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脳インプラントの臨床試験が急増、BCIはついに離陸期に
Stephanie Arnett/MIT Technology Review | Adobe Stock
Brain-computer interface trials are taking off

脳インプラントの臨床試験が急増、BCIはついに離陸期に

脳に電極を埋め込み、麻痺した人が再び「話す」力を取り戻す——そんなBCI(脳コンピューター・インターフェイス)の臨床試験が急増している。電極を埋め込まれた人は2024年から倍以上に増え、約150人に達した。だが恩恵を受けられるのは誰か、デバイスはどれだけ持つのか。なお実験段階だ。 by Jessica Hamzelou2026.06.21

この記事の3つのポイント
  1. BCIを使うALS患者の事例が、発話・就労・育児を可能にした革命的成果として注目されている
  2. 2023年以降ボランティア数は急増し、中国が世界初の医療承認を行うなど商業化が加速している
  3. 電極劣化や適応対象の限定など未解決の課題が多く、技術の実用化には継続的な臨床研究が不可欠だ
summarized by Claude 3

先日、私はケイシー・ハレルの記事を執筆した。彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う男性で、彼と共同研究をした研究者たちによれば、脳インプラントの「初のパワーユーザー」だという。ハレルは全身麻痺の状態にあり、このデバイスなしでは明瞭に話すことができない。彼はすでに約3年間、BCI(脳コンピューター・インターフェイス)を使用しており、このデバイスによって「発話」し、ウェブ(Web)を閲覧し、気候活動家としての仕事をほぼ自力でこなすことができている。

ハレルが2023年7月にデバイスを埋め込んで以来、カリフォルニア大学デービス校のチームが彼と協力しながら機能の調整と改善を続けてきた。例えば、認識精度を向上させた。また、プライバシーモードや「不適切語フィルター」といった設定も導入した。後者は、ハレルが幼い娘と話す際に不意に不適切な言葉が出てしまうリスクを防ぐためのものだ。

ハレルは私に、このデバイスは自分にとって「まさに革命的です!」と語った。このデバイスのおかげで、収入を維持し、友人や家族と再びつながり、娘に本を読み聞かせることができるようになった。

彼のBCIを開発したチームは、麻痺を持つ人々がコミュニケーションを取り、オンラインの世界に参加し、ある程度の自立を取り戻せるよう技術を活用する方法を研究している複数のチームのうちの一つだ。そしてハレルは、彼自身の言葉を借りれば「恩送りをして科学研究に貢献し、個人的な恩恵も得る」ために自らの脳を提供する、増え続けるボランティアの1人である。

ここ数年で、BCIの臨床試験ボランティアの数は急増している。2026年、中国はBCIを医療用途として承認した世界初の国となった。技術の進歩により、エンジニアはかつてないほど多くの機能を提供できるようになっている。BCI研究はまさに本格的な離陸を迎えている。

まず、BCIにはさまざまな形態があることを指摘しておく必要がある。ハレルのデバイスには、発話に関連する電気活動を捉えるために脳内に埋め込まれた電極群が含まれている。それらの電極は、頭頂部に設置された2つのドッキングポートに接続されており、コンピューターに接続できる仕組みになっている。

そのコンピューターには、彼の脳信号を音素(発話における音の単位)にデコードし、ハレルが言いたいことを予測するよう訓練されたソフトウェアが搭載されている。彼は脳信号を音声として出力する前に、視線追跡装置を使って修正を加えることもできる。

しかし、BCIの中には「接続」が不要なものもある。完全埋め込み型で無線通信に対応したものだ。また、より低侵襲なものもある。例えば、脳の表面に有線電極を配置するだけのものや、電極を備えたキャップを装着するだけのものもある。これらにはトレードオフが存在する。記録したいニューロンに近づけば近づくほど、信号の質は向上する。しかし一般的に言えば、手術の侵襲性が高いほど、合併症のリスクも高くなる。

BCIはその機能もさまざまだ。ハレルはALSを患っているが、現在使用されているBCIの多くは脊髄損傷を持つ人々の脳内に埋め込まれている。こうした人々は通常、ある程度の麻痺を抱えており、例えば腕や脚を動かせない一方で、顔の動きや発話能力は保たれている場合がある。そのようなケースでは、BCIを使って移動を補助するさまざまなデバイスを制御することができる。

2024年、当時ヒューストン大学に在籍していたミシェル・パトリック=クルーガーと同僚らは、1998年から2023年末までに実施されたBCIの全臨床試験のまとめを発表した。1998年は最初のデバイスが埋め込まれたと彼らが考える年だ。彼らは21の研究グループを特定し、それらのグループが合計67人のボランティアを対象にBCIの試験をしていたことを明らかにした。

「それ以降、その数はかなり増えています」と、ユトレヒト大学医療センターのBCI研究者マリスカ・ファンステーンセルは言う。2026年1月には、兆万長者のイーロン・マスクが創業したBCI企業であるニューラリンク(Neuralink)が、過去2年間で21人にデバイスを埋め込んだと発表した

別のBCI企業であるシンクロン(Synchron)は現在、北米とオーストラリアで臨床試験を実施している。上海を拠点とするニューラクル(Neuracle)は2024年11月からBCIの試験をしており、最近、臨床試験以外での使用に向けた承認を取得した。競合するニューラリンクの元共同創業者が共同設立したプレシジョン・ニューロサイエンス(Precision Neuroscience)も、脳の表面に設置するタイプのBCIの試験を進めている。

同時に、学術研究も継続されている。ハレルと共同研究をしたUCデービス校のチームは、過去20年間にわたって活動を続けているBCI研究プロジェクト「ブレインゲート(BrainGate)」の一部だ。他の学術チームも、完全埋め込み型から低侵襲型まで、さまざまなデバイスの研究を進めている。

パトリック=クルーガーの論文が発表された2024年以降、脳電極を埋め込まれた人の数は2倍以上に増加したと、ファンステーンセルは述べている。「現在の私の推計では、約150人になります」と彼女は言う。

技術も向上している。例えば、ブレインゲートの試験を見てみよう。この試験の最初の17年間は、研究者が「ポイント・アンド・クリック」コミュニケーションと呼ぶ手法、つまりユーザーが脳活動によってカーソルを操作し「クリック」できるようにすることに焦点を当てていた。しかし近年、チームは発話のデコードへと方向転換したと、チームの主任研究者であり、ハレルの電極を埋め込んだ人物でもあるデイビッド・ブランドマンは言う。現在、ハレルのデバイスはボイスクローンを使用しており、出力される音声はハレルの声の過去の録音に基づいている。

しかし、BCIはいまだ実験段階にある。誰がその恩恵を受けられるのか、またデバイスがどれほどの期間持続するのかについては、まだ多くの疑問が残っている。これまでのところ、BCIの多くは脊髄損傷を持つ人々に埋め込まれてきた。例えばALSを持つ他の患者にとってどのような恩恵があるかについては、さらに知見が乏しい。デバイスが当初、完全なロックイン状態にあった人を含めてALS患者を助けていたものの、最終的にはBCIが機能しなくなった事例もある。そして科学者たちはその理由をまだ十分に解明できていない。

解明するための唯一の方法は、さらなる研究と、ハレルのようなボランティアの参加だ。だからこそ、臨床試験が本格的に始動しているのは喜ばしいことだ。2年後の状況についても、必ずお伝えすることをお約束したい。

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生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
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