おもちゃのトラックを台から離れるように動かして空中に浮かんでいるように見せても、生後6カ月の乳幼児はまばたきしないだろう。しかし、ほんの2カ月から3カ月後に同じ実験をすると、その乳幼児は何かおかしなことが起こっているのを即座に認識する。重力という概念をすでに学んでいるからだ。
「物体は落下するものだと乳幼児に教えられる人はいません」。米国コンピューター学会(ACM:Association for Computing Machinery)が企画した7月11日のWebセミナーで、ニューヨーク大学のヤン・ルカン教授(フェイスブックの主任AI科学者でもある)は、こう話した。乳幼児の運動制御能力はあまり高度ではないので、「乳幼児は観察を通じて世界に関する多くを学ぶ」とルカン教授は仮説を立てている。
ルカン教授の仮説は、人工知能(AI)の限界を乗り越えようとしている研究者にとって重要な示唆を与えるかもしれない。
深層学習は、AI分野で起こった直近の革命を引き起こす原因となったAIアルゴリズムのカテゴリーだ。深層学習により、視覚などの知覚能力を機械に与える技術が大きく前進した。しかし深層学習は、現実の概念モデルに基づいた高度な推論能力を機械に植え付けるには力不足だ。つまり、機械は周囲の世界を本当には理解しておらず、そのため、周囲の世界とやり取りをする能力に欠けている。しかし、新たな手法がこの限界を克服するのに役立ちつつある。例えば、ある種のワーキング・メモリーを使うことで、基本的な事実や原則を学習したり導き出したりしたことを蓄積し、将来のやり取りの際に利用できるように …
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