ほんの1カ月ほど前、欧州連合(EU)は新しい人工知能(AI)とデータの利用に関するガバナンス戦略の概要を発表した。とりわけデータの「主権」を主張し、品質と倫理的な調達を確保するために欧州のAIの訓練に欧州のデータのみを使うことを求めるEUの新指針は、データのプライバシーを保護し、信頼できるAIを促進するとして、そのリーダーシップが高く評価された。だが、フィナンシャル・タイムズ紙によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な流行)により、規制当局は再考を迫られている。
EUの規制が当初の想定どおりに機能した場合、科学の進歩や開発の速度を遅らせるリスクがあり、現在急ピッチで進められているワクチンやアルゴリズムの研究開発に影響を与える恐れがある。規制当局は指針における推奨内容を変更していないものの、世界中の規制機関の指標と目されていた法制化のスケジュールを延期した。
EUの規制当局が直面しているトレードオフが反映しているのは、多くの政府や企業が現在取り組んでいるデータ・プライバシーと公衆衛生の間の主導権争いだ。どこにいても、迅速にデータにアクセスできることがアウトブレイクに対抗するためには重要となる。 一方で、プライバシー対策の緩和についてもまた、物議を醸している。「人々は自問した方がいいかもしれません。これまでの歴史において、政府がいったん監視ツールを手に入れた後、謙虚かつ慎重な姿勢を維持することがあったでしょうか?」 。こう書いたのは、中国の著名な評論家である北京大学ジャーナリズム・コミュニケ …
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