KADOKAWA Technology Review
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1日100万本の植林が生む
広大な「緑の砂漠」
ブラジル・セラードの光と影
Pablo Albarenga
気候変動/エネルギー Insider Online限定
Inside the controversial tree farms powering Apple's carbon neutral goal

1日100万本の植林が生む
広大な「緑の砂漠」
ブラジル・セラードの光と影

アップルなどのテック企業が巨額を投資する「疑惑の森」の正体を探るため、ブラジル・セラードの奥地へ向かった。驚くべき生物多様性に満ちた保護区の近くには、24時間体制でユーカリを植え続ける巨大産業があった。 by Gregory Barber2025.09.10

この記事の3つのポイント
  1. 世界第2位の生物多様性を持つセラードは「犠牲区域」として半分が破壊され、1日100万本規模でユーカリを植林する「セルロース・バレー」と化している
  2. 地元住民は井戸の枯渇や生態系の破綻を訴え、24時間体制の植林現場では雇用創出と環境破壊が同時に進行している
  3. BTGの「50対50」プロジェクトでも生態学者らは「不適切な場所への植林」と批判し、炭素クレジット制度そのものの見直しを求めている
summarized by Claude 3

前編『アップル・ウォッチの 「緑の葉」の向こう側——ブラジルの疑惑の森を訪ねた』の続き。

犠牲区域

サバンナという言葉からは開けた風景が想起されるが、セラードを通過したヨーロッパ人入植者たちは、その逆の意味を名前に込めた。「セラード」は英語で「closed(閉じた)」に相当し、文字通り「閉ざされた土地」という意味である。草や低木は胸の高さまで生い茂り、まるで人間に最大限の不便を強いるような構造をしている。マチェーテ(山刀)が必需品だ。

私たちがポンボ公園という小さな自然保護区へ向かう途中、同行していた地理学者兼翻訳家のクラリアナ・ヴィレラ・ボルゾーネは、ブラジルの子どもたちはセラードに対して恐怖とまではいかなくとも、嫌悪感を抱くように育てられることが多いと話してくれた。ボルゾーネが生物学者である母親に行き先を伝えると、「そこはダニだらけだと聞いたわ」という返事が返ってきた(実際、母親の情報は的中した)。

見落とされがちなのは、セラードの植物の驚くべき多様性である。それは、極限まで進化圧がかかった結果だ。多くの種はアマゾンから風で運ばれ、酸性土壌を突き抜けて根を張り、分厚い樹皮で頻発する火災に耐えてきた。乾燥した長い冬には自ら萎れて葉を落とす機能を備えた木も多い。成長の多くが地中で起こるため、「逆さに育つ森」と呼ばれることもある。セラードには1万2000種の顕花植物が生息し、そのうち4000種は固有種だ。生物多様性の観点では、セラードはアマゾンに次いで世界で2番目に豊かな地域である。

ドライブの途中で立ち寄るたびに、ボルゾーネは私に新たな宝物のような植物を紹介してくれた。グアヴィラは、ブドウのような房状の実をつける木で、年に2週間だけ収穫できる。ジャムにするとトーストによく合う。ペキは発酵マンゴーにチーズを混ぜたような独特の味で、好みが分かれる。ほかにも、グアラニー語で名前がついているが、ボルゾーネがかすかにしか覚えておらず、検索もできない植物がある。用途だけははっきり覚えている。「たとえば、このミニチュアのクリスマスツリーのような葉は、人を妊娠させるって言われてるのよ」。

ボルゾーネはセラードの中心部で育ち、幼い頃は家族と川で毎週遊んでいたという。その後、この地域は大きく変貌した。1970年代以降、セラードの約半分が伐採され、その多くは牧草地に転換され、肥沃な土地では大豆が栽培されるようになった。当時は著名な生態学者たちでさえ、アマゾンの壊滅を回避するために産業をセラードへ移すことを提案していた。「ピラニアの牛」というブラジルの寓話が持ち出された。群れを守るために1頭の牛を犠牲にしてピラニアの川に放つという話だ。

英エクセター大学のセラード生態学者、トビー・ペニントン教授は、セラードは依然として「犠牲区域」であり、皮肉にも環境重視の政権下で状況が悪化することすらあると語った。2023年にはアマゾンでの森林破壊が半減した一方、セラードでは43%増加した。一部の生態学者は、このままでは今後10年でセラードの生態系が消滅する恐れがあると警告している。

草地研究者の中に、ある種の刺々しさがあるのは当然かもしれない。自身の研究対象と同様、踏みにじられることに彼らは慣れている。2019年には46人の草地研究者が、サイエンス誌に掲載されたトーマス・クロウザー助教授の「1兆本の木」論文に反論を寄稿した。論点は本数ではなく、再森林化が提案された土地の適性だった。その多く(セラードを含む)は、過剰なバイオマスに耐えられないと主張された。この議論はのちに「バイオーム認識の不均衡(Biome Awareness Disparity, BAD)」という皮肉を込めた名称で呼ばれるようになった。

「セラードは論争の的になる生態系です」と、カンピーナス大学の草地生態学者、ナタシ・ピロン助教授は語る。「セラードでは、生態学の常識を一度忘れなければなりません。なぜなら、その多くが森林生態学に基づいているからです。ここではすべてが逆なんです。野焼きは良いこと。日陰は悪いことなのです」。セラードの景観は草原から森林まで多様だが、その大部分は炭素金融の仕組みによる保全・再生インセンティブの対象にはなりにくいという。地下には豊富な炭素が蓄積されているが、蓄積は遅く、測定が難しい。

結果として、消えゆく景観を守ろうとする生態学者たちは、やや居心地の悪い立場に置かれることになる。ピロン助教授と、彼女の元指導教官であり、サンパウロ州環境研究所(Instituto de Pesquisas Ambientais)のセラード生態学者で、BAD論文の共著者でもあるジゼルダ・デュリガンは、木を植えることを「改善」と称する人々——最初は主に1兆本の木々を植えることを目指す非営利団体の人々だったが、現在では木材業界も加わった——に反論することに慣れている。「彼らは炭素排出削減論を、ビジネスがすばらしいというさらなる論拠として利用しているのです」とデュリガンは言う。「そして善人として見られることを望んでいます」。

デュリガンは、セラードがわずか一世代で牧草地に変貌したことを悲劇と捉えていたが、牛が去った後の再生には希望を見出していた。再生には通常、野焼きや外来草の除去といった大変な作業が必要だが、放置するだけでも自然が自己修復を始め、かつてのサバンナに近づく可能性がある。それに対し、放棄されたユーカリ農園を在来植生に戻すのは極めて困難だった。セラードの珍しい植物は、高度に改変された土壌に根を張ろうとはしなかったのだ。

近年、デュリガンは数百に及ぶユーカリ農園を訪れてきた。連邦法に基づいて在来植生の回廊を整備するため、木材企業に雇われた学生たちのフィールドワークに同行していたのだ。「流域全体に植林が進んでいます」と彼女は語る。「川が死につつあります」。

定期的に起こる森林火災が抑えられた結果、植物が通常よりも背丈高く育ち、草に影を落として水分を多く吸収するようになった。その結果、生態系は徐々に自滅の道をたどり、干ばつ時には崩壊の危機にさらされ、セラード本来の多様性はごくわずかしか保てなくなった。もしこれが「セラードの再生」だというのであれば、それはむしろセラードの死を早めるだけだとデュリガンは確信していた。

両側にユーカリの木々が立ち並ぶポンボ公園の周辺流域を最近調査した研究者たちは、「壊滅的状況」を報告し、アテネ建設のために伐採された森林についてプラトンが語った記述を引用した。「かつて存在したものに比べて、今残っているのは病人の骨格のようなものだ。(中略) 肥沃で柔らかい土壌はすべて失われ、大地は骨と皮だけになった」。

一日中セルロース・バレーを巡り、粘土質の路面でタイヤが空回りした後、私たちは燃料が少なくなっていることに気づいた。ポンボ公園の管理人は錆びた燃料タンクを見て謝った。この前の雨でダメになっていたのだ。少なくとも高速道路までは下り坂だ、と管理人は言った。

チャンスの道

ユーカリ農場に囲まれた下り坂を半分ほど進んだところで、車がヒューッという音を立てて止まり、私たちは足止めを食らった。ボルゾーネと私は長い夜になることを覚悟し、高速道路に向かって歩き始めた。最近、開発によってジャガーがこの地域に追いやられてきたという地元の話を思い出した。

しかし、わずか30分ほどで平原の向こうに一群の光が見えてきた。そしてまた1つ、さらにもう1つと光が増えていった。トラクター、小型タンクローリー、そして不思議なことに観光バスの輪郭が浮かび上がった。それらの車両には、世界最大級のパルプ・製紙メーカーであるスザーノ(Suzano)のロゴが付いていた。

作業員と話した後、私たちは空の観光バスに乗せられ、スポットライトで照らされたテント群へと連れて行かれた。そこでは女性たちがユーカリの苗木を準備しており、白い折りたたみ式テーブルの上に苗木入りのコンテナを積み上げていた。夜勤は珍しかったが、彼女たちは24時間態勢で働いていた。スザーノの農場全体で1日100万本の植林を目指していたのだ。高速道路沿いには間もなく世界最大のパルプ工場が開業する予定で、生産能力は年間255万トンに達する見込みだった。

観光バスは午前1時に作業員を高速道路まで送り、午前3時には最寄りの都市トレス・ラゴアス(マット・グロッソ・ド・スル州)に到着して次のシフトを乗せる予定だった。運転手は、ヘッドランプの光で畑の穴を埋めている同僚を見ながら「家に食わせる家族がいなければ、この仕事はできないよ」と言った。上司の許可を得て、運転手は私たちを片道1時間かけて町のガソリンスタンドまで送ってくれた。

畜牛産業の縮小に伴い、ユーカリがセルロース・バレーの新たな生命線となったことで、この高速道路は「チャンスの道」と呼ばれるようになった。スザーノの新工場の近くには、有名牧場の門に巨大な黒い雄牛の彫刻が置かれており、人気の立ち寄りスポットとなっている。この牧場は最近ユーカリで植林され、雄牛の彫刻は今やユーカリの列に囲まれている。

ティックトック(TikTok)では、作業員が近くのユーカリ農場で撮影したトラクターからのセルフィーや風景を、地元カントリーデュオ「ジャズ・イ・ジャドソン」の曲に合わせて投稿している。「ユーカリを植えるよ/金持ちになって、君は僕に恋をするだろう」と、不運にも婚約者を失いかけている男が歌う。やがて男は木を伐って裕福になり、より良い選択肢を得て、婚約者とも別れてしまう。

ここでのユーカリ植林競争は州政府の強力な後押しを受けている。州政府は昨年、牧草地での新規農場に対する環境規制を免除し、数年でその面積を倍増させる計画だ。ユーカリはブラジルが国際的な気候目標を達成する上で不可欠であり、木材業界はそこから利益を得 …

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MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

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