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災害レジリエンスの基礎築く
自然被害に立ち向かった
たった一人の女性
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What one woman’s quest to save her neighbors reveals about climate resilience

災害レジリエンスの基礎築く
自然被害に立ち向かった
たった一人の女性

地球温暖化に伴う異常気象は、今後ますます増大していくだろう。しかし、自然現象が大規模災害に変わるかどうかは、人々の取り組み次第だ。 by Karen Hao2019.05.28

電話が鳴ったのは、超大型ハリケーンの「イルマ(Irma)」がマイアミに上陸する3日前のことだった(日本版注:ハリケーン・イルマは2017年9月10日にフロリダ州に上陸した)。

地元の低所得者向け公営住宅に住み、移動は車椅子に頼っている高齢女性からの電話だった。食品も水も、緊急用酸素もなくなったという。電話を受けたヴァレンシア・ ガンダーの手元には何も残っていなかった。地域リーダーであり活動家でもあるガンダーはそれまで数日間、支援を求めてきた人々のために非常食や防災用品を買い求め、自分の個人的な蓄えを使い果たしていた。食料品店は品切れ状態で、ガンダーの手元にはハリケーン襲来後に備えて保管しておいた200ドルしか残っていなかった。

2017年のほぼ1年間、ガンダーはマイアミ都市圏の「100のレジリエント・シティ(100RC: 100 Resilient Cities)」イニシアチブの執行運営委員会のメンバーを務めた。100RCは、悪化する気候変動の影響に対応するために地域を強化する取り組みを進めている。同委員会は、影響を最も受けやすい住民を守る計画を立てようと努力していた。マイアミ都市圏では貧困ラインに満たない生活を送っている住民が推定30%いる。そして、その2倍の数の住民がぎりぎりの生活を送っている。ハリケーン・イルマが最大風速80メートルの暴風をともないカリブ海の島々を直撃しながら南フロリダに向かっている状況で、ガンダーは同委員会の準備では間に合わないことを理解していた。ガンダーは当時の絶望感を思い出し、「なす術がありませんでした」と声を震わせながら言う。「そうなんです。それがきっかけでした。どうにかしないと、という感じになったのです」。

裕福な住民たちがハリケーン・イルマの襲来から逃れるための最後のフライトを予約していた時、ガンダーは時間に追われて働いていた。電話をかけてきた高齢女性のために緊急避難所を見つけ、他の活動家や地域リーダーたちに立て続けにリクエストを送った。ハリケーン・イルマが9月10日朝に上陸して停電するまでに、ガンダーはソーシャルメディアのキャンペーンを立ち上げ、ハリケーン襲来後の草の根の救済活動本部として使う空き倉庫を確保した。

マイアミで最も大きな影響を受ける貧しい人たちを守るためのガンダーの土壇場での行動は、図らずも、地域のレジリエンス(回復力)を向上させるまったく新しい方法の基礎を築くことになった。このアプローチは今では、マイアミのように激化するハリケーンや干ばつ、洪水と格闘しているアメリカ全土の都市で採用されている。

地域の災害回復力(災害レジリエンス)の近代研究は、1995年にシカゴを襲った壊滅的な熱波を起源とする。1995年7月、シカゴでは気温が摂氏43度近くまで上昇し、極度の高湿度の中、739人が死亡した。アメリカ史上最悪の死者数を記録した熱波となった。市当局者は「異常気象現象」で、犠牲は避けられないものだったと嘆いた。しかし、数年後に死者のデータを再検討した社会学者エリック・クライネンバーグはまったく異なる結論を導いた。現在ではクライネンバーグが導いたこの結論に基づい …

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