インドの石炭火力発電所、二酸化炭素を重曹として回収
インドの石炭火力発電所が、二酸化炭素を重曹として回収。しかも補助金なし。 by Jamie Condliffe2017.01.05
南インドの町トゥティコリンでは、地元民がケーキがうまく膨らまないと困ることはなさそうだ。地域にある石炭火力発電所が、二酸化炭素を取り込んで重曹(ふくらし粉=炭酸水素ナトリウム)に変えているのだ。
二酸化炭素を貯留する方法は他にもある。よくある貯留方法は、アミン等の溶媒で二酸化炭素を取り込み、大気中に流出しないようにする。回収後は、CO2を保管するか、別に使うことになる。
しかし、ガーディアン紙によると、トゥティコリンの施設ではカーボン・クリーン・ソリューションが開発した新しい専用溶媒を使っている。この溶媒は、従来使われてきた溶媒よりもわずかに効率的で、稼働に必要なエネルギー量もわずかに少なく、小型の設備で済む。回収したCO2は重曹(NaHCO₃)の生産に使われ、施設では年間6万6000トンの排出量を取り込めるという。

発電所は、効率化による差益(生成した重曹は化学産業の原料になる)は施設が助成金なしで運営するのにぎりぎり足りるぐらいだという。実際、発電所は、CO2を回収して使用する工業施設の中で、助成金を受けない最初の事例だという。
このニュースは、クリーン・コール産業にとって希望の星だ。米国が抱える問題は、でたらめに高価なケンパー発電所や 、クリーン・コールに大きく賭けたピーボディ・エネルギーの挫折のように、新規設備で二酸化炭素を分離するのは経済的に困難だと実証したことだ。しかし テキサス州のW・A・パリッシュ発電所やトゥティコリンの手法のように、既存設備の改修によって、二酸化炭素の回収は経済的に成り立つことを実証した。
2025年までに、太陽光発電は、平均的には石炭よりも安価になるとブルームバーグ・新エナジー・ファイナンスは予測している。したがって、発電方式としての石炭の未来は限界に達する可能性がある。しかし、既存の施設は二酸化炭素を出さないようにできるかもしれない。同時にケーキも上手に焼ける。
(関連記事:The Guardian, Bloomberg, “二酸化炭素を9割回収 夢の石炭火力発電所の問題点,” “クリーン・コールに懲りない米歴代政権の闇,” “Peabody Energy’s Bankruptcy Shows the Limits of Clean Coal”)
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| クレジット | Photograph by Ramkumar | Wikimedia |
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
