1年でもっともホットな人工知能(AI)研究カンファレンスである「神経情報処理システム(NeurIPS:Neural Information Processing Systems)」 が、学術的な意見交換よりも巨大なパーティーになっていると聞かされたのは、わずか2年前のことだった。最高の才能を手に入れるために企業はおみやげを配り、盛大などんちゃん騒ぎを繰り広げた。インテルが主催したパーティーではラッパーのフロー・ライダーが招かれた。参加者たち(ほとんどは20代前半から30代の男性)は、高額の給与と企業からの引きも切らない誘いにクラクラしながら、タダ酒を飲んで夜を明かしたのだった。
もっとも、私はこうした時代のNeurIPSカンファレンス(当時の略語は「NIPS」)を直接見たことはない。最初に参加したのは去年のことで、狂乱っぷりがピークに達した後のことだった。外部的には、2016年の合衆国大統領選挙での失望によって、人々が社会の中でのアルゴリズムの影響力に疑問を抱き始めており、AIコミュニティは疑いの目にさらされていた。内部的には、セクシュアル・ハラスメント、反ユダヤ主義、人種差別、年齢差別などが報告され、カンファレンス参加者たちは、自分が参加し続けるべきなのか疑問に思うようになってきていた。
だから、私が2018年にカンファレンスに参加したときには、すでにダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)の委員会が組織されており、長く続いてきたNIPSという略語もアップデートされていた。それでもなお、今年のカンファレンスの進行は、去年のものに比べて異なったものだった。パーティーはより小規模になっており、講演は社会的な面に気を使ったものになっていた。そして交わされる会話も、この分野が対応しなければならない倫理的な課題をより意識しているようであった。
AIの役割が劇的に広がっていき、それとともに問題点も大きくなっていくにつれて、AIコミュニティはついに、自分たちの力とそれに伴う責任について自覚的になり始めたようだ。ある参加者は私に次のように話した。「コミュニティが、大人になりつつあるように感じる」。
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