KADOKAWA Technology Review
×
Blizzard’s New E-Sports League Looks a Lot like Mainstream Sports

ブリザード、NFLさながらのプロゲームリーグを創設

勝ち負けを決めるビデオゲームが人気を増す一方、主催者も売り上げを増やそうとしている。 by Michael Reilly2016.11.08

eスポーツが、オタク系のニッチな存在から、世界中から圧倒的な注目を浴びるほどに急成長した姿には目を見張るものがある。eスポーツ界のリーダーは今後、次の段階へのステップアップを狙い、本物のプロスポーツリーグさながらの性格を帯びた新事業を展開する。eスポーツ界の大御所として、スタークラフトシリーズ発売以来大ヒットを続けるブリザード・エンターテインメントが手掛けるeスポーツリーグは、全米プロフットボールリーグ(NFL)さながらの仕組みだ。

今年初めに発売されたアクションシューティングゲーム『オーバーウォッチ』(国内ではPlayStation 4用にスクエアエニックスが販売)の爆発的ヒットによって設立された「オーバーウォッチ・リーグ」は、過去十年ほどの急成長で作り上げられたeスポーツの在り方とは一線を画している。

 

個人やチームのプレイヤーが一流ゲーマーに成長し、スポンサーによる支援や賞金を得ていくのとは違い、オーバーウォッチ・リーグでは、都市に根ざしたチームを設立しようとしている。さらに、シーズンごとの成績によってチームの存続を決めるのではなく、チームやプレイヤーの一部は長期的に活躍できるようにして、従来のスポーツチームと同様、ファンに地元チームへの愛着を持ってもらうのが狙いだ。

Watching the Overwatchers.
オーバーウォッチ観戦中の様子

eスポーツを組織化する画期的な取り組みは、ここ最近続いている。一流プレイヤーは、イギリスのプレミアリーグで活躍するサッカーチーム(サッカーゲームFIFAのプレイ権)や、フィラデルフィア・セブンティシクサーズ(オーバーウォッチや、ブリザードのLeague of Legendsのプレイ権)などと契約を結んでいる。こうした人気スポーツチームの動きは、従来のスポーツが生き残り戦略と理解できるだろう。若者がeスポーツの観戦に費やす時間は、従来のスポーツ観戦に費やす時間を上回っているという見解もあるほどだ。

明らかなのは、ブリザードもeスポーツというトレンドの最先端を走りつつ、多くのことを学んでいることだ。オーバーウォッチ・リーグに参加するチームは、メディアとの取引、商品販売、ブリザードへのスポンサー支援によって得られる売上高をオーバーウォッチと分配する。一定の時期に開催されるイベントは、全米プロフットボールリーグ(NFL)さながらのプレイヤー移籍、一流プレイヤーに与えられる長期契約、地方チームのリーグ昇格などがあるが、間違いなく評判を生むだろうし、オーバーウォッチの人気は高まるだろう。それだけでなく、オーバーウォッチの売り上げも伸ばしてくれるようだ。

たとえば、今週末はブリザードにとって史上初の、オーバーウォッチの世界大会が開催された。トーナメントを勝ち進んだチームによる戦いは白熱を極め、BlizzConに集まった観客は、プロさながらの実況放送が響き渡る中、驚きや喜びの声を上げた。決勝戦では、7本勝負を破って韓国チームがロシアチームを完封したが、素人目に見ても一挙一動に対する歓喜は目に見張るほどだった。もちろん、世界大会のWebサイトの一番下にあったのは、ゲームを購入すると書かれた大きなボタンだ。

(関連記事:Polygon, PC Gamer, Reuters, “ディープマインド、今度はスタークラフトで駆け引きや模倣を学習,” “NFLの視聴率が今年低いのはビデオゲーム観戦のせい?,” “お金と勉強はどっちが大事? 中国と欧米、価値観の違い“)

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
タグ
クレジット Photograph by Lionel Bonaventure | Getty
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る