KADOKAWA Technology Review
×
R.I.P., Google Cardboard

さよなら、ありがとう、
グーグル・カードボード

グーグルの新型携帯電話「ピクセル」とVRゴーグル「デイドリーム・ビュー」の組み合わせが、VR体験を身近にする。 by Signe Brewster2016.10.05

グーグルが10月4日に披露したVRゴーグル「デイドリーム・ビュー」(79ドル)は、他の製品とはっきり違う印象のある製品だ。

デイドリーム・ビューの基本設計は、他の多くのモバイル向けVRゴーグルと同じ。前面を開いてスマホ(グーグルの新型携帯電話「ピクセル」等、Android陣営から登場するデイドリーム対応スマホが使える)を取り付け、ベルトでゴーグルを頭に装着し、スマホを2つのレンズを通して覗きこむと、360度のパノラマ画面を体験できる。

他の製品と異なるのは、衣服に使われるような素材で作られており。プラスチックやスポンジ製の競合製品とは造りがかなり違う。ゴーグルには手のひらサイズのリモコンが付属しており、クリック可能なタッチパッドと2つのボタンが付いている。動かしたり狙ったり振ったりする動きでゴーグルを操作し、映像にも反映される使い方ができる。サムスンのGear VRゴーグルが採用した側面をタップする方法は、けっして快適ではなく直感的にも感じられなかった。また、グーグル・カードボードにはひとつしかボタンがなく、できることが限られてしまう。デイドリーム・ビューなら、ゲームをしたりゴーグルのユーザーインターフェイスをスクロールしたりするのがずっと簡単だ。

Google worked with clothing designers to create the Daydream View.
グーグルは服飾デザイナーと共同でデイドリーム・ビューを開発した

デイドリーム・ビューの競合製品のもうひとつの違いは、取り付けるスマホとソフトウェアにある。

スマホの黎明期、アップルのiPhoneの美しいデザインと、よくまとまったソフトウェア、アップストアのユーザー体験は、多くのイノベーションを起こす背景になった。グーグルの新スマホ「ピクセル」は次の段階の到来を告げる製品だ。

スマホは我々の生活で最も重要な部分を占めているが、グーグルが考え直したのは、ユーザーが使う他のテクノロジーの中に、スマホをどう位置づけるかだ。ピクセルのエントリーモデルの価格は649ドルだが、中心に据えられているバーチャル・アシスタントは、ディナーの予約や映画の上映時間の調査、レストランから映画館までの距離を算出できる。ボットがユーザーのアプリ全ての知能を集め、1カ所で利用できるようにする(「Siriとアレクサを倒す グーグルの強みは検索」を参照)。

「人工知能(AI)はVRに大変革をもたらすかもしれません。いちいちアプリを立ち上げなくて済むので、質問したらすぐに答えが得られる体験は、没入感が高く、まるで実体験のような感じを受けるからです」というのは、デザインコンサルタント会社アーティファクトのジョン・マン役員(UXデザイン担当)だ。

デイドリーム・ビューやピクセルと並んで、グーグルは新しいクロム・キャスト(スティック型インターネット放送機器)とグーグル・ホーム(アマゾン・エコーに似た据置型のアシスタント・デバイス)を発表した。全体がひとつの大きなエコシステムで、ユーザーの状況に最も合った画面に切り替えて使うことを想定している。もはやVRゴーグルは暇なときに手に取っていじり回す目新しいアクセサリーではない。これこそグーグルの新ラインナップの主役なのだ。

ではカードボードはどうなってしまうのか? 低コストVRゴーグルが消えることはないだろう。VRはまだ米国の各家庭に足場を築いてはいないから、ニューヨーク・タイムズ紙のような会社が何千、何万台の安いゴーグルを売りさばくための役には立つ。だがデイドリーム・ビューをピクセルなどデイドリーム対応スマホと組み合わせるのはとても簡単なので、ついにカードボードは主役の座を降りて、どうでもよい製品へと転落するのだ。

shutterstock_454968127
グーグル・カードボード(2014年発表、2016年退役)
人気の記事ランキング
  1. Don’t panic about the latest coronavirus mutations, say drug companies 新型コロナ「変異種」を過度に恐れる必要がないこれだけの理由
  2. The winners of Innovators under 35 Japan 2020 have been announced MITTRが選ぶ、日本発の35歳未満のイノベーターを発表
  3. Don’t worry, the earth is doomed 人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク
  4. Singapore’s police now have access to contact tracing data シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に
  5. The kitchen of the future is here, it’s just not evenly distributed 電子レンジ、真空調理器超える「キッチン・テクノロジー」の未来
シグニー ブリュースター [Signe Brewster]米国版
シグニー・ブリュースターは科学とテクノロジーのライター。特に注目しているのは、たとえば実質現実やドローン、3Dプリントなど、芽生えたばかりのテクノロジーが今後どうなるか、です。記事は、TechCrunch、Wired、Fortuneでも執筆しています。
Innovators Under 35 Japan 2020

MITテクノロジーレビューが主催するグローバル・アワード「Innovators Under 35」が2020年、日本に上陸する。特定の分野や業界だけでなく、世界全体にとって重要かつ独創的なイノベーターを発信していく取り組みを紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Don’t panic about the latest coronavirus mutations, say drug companies 新型コロナ「変異種」を過度に恐れる必要がないこれだけの理由
  2. The winners of Innovators under 35 Japan 2020 have been announced MITTRが選ぶ、日本発の35歳未満のイノベーターを発表
  3. Don’t worry, the earth is doomed 人類を滅亡に導く、15の破壊的リスク
  4. Singapore’s police now have access to contact tracing data シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に
  5. The kitchen of the future is here, it’s just not evenly distributed 電子レンジ、真空調理器超える「キッチン・テクノロジー」の未来
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020SDGs Issue

今、世界中の企業や機関の技術者・研究者たちが各地で抱える社会課題を解決し、持続可能な世界の実現へ向けて取り組んでいる「SDGs(持続可能な開発目標)」。
気候変動や貧困といった地球規模の課題の解決策としての先端テクノロジーに焦点を当て、解決に挑む人々の活動や、日本企業がSDGsを経営にどう取り入れ、取り組むべきか、日本が国際社会から期待される役割について、専門家の提言を紹介します。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る