KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
Top White House Economist: AI Isn’t Going to Steal Jobs

ホワイトハウスのトップ・エコノミストがAIは仕事を奪わない、と明言

本当に心配なのは、人類がまだ十分な人工知能を持っていないことだ。 by Mike Orcutt2016.10.27

オバマ米大統領のトップ経済アドバイザー、大統領経済諮問委員会のジェイソン・ファーマン委員長はロボットが人間の仕事を奪うことはないと考えている。人工知能に関するファーマン委員長の最大の心配事は、現在のところ、人工知能が十分に進化していないことだ。

人工知能の未来についての議論は、経済学者を二分させている。これまでと同じことが続くと見る学者もいる。つまり、新しいテクノロジーが出現し、ビジネスのやり方が変わるが、結局は経済が順応すると見る。一方で、人工知能は経済のルールを変え、ロボットが人間から仕事を奪い、大規模な失業と不平等が生まれると見る学者もいる。ファーマン委員長は10月26日、ワシントンD.C.のテクノロジー会議で「私は確実に結局は経済が順応する派の考えだ」と述べた。

Jason Furman, chairman of the White House Council of Economic Advisors, addressing reporters in 2013.
大統領経済諮問委員会のジェイソン・ファーマン委員長(2013年)

米国と他の先進諸国では、生産性の伸びが停滞している。また、主要な層の労働力が縮小している。特に25~54歳の男性で顕著だ。それでも、ファーマン委員長は新しいテクノロジーが前例のない失業と不平等を生み出すとは考えていない。

人々は長い間、機械が仕事を奪うのではないかと心配してきた。しかし、ファーマン委員長は、これまで通りだという。つまり、実際には、機械は人々を豊かにする。そして、豊かになった人々がより多くの金を使うのだ。機械が取って代わる仕事も確かにあるが、同時に新しい仕事も生まれ、商品やサービスを供給し、人々は余った金でそれらを買いたがる。「今回だけこれまでと違う理由が見つからない」とファーマン委員長は述べた。

とはいえ、人工知能の成長により、これまでにない課題が生じないとは限らない。政府が公正で安全なやり方で、確実に社会にとって利益を実現する重要な役割を担う必要がある、とファーマン委員長はいう。高い技能を必要としない労働者は特に、ロボットに仕事を奪われるかもしれない。あるいは、司法当局の偏ったアルゴリズムのように、不正な結果を招く可能性もある。

しかし、こうした問題は世界的なベーシックインカム導入のような、新しい経済的解決法を必要とはしない、とファーマン委員長はいう。そうではなく、ファーマン委員長が最も危機感を抱いているのは、人類にはさらに多くの人工知能が必要になることだ。人工知能は経済のほんのわずかな部分でのみ変革をもたらす。人工知能にはもっと重要な役割があり、それは基本的な研究と開発に委ねられているという。政府がこれまでにない立場でそう支援しなければならない。

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
マイク オルカット [Mike Orcutt]米国版 准編集者
暗号通貨とブロックチェーンを担当するMITテクノロジーレビューの准編集者です。週2回発行しているブロックチェーンに関する電子メール・ニュースレター「Chain Letter」を含め、「なぜブロックチェーン・テクノロジーが重要なのか? 」という疑問を中心に報道しています。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る