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トランプ政権、建設中の洋上風力を停止 250億ドル投資が宙に
AP Photo/Carolyn Kaster
What new legal challenges mean for the future of US offshore wind

トランプ政権、建設中の洋上風力を停止 250億ドル投資が宙に

米トランプ政権は、米国東海岸沖で建設中の5つの洋上風力発電所(総額250億ドル)のリース契約を停止した。国家安全保障上の理由としているが、レーダー干渉は既知の問題で開発業者は何年も政府と協力してきた。施設の一部はすでに完成しており、来年にも送電を開始する予定だった。 by Casey Crownhart2026.01.09

この記事の3つのポイント
  1. トランプ政権が東海岸沖の洋上風力発電所5カ所の建設を国家安全保障上の理由で一時停止すると発表した
  2. 風力タービンのレーダー干渉問題は既知で開発業者は政府と協力して対策を講じてきた経緯がある
  3. 総額250億ドルの投資と1万人雇用が危機に瀕し、米国洋上風力業界の将来予測は大幅下方修正された
summarized by Claude 3

新年を迎えた米国の洋上風力発電業界に、また新たな法廷闘争が持ち上がっている。

2025年12月22日、トランプ政権は米国東海岸沖で現在建設中の5つの風力発電所のリース契約を一時停止すると発表し、開発業者らに対して直ちに作業を停止するよう命じた。

その理由として挙げられたのは国家安全保障、具体的にはタービンがレーダーに干渉する可能性があるという懸念である。しかし、これは既知の問題であり、開発業者らは何年にもわたって政府と協力し、この問題に対応してきた。

開発企業側はすぐに訴訟に動いており、法廷闘争は今週中にも始まる可能性がある。今回の騒動が、苦境にある米国の洋上風力発電業界にとって何を意味するのかを見てみよう。

この一時停止措置は、5つの風力発電所への総額250億ドルの投資に影響を与える。対象となるのは、マサチューセッツ州沖のバインヤード・ウィンド1(Vineyard Wind 1)、ロードアイランド州沖のレボリューション・ウィンド(Revolution Wind)、ニューヨーク州沖のサンライズ・ウィンド(Sunrise Wind)とエンパイア・ウィンド(Empire Wind)、そしてバージニア州沖のコースタル・バージニア・オフショア・ウィンド(Coastal Virginia Offshore Wind)である。これらのプロジェクトは合計で1万人の雇用を創出し、250万世帯以上の家庭や企業に電力を供給する見込みだった。

今回の措置を発表した声明で、米内務省は「最近完成した機密報告書」が国家安全保障上のリスクを明らかにしたとし、一時停止によって政府が開発業者との懸念事項を解決する時間を得られるとした。声明では、タービンがレーダー干渉を引き起こす可能性についても言及されている(技術的詳細については後述)。

関係する3社はすでに訴訟を起こしており、建設継続を可能にする仮差し止め命令を求めている。レボリューション・ウィンドとエンパイア・ウィンドを開発するオーステッド(Orsted)とエクイノール(Equinor)はニューヨーク・タイムズ紙に対し、自社のプロジェクトは長期間にわたる連邦審査を経ており、その過程で国家安全保障上の懸念にも対処済みであると述べている

これは、トランプ政権による洋上風力発電への最新の攻撃にすぎない。トランプ大統領は大統領就任初日に、洋上風力発電所の新規リース承認をすべて停止する大統領令に署名した(この命令は12月に裁判所によって無効とされている)。

昨年、政権は同様に国家安全保障上の懸念を理由に、レボリューション・ウィンドに対して作業停止を命じていた。しかし連邦裁判所は数週間後、命令を解除した。開発業者が、プロジェクトには多額の経済的利害が関わっており、政府機関も過去に国家安全保障上の問題を確認していなかったことを示したためである。

風力発電所がレーダーシステムに与える現実的な課題は実際に存在する。レーダーシステムは、航空交通管制から気象予報、国防活動に至るまで広範に使用されている。風力タービンの回転は、レーダーに複雑な信号を生じさせ、いわゆる「クラッター(雑音)」を引き起こす。

エネルギー省の2024年の報告書や、政府説明責任局(GAO、独立した政府監視機関)の2025年の報告書を含む過去の政府文書は、この問題について指摘してきた。

「これまでのところ、影響を受けたレーダーの技術的性能を完全に回復できる緩和技術は存在しない」とエネルギー省の報告書は述べている。しかし、風力タービンの信号を除去するソフトウェアなど、有効な技術は存在する(専門家によれば、これはノイズキャンセリング・ヘッドフォンの動作に似ているが、より複雑なものであるという)。

しかし、エネルギー省の報告書によれば、最も広く普及し効果的な対策は、開発業者と政府の協力である。風力発電所の立地と設計を戦略的に行なうことで、政府や軍の活動を妨げないようにできる。2025年のGAO報告書は、政府関係者、研究者、洋上風力企業が効果的に協力しており、懸念事項は許可プロセスの中で提起・対処されていると指摘している。

この問題やその他の課題は、送電網にとって大きな利益となり得る産業を脅かしている。これらのプロジェクトが位置する米国東海岸、特にニューイングランド地域では、冬季に需要が高まることで化石燃料の供給が逼迫し、価格が急騰することがある。偶然にも、洋上風は冬に最も強く吹くため、今回の争いに巻き込まれた5つのプロジェクトを含む新規プロジェクトは、送電網が最も逼迫する時期に大きな助けとなり得る。

2025年の研究によれば、もし35億ワット(3.5ギガワット)規模の洋上風力発電が2024~2025年の冬に稼働していれば、エネルギー価格を11%引き下げられた可能性があるという(これは、一時停止されたレボリューション・ウィンドとバインヤード・ウィンドの合計容量に、計画中の2つのプロジェクトを加えたもの)。この場合、消費者は4億ドルを節約できていたはずだ。

ドナルド・トランプ大統領が当選する以前、エネルギー調査会社ブルームバーグNEFは、米国が2035年までに390億ワット(39ギガワット)の洋上風力発電を建設すると予測していた。しかし現在、その予測はわずか60億ワット(6ギガワット)にまで下方修正されている。今回の法廷闘争によって、さらに下がる可能性もある。

最も理解しがたいのは、今回異議を申し立てられているプロジェクトの一部が、ほぼ完成しているという点だ。レボリューション・ウィンドの開発業者によれば、すべての基礎と65基のタービンのうち58基の設置が完了しており、プロジェクトの進捗率は87%を超えているという。エンパイア・ウィンドは60%以上が完成しており、来年には送電網への送電開始が予定されている。

このように「ゴールライン」目前で一時停止ボタンが押されたことは、現在進行中のプロジェクトだけでなく、米国における将来の洋上風力発電の取り組みにも冷や水を浴びせる。たとえ今回の法廷闘争が解決し、他の開発業者が形式的には参入可能になったとしても、誰がこの市場に参入したいと思うだろうか。数十億ドルが危険にさらされており、米国の洋上風力発電業界の現状を表す言葉があるとすれば、それは「予測不可能」だろう。

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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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