KADOKAWA Technology Review
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ARM Wrestles Its Way Into Supercomputing

孫正義の野望が見えた!
ARM買収でインテル超え

スマホ用プロセッサとして地位を固めたARMが狙うのは、インテルの牙城であるスパコン分野だ。 by Jamie Condliffe2016.08.23

イギリスの半導体設計会社ARMホールディングスがスーパー・コンピューター専用プロセッサを発表した。

ARM(ソフトバンクが7月に買収を発表)製のチップは、世界中のモバイル機器のほとんどに搭載されている。だが、今回発表されたのは高性能コンピューティング専用の新しいタイプのチップ・アーキテクチャで、大量のデータを同時に処理できる、いわゆるベクトル処理を用いており、金融計算および科学計算などの応用に適している。

ARMがスーパー・コンピューターに関わるのはこれが初めてではない。富士通は7月、理化学研究所計算科学研究機構のスーパー・コンピューター「プロジェクト京」の後継機を、ARMチップで開発すると発表している。実際、22日に発表された「京」の後継機が、新しく発表されたARMアーキテクチャにとって初のライセンス先になる。

ARMはエネルギー効率の高いプロセッサを開発することに定評があり、モバイル機器用途で人気が高い。ARMのプロセッサはスマートフォンやタブレットのバッテリーを食わないため、アップル、クアルコム、エヌビディアなどがARMプロセッサの設計ライセンスを得ている。熱放出が少なく、低消費電力というARM製チップの特徴は、そのままスーパー・コンピューターなど大規模なデータ処理アプリケーションでも、望ましい特性なのだ。

インテルは、ソフトバンクによるARMの買収に不安になっているはずだ。かつて市場を支配していた半導体メーカーであるインテルは、モバイル機器向けのチップ開発の機会を逃し、モバイル分野でのARMの優位を許してしまった。スーパー・コンピューターはインテルが今でも中心的な役割を担う分野だが、現在、世界最速のスーパー・コンピューターは中国製チップを使っており、ARMが張り合おうと目論むのはインテルではなく中国勢なのだ。

ただし、ARM製チップを採用したスーパー・コンピューターが今後どれだけ成功するかは未知数だ。富士通の「京」後継機が稼働する2020年(予定)が、最初の大きな試練になる。インテルはその全行程を注意深く見守ってる。

関連記事(AnandTech、“Supercomputer Powered by Mobile Chips Suggests New Threat to Intel”、“$32 Billion Buyout of ARM Is a Giant Bet on the Internet of Things”、“Intel Outside”)

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クレジット Image courtesy of Fujitsu
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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