エボラ死者200人超え、封じ込めに立ちはだかる「三重の壁」
コンゴ民主共和国でエボラのアウトブレイクが急拡大し、死者は200人を超えた。過去の大規模流行を制圧したワクチンが、このウイルスに有効かどうかは分かっていない。医療施設への攻撃が相次ぎ、米国の援助削減が監視体制を弱体化させている。三重の壁を前に、封じ込めは困難な状況だ。 by Jessica Hamzelou2026.06.01
- この記事の3つのポイント
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- ブンディブギョウイルス型エボラが死者223人・疑い症例900件超に拡大し、WHOが国際的緊急事態を宣言した
- 有効なワクチン・抗ウイルス薬が存在せず、武装勢力による医療施設攻撃や住民の不信感が封じ込めを極めて困難にしている
- 米国の援助削減も監視体制を弱体化させており、国境を越えた感染拡大リスクが現実のものとなっている
警告が発せられたのは、5月5日のことだった。コンゴ民主共和国イトゥリ州で、4人の医療従事者が原因不明の疾患により、わずか4日間のうちに死亡した。
調査のため迅速対応チームが派遣され、キンシャサの研究センターでの検査によって原因が判明した。犯人はブンディブギョウイルス、すなわちエボラウイルス病を引き起こすウイルスの一種だった。この疾患の疑い症例はここ数週間で急増している。5月24日時点で、世界保健機関(WHO)はこの疾患による死者数を223人と推定していた。疑い症例は900件を超えている。現在ではさらに増えている可能性が高い。
数週間前、私はクルーズ船内で発生したハンタウイルスのアウトブレイクについて取り上げた。残念ながら3人が死亡したものの、アウトブレイクそのものは封じ込められた。その後の死者は確認されておらず、乗客たちも無事に帰国した。だが、エボラの状況ははるかに深刻である。その理由はいくつもある。
最も明白な理由は、この疾患そのものにある。エボラウイルス病は平均致死率が約50%に達する重篤な感染症であり、過去のアウトブレイクでは数千人規模の死者を出している(ハンタウイルスも致死率は高いが、通常はヒトからヒトへそれほど容易に感染しない)。
2014年から2016年にかけて西アフリカで発生したエボラのアウトブレイクでは、1万1000人以上が死亡した。最近では、2018年から2020年にかけてのアウトブレイクで2299人が死亡したが、ワクチン接種施策によって最終的に封じ込められた。
しかし、これらのアウトブレイクは、遺伝子配列の異なるザイールウイルスによって引き起こされたものだった。ブンディブギョウイルスに対するワクチンは存在しない。ザイールウイルス向けに承認されている2種類のワクチンがブンディブギョウイルスにも有効かどうかは分かっていない。むしろ、それらがウイルスに対する免疫応答を妨げ、状況を悪化させる可能性さえ懸念されている。
科学者たちはブンディブギョウイルスに対するワクチン候補の開発を進めている。しかし、最も開発が進んでいるものでも、臨床試験開始までにはまだ数カ月を要する見込みだ。また、このウイルスに特異的な抗ウイルス薬も存在しない。
そのため、アウトブレイクを制御するには、まず感染拡大を食い止めなければならない。エボラウイルスは、オオコウモリやチンパンジー、ゴリラなどの動物からヒトへ感染する。その後、血液や嘔吐物などの体液との接触を介してヒトからヒトへと広がる。
このウイルスが家族間や医療従事者の間で、また一部の埋葬儀式の際に広がりやすいのはそのためだ。WHOは感染者を治療センターで隔離することを推奨している。また、遺体との身体的接触を最小限に抑える安全な埋葬方法も勧めている。地域住民にウイルスとその感染経路について周知し、症例の診断と追跡を実施する医療専門家を配置することも必要だ。
しかし、誤情報が蔓延する時代にあって、これらはいずれも言うほど簡単ではない。地域住民の中には疾患の存在そのものを疑う者さえいる。ここ数週間で、この地域の医療施設に対する攻撃が3件発生している。
先週は、2カ所の治療センターが放火された。最初の事件は、死亡した男性の遺族が(感染性のある)遺体の引き渡しを拒否されたことをきっかけに起きた。2件目の事件では、その結果として18人の疑い症例が地域社会に戻ることになった。
その数日後、武装した男たちがモンブワル総合病院を銃撃した。エボラ患者の治療に取り組んでいた病院だ。彼らは死亡した身内の遺体の引き渡しを要求していた。
ウイルスの拡大に関しては、さらに懸念すべき要因がある。エボラのアウトブレイクは、人の往来が多い鉱業の拠点であるモンブワルで発生したと考えられている。モンブワルでウイルスに感染した人々が、近隣の地区で医療を求めたとみられている。さらに、この州全体は南スーダンとウガンダの両国と国境を接している。これまでのところ、ウガンダは確定症例7件と死者1人を報告している。南スーダン保健省は監視体制を強化すると表明しているが、同国での症例報告は今のところない。
この地域で続く暴力も、ウイルスの拡大封じ込めを大幅に困難にしている。民間人への致死的な攻撃を含む複数の武装勢力による紛争が、人道支援および医療活動を妨げている。インフラの未整備や道路の損傷がさらに事態を悪化させている。食料不安もこの地域を深刻に蝕んでおり、今年はこの地域で約1000万人が深刻な飢餓に直面している。
これらの要因が重なり、エボラ感染者の隔離と接触者の追跡が「ほぼ不可能」な状況になっていると、WHO事務局長のテドロス・アダノム・ゲブレイェススは5月27日、声明で述べた。
米国の援助プログラムの解体も状況を悪化させている。国際保健プロジェクトへの米国政府の資金提供は、ドナルド・トランプ大統領の第2期政権発足以来、急激に減少している。人道支援に取り組む非営利団体「国際救済委員会(International Rescue Committee)」によれば、米国の支援削減は疾患監視システムに打撃を与えているという。
「資金削減によって、この地域は危険なほど無防備な状態に置かれています」と、同団体のコンゴ民主共和国担当部長であるヘザー・リオック・カーは声明の中で述べた。「長年にわたる投資不足と最近の資金削減により、多くの医療施設では、迅速かつ安全に対応するために必要な適切な防護具、監視能力、最前線での支援が不足しています」。
米国はこのアウトブレイクに対して緊急資金を動員しており、国務省の報道官は政権のいかなる措置もエボラ対応を妨げていないと主張している。しかし、保健の専門家たちはすでに被害は生じていると反論する。
5月17日、WHOはエボラのアウトブレイクを国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と宣言した。27日の声明でテドロス事務局長は、この状況を「イトゥリ州のエボラアウトブレイクが対応を上回るスピードで拡大する、疾患と紛争の壊滅的な衝突」と表現した。現地訪問を前に住民に向けたオンラインでの訴えの中で、テドロス事務局長は停戦を求め、地域住民の精神力を称えた。また、彼らが直面している厳しい困難にも言及した。「皆さんはすでに多くのものを背負っています。マラリア、飢餓、不安、そして家族を守るための日々の闘い」とフランス語で記した。「そしてここにエボラが加わりました。これは不公平であり、私はそれを否定するつもりはありません」。
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- ジェシカ・ヘンゼロー [Jessica Hamzelou]米国版 生物医学担当上級記者
- 生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
