからだ。

以上のように、イノベーション政策は州ごとにまちまちの結果だ。今は、連邦レベルで何が起きるかを見守ることが必要だ。

(関連記事:Bloomberg, Stat, The Ringer, “Canada’s Carbon Tax Needs to Spread South of the Border,” “California Decides the Future for Solar Is Net Metering,” “Are Altered Mosquitoes a Public Health Project, or a Business?”)

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MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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