KADOKAWA Technology Review
×
Innovators Under 35 Japan 2026 候補者募集開始!
AIモデル評価用データセットに多数の誤り、実は優秀ではなかった?
Jeremy Lwanga/Unsplash
Error-riddled datasets are warping our sense of how good AI really is

AIモデル評価用データセットに多数の誤り、実は優秀ではなかった?

MITの研究者が、人工知能(AI)の機械学習モデルの評価に使われている有名なデータセットの中に、誤ってラベル付けされたデータが多数含まれていることを発見した。最も優れていると見なされていたAIモデルが、実はそうではなかったという事態が発生するかもしれない。 by Karen Hao2021.04.05

人工知能(AI)の研究で最も利用されている10種類のデータセットには、ラベル付けに多数の誤りがあることがマサチューセッツ工科大学(MIT)の新たな研究でわかった。AI分野の進歩に対する私たちの認識は正確なものではなかったということだ。

データセットはAI研究の中核となるものだが、そのデータセットの中でも特に重要度が高いものがある。AIの能力が時間を経るにつれてどう向上しているかを調べるために機械学習モデルの評価に使用される、核となるデータセットが存在するのだ。よく知られているものには、現代のAI革命のきっかけとなった画像認識データセットの代表格である「イメージネット(ImageNet)」がある。また、0から9までの手書きの数字の画像を収集した「エムニスト(MNIST)」というデータセットもある。その他にも、音声やテキスト、手書きの絵などを認識するように訓練されたモデルをテストするためのデータセットが存在する。

近年、これらのデータセットには重大な欠陥が含まれている可能性があることが研究により判明している。例えば、イメージネットには、人種差別的・性差別的なラベル同意なしに取得された顔写真が含まれている。今回の最新の研究では、別の問題に焦点が当てられている。それは、ラベルの多くが完全に間違っているということだ。キノコにはスプーン、カエルにはネコ、歌手のアリアナ・グランデの高音にはホイッスルというラベルが付けられてしまっている。推定によると、イメージネットのテストセットによるラベルエラー率は5.8%だ。一方、手書きの絵を収集した「クイック・ドロー(QuickDraw)」のテストセットによるエラー率は10.1%と推定されている。

モデルの評価に使用される10種類のデータセットにはそれぞれ、そのモデルを訓練するために使用されたデータセットがある。今回の研究をしたMIT大学院生のカーティス・G・ノースカット、アニッシュ・アタリー、ジョナス・ミューラーは、訓練用データセットを使って機械学習モデルを開発し、テストデータのラベル付けの予測に使用した。このモデルが元のラベルと一致しない場合は、そのデータポイントにフラグを立て、人による確認作業を実施した。具体的には、アマゾン・メカニカル・タークの5人のレビュアーが、このモデルの付けたラベルと元のラベルのどちらが正しいと思うかを投票した。人間のレビュアーの過半数がこのモデルのラベル付けに同意した場合、元のラベルは誤りとして集計され、その後修正された。

データセットのラベル付けに誤りがあることは、重大な問題だ。研究チームは、以前にイメージネットのテストセットに対する性能が測定された34種類のモデルを調査した。そして、データラベルが間違っていることが判明した約1500の例に対して各モデルを再評価した。その結果、元の 間違ったラベルではあまり良い評価が得られていなかったモデルが、ラベルを修正した後では最も良い評価を得られるようになった。特に、グーグルなどの大手テック企業が画像認識に使用し、最も優れていると見なされている複雑なモデルより、単純なモデルの方が、修正後のデータでは良い結果が得られるようであった。つまり、テストデータに欠陥があるために、より複雑なモデルの性能を実際よりも優れていると誤認識している可能性があるのだ。

ではどうすればよいのだろうか。ノースカットは、AI分野で、モデルの評価や同分野の進歩の調査に使用する、より欠陥の少ないデータセットを作成することを推奨している。また、研究者が自分のデータを扱う際には、データの正確性を改善することを勧めている。さもないと、「ノイズの多いデータセットを使って多くのモデルをテストし、実世界で導入しようとした場合」に間違ったモデルを選んでしまう可能性がある、とノースカットは言う。そのため、ノースカットは、今回の研究でラベルエラーを修正するために使用したコードをオープンソース化した。このコードは、すでにいくつかの大手テック企業で使われているとのことだ。

人気の記事ランキング
  1. It’s time to address the looming crisis in entry-level work. 「コーディングを学べ」もう通用せず、AIが若者の雇用を奪い始めた
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  3. Anthropic’s Code with Claude showed off coding’s future—whether you like it or not 「Claudeに任せてしまおう」 たった1年で激変したソフトウェア開発
カーレン・ハオ [Karen Hao]米国版 寄稿者
受賞歴のあるフリー・ジャーナリスト。人工知能が社会に与える影響について取材している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の海外特派員として中国のテクノロジー業界を担当。2022年4月まではMITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者を務めた。
▼Promotion
社会実装都市「ひろしま」の魅力に迫る ローカル ✕ イノベーション
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る