クモの巣が「DNAの罠」に、生態系調査を変える意外な採取基材
絶滅危惧種の監視や、外来種の早期発見に欠かせないのが、身の回りの生き物を数える調査だ。だが従来の方法は手間がかかる。近年注目される環境DNAの分析でも、どこから試料を採るかが課題だった。そこで研究者が目をつけたのが、クモの巣だ。 by Stephen Ornes2026.08.27
私たちの身の回りにどんな生き物がどれだけいるのかを数えることは、さまざまな保全活動に不可欠だ。生物多様性の把握、移動の追跡、外来種の発見に役立つ。しかし、こうした個体数調査では、人が目で確認したり、捕獲したり、その他の方法で検出した生物を集計する必要があることが多い。手間も費用もかかり、それでも調査に抜けが生じることがある。
だが、この10年間の技術革新によって、生態系のモニタリングは大きく変わった。生物学者たちはDNAシーケンシング技術を利用して、環境DNA(eDNA)、すなわち生物が環境中に放出した遺伝物質を分析するようになった。糞、土壌、水、空気から採取したサンプルを使うことで、絶滅危惧種を監視したり、人がその姿を目にする前に外来種を検出したりする新たな手段が科学者にもたらされた。
さらに近年、研究者たちはeDNAの宝庫を発見した。クモの巣だ。もともと粘着性のあるクモの巣は、巣を作ったクモ自身から出た物質や食べかすに加え、重要なことに、近くの動物の唾液や植物の花粉といった生物由来の微細な残骸も捕らえる。どうやらあらゆる生物が、空気中を含め、至るところに大量のDNAを放出しており、クモの巣はそれを容易に捕捉するのだ。「おそらく、これまで試してきた中でも最高の採取基材の一つです」と、オーストラリア・パースのカーティン大学の分子生態学者ジョシュア・ニュートンは語る。彼は脊椎動物の個体群を研究するため、花や小川、枯れ木の洞、さらには走行中の自動車に取り付けたフィルターからも試料を採取してきた。
ニュートンは最近、クモの巣から検出される生物多様性を、パース郊外の動物園と野生動物保護区の近くで採取した他の試料(植生の拭き取り試料、水、土壌、フィルターを取り付けた扇風機)と比較した。それぞれに明確な強みがあった。植生の拭き取り試料では森林性哺乳類がより多く検出され、水のサンプルではより多くの魚類が同定された。しかし、受動的に試料を集める方法の中では、脊椎動物を識別する能力でクモの巣に匹敵するものはなく、その結果はフランスで実施された同様の研究とも一致した。
だが、ここで厄介な問題が出てくる。意味のあるデータを得るには、約40個のクモの巣を壊さなければならなかったのだ。「生物の住処を採取してしまうのは、私たちが目指していることに、ある意味で相反します」とニュートンは言う。
幸い、この研究はニュージーランドのワイカト大学のゲノム研究者、アンジェラ・マクゴーランの目に留まった。彼女は地元のハロウィン用品店で人工のクモの巣を1袋買い、数本のコートハンガーに巻き付けて屋外に吊るした。この合成素材は近くの牛や羊のeDNAを捕捉し、近くの鳥舎にいる外来種の鳥類のeDNAも捉えた。また、真菌の胞子については本物のクモの巣よりもよく検出できた。農業への脅威を監視する植物病理学者にとっては朗報だ。彼女のグループは現在、人工クモの巣によって、クモの巣の優れたDNA捕捉能力をどこでも再現できる、安価で極めて効率的な方法が実現できるかどうかを調べるため、より大規模な実験を計画している。
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- スティーブン・オーンズ [Stephen Ornes]米国版 寄稿者
- 米国ナッシュビルを拠点に活動するサイエンスライター。
