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再エネ倍増でも困難な
インドの「脱化石燃料」
世界が抱える大いなる矛盾
Photographs by Saumya Khandelwal
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India’s surging economy could doom climate efforts—unless richer nations step up

再エネ倍増でも困難な
インドの「脱化石燃料」
世界が抱える大いなる矛盾

13億人の人口を抱えるインドで再生可能エネルギーの導入が加速している。だが、いくら大規模な太陽光や風力発電発電所を作っても、急速な経済成長に伴う電力需要の増加には追いつけず、二酸化炭素排出量の削減は困難な状況にある。 by James Temple2019.08.13

インド半島の奥深くにあるカルナータカ州東部の平地に立っても、パヴァガダ太陽光発電施設(Pavagada Solar Park)は見えてこない。だが、ほこりっぽい小さな村の向こう側に施設が見え始めると、そこに広大で大規模な発電所が広がっているのが分かる。

道路沿いの有刺鉄線を張った柵からは、くすんだ灰色のパネルが四方に広がり、52平方キロメートルものシリコン街を形成している。

バンガロールから北へ車で3時間の場所にある、この25億ドル超のプロジェクトが完成すれば、世界最大級の太陽光発電施設の1つとなるだろう。数百万枚のパネルが、日の照りつけるこのインドの地から、大型原子力発電所2つ分に相当する2ギガワットの電力を生み出すのだ。

インドでは、他に少なくともグジャラート州の5ギガワットとラージャスターン州の2.3ギガワットの2つのプロジェクトの太陽光発電施設を建設中で、今後さらに拡大する見込みだ。

インド政府は最近、数十もの大規模な太陽光および風力発電プロジェクトを完成または承認しており、2015年以降、再生可能エネルギーの発電容量をほぼ倍増させている。過去2年間、太陽光発電プロジェクトの導入量では、インドは中国に次いで世界第2位だ。すべてを合わせると、インドには約75ギガワットの太陽光や風力などの再生可能エネルギー源を導入しており、今後45ギガワット以上が増加予定だ。

2015年の政府高官の発表によれば、2022年までに再生可能エネルギー容量を4倍以上の175ギガワットにする計画だ。2015年後半、パリ協定に基づき、インドは2030年までに発電量の40%をクリーン・エネルギー源とし、排出係数(GDPに対する二酸化炭素排出量)を2005年比で少なくとも33%削減するという数値目標を掲げた。

インドの事例は、深刻な貧困国であっても、政府の投資と支援があれば再生可能エネルギーによる発電が急速に拡大する可能性を示しており、非常に期待されている。だがそれはまた、クリーン・エネルギーの増加と気候変動要因の削減が同じではないことも強調している。

インドが気候変動要因の削減を達成するには、クリーン・エネルギーをただ増やすだけでなく、現在インドの発電量の55%弱を占める石炭火力に取って代わらなければならない。そして、それは世界で最も急速に成長し、最も急速に都市化の進む経済圏の1つであるインドでは、すぐに実現しない。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、2040年までにインドのGDPは5倍以上となり、エネルギー需要を2倍以上に押し上げる。これは、この期間における世界のエネルギー需要増加量の約4分の1に相当する。国民の生活水準が向上すると空調設備によるエネルギー需要だけでも15倍になり、都市の気温はさらに上昇するだろう。

「しかし、建設した多くの再生可能エネルギー発電所でも、火力発電の代わりにはならないでしょう」と、パヴァガダ太陽光発電施設内でいくつかのプロジェクトを推進した風力および太陽光発電の開発業者であるリニュー・パワー(ReNew Power)の創業者スーマント・シンハ社長は話す。「実際、インドの排出量は今後も大幅に増加するでしょう」。

推定値は大きくばらつくいているが、IEAの予測によれば、インドの電力部門からの二酸化炭素排出量は、現在計画中の再生可能エネルギー発電を考慮しても2040年までに80%増加する。それまでに、インドは世界第2位の排出国として米国を追い越し、地球温暖化防止の取り組みの阻害要因となるだろう。しっかりとした政策や投資を実施しても、インドが必要量を削減できなければ、富裕国が削減量を増やさなければならない。

開発の推進

2018年の「環境と資源の年次評価(Annual Review of Environment and Resources)」掲載の分析によれば、気候変動対策に関する国際論争の初期の数十年間、インドは「共通だが差異ある責任(common but differentiated” responsibilities)」原則(編集部注:気候変動枠組条約の原則の1つ)に固執し、先進国は歴史的な世界最大の二酸化炭素排出国として「一義的に責任を取って取り組む」べきだと(理性的に)主張していた。

だが、こういった態度は、前政権下で変わり始め、ナレンドラ・モディ首相のインド人民党(Bharatiya Janata Party)が2014年に権力を握った後に急速に変化した。この国家主義者の政権は、再生可能エネルギーを、およそ、エネルギー安全保障、国際的な名声、大気汚染、気候変動の順で、国民と政府にとって共通の課題だと捉えたのだ。

当初、インドは固定価格買取制度に焦点を合わせていた。この制度は、発電者に価格を保証することで新しいプロジェクトを推進する政策手段だ。だが現在の主な政策は、連邦や州機関が一定量の新しい風力発電や太陽光発電を建設する権利を競争入札によって決めるというものだ。

このような競売は激しい入札競争を引き起こし、インドの再生可能エネルギー価格を引き下げた。太陽光発電の電力価格は、米国の大規模太陽光発電の助成を受けた電力価格と同程度の1キロワット時あたりおよそ3.5セントまで下がった。

多くの場合、国営企業は、設置や撤去、移動などが容易な「プラグ・アンド・プレイ」型の巨大発電施設を作り、プロジェクト開発者に代わって土地の取得や許可など面倒な手続きをする。「インフラは目の前にあります。あとは、自分のパネルを運んできて、プラグを差し込むだけです」と、ニューデリーの「エネルギー・環境および水の協議会(CEEW:Council on Energy, Environme …

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