KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
This E-Ink Post-It Never Needs to Be Charged

充電不要の電子インク版ポストイットをマイクロソフトリサーチが開発

ポストイットと油性マーカーが不要になるかもしれない。 by Jamie Condliffe2016.10.24

想像してみよう。忘れないように書いたメモが机のあちこちに散らばっているのと、そうではなく、携帯電話がto-doリストを電子ペーパーに送信するのはどちらがいいだろうか。しかも、電子ペーパーは充電不要。ただの想像ではなく、基本的にはマイクロソフトリサーチが、下のようなポラロイド写真風の小さなディスプレイで、すでに実現したことだ。

The office of the future might have far fewer scraps of paper.
未来のオフィスはひょっとすると、今よりも紙の使用量が大幅に減るかもしれない

今週開催されたユーザー・インターフェイス・ソフトウェア・テクノロジー (UIST) 学会で発表された論文によれば、電子ペーパー製ポストイットは小型の太陽光電池を内蔵しており、周囲の光からエネルギーを得ることで、シンプルな電子ペーパーのディスプレイと消費電力の少ないBluetoothチップを動作させている。すでに登場から10年以上の電子インクは画面を書き換えるときしか電力を消費しないので、この種の用途には最適だ。

マイクロソフトリサーチのトビアス・グロッス・プッペンダル研究員は、ニュー・サイエンティスト誌のインタビューに対して、電子ペーパー製メモ用紙は「まさにポストイットのように使えます。再使用できるし、別の場所にあるデバイスと同期させたり、プログラムを書けば、最新の情報を表示したりできます」と語った。部屋の照明が十分に明るければ、電子ペーパー製ポストイットは太陽光発電でコンピューターやスマホから更新情報を受信し、1分ごとに画面を更新できる。おそらく、to-doリストをあちこちに貼り付けるより、手間が省けるだろう。

shutterstock_235895917

最近では、周囲の環境から電力を得る装置を開発する動きが広がっている。今年のMIT Technology Review主催のイベントEmTech MIT 2016では、ワシントン大学のシャム・ゴラコタ助教授が、電源を内蔵せず、Wi-Fiを利用することで、他のデバイスと接続できるコンタクトレンズを披露した。無電源を可能にしたのは、空中の電波のエネルギーを活用する新しいアプローチだ。

もし、まだ明確な用途が見えてこないIoTが本当に便利だとすれば、この種の進化が欠かせない。ついでに、ケーブルが少なくなって、今より身の回りがすっきりするといいのだが。

(関連記事:Microsoft Research, New Scientist, “Power from the Air,” “This Contact Lens Will Kick-Start the Internet of Disposable Things,” “Can Electronic Devices Harvest Energy on Their Own?”)

人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
タグ
クレジット Image courtesy of Tobias Große-Puppendahl
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る