KADOKAWA Technology Review
×
【新規購読者限定】ひと月あたり1000円で始められるキャンペーン実施中!
フォードやGMが人工呼吸器製造に名乗り、メドトロニックは設計を公開
Courtesy: Ford Motor Co.
Ventilator firms are racing to boost production as the pandemic accelerates

フォードやGMが人工呼吸器製造に名乗り、メドトロニックは設計を公開

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、世界各地で人工呼吸器の不足が懸念されている。米国では、フォードやゼネラルモーターズが人工呼吸器の製造を発表。メトドロニックは人工呼吸器の設計を公開した。 by James Temple2020.04.02

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の治療には人工呼吸器が欠かせない。大手メーカーが相次いで、異例の提携をしたり、設計情報を共有したりして、人工呼吸器の緊急増産に取り組んでいる。しかし、今後数週間に急増するであろう感染者に対して、この取り組みが医療機関のニーズを満たせるかどうかはまだわからない。

人工呼吸器を使えるかどうかは、急性呼吸器疾患に苦しむ患者の生死を分ける。人工呼吸器は患者の呼吸を維持し、部分的に液体がたまった肺の回復を助ける。しかし、深刻なアウトブレイクの影響に苦しむ複数の国ではすでに、新型コロナウイルス感染症の患者数が急増し、利用できる人工呼吸器の台数をはるかに上回っている。米国のいくつかの地域でも、深刻な人工呼吸器不足が発生していることを関係当局は危惧している。

米国には2月の時点で、患者が利用できる人工呼吸器は約17万台あった。しかし、1918年に発生したインフルエンザの世界的大流行(スペインかぜ)と同じくらい深刻なアウトブレイクとなった場合、74万台以上の人工呼吸器が必要となる

ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、今後数週間で感染者数のピークを迎えるニューヨーク州だけでも、患者を治療するために3万台の人工呼吸器が必要になるかもしれないと述べている。ニューヨーク州は確認された感染者数が6万7000人、死者数が1200人を超え、米国のアウトブレイクの中心となっているが、クオモ知事によると、現在ニューヨーク州にある人工呼吸器は約1万2000台だ。

世界最大級の人工呼吸器メーカーの1つであるメドトロニック(Medtronic)は3月18日、すでに生産量を40%以上増やしており、2倍以上の生産能力拡大へと「順調に向かっている」と述べた。同社のオマー・イシュラックCEO(最高経営責任者)は3月25日、米ニュース専門放送局CNBCのインタビューで、電気自動車メーカーのテスラ(Tesla)がニューヨーク州バッファローにある太陽光パネル工場で、メドトロニックの人工呼吸器の最上位機種を生産すると発表した(メトドロニックはアイルランドのダブリンに本社を置いているが、オペレーションと販売のほとんどは米国で展開している)。

その後、メドトロニックは3月30日に、人工呼吸器のモデルの1つの設計を無料公開する計画を発表した。公衆衛生緊急事態以外では想像もできないような動きだ。同社は、35か国で販売しているポータブル人工呼吸器の仕様を公開することで、学術機関、スタートアップ、その他の製造業者が人工呼吸器を迅速に増産できるようになることを期待していると述べた。

もちろん、公開したのはコンパクトな10年前のモデルであり、メドトロニックの「高性能」シリーズのモデルではない。また、業界関係者によると、部品の調達、オンラインでの製造、規制上の問題への対応に関わる深刻な課題を考えると、公開された設計に基づいて他の企業がどれだけ迅速に人工呼吸器を製造できるかについては不明だ。ただし、比較的少数の人工呼吸器しか製造できなかったとしても、一部の患者が助かるかもしれない。

MITテクノロジーレビューは本件についてメドトロニックに問い合わせたが、執筆時点で返事はなかった。

また、フォード・モーターは3月30日に、人工呼吸器メーカー大手のGEヘルスケアと協力し、今後100日間で5万台、その後は月間3万台の人工呼吸器を製造できるようになると発表した。フォードは、アイロン(Airon)が生産する人工呼吸器の設計をライセンス取得している。

ゼネラルモーターズ(GM)も同様に、人工呼吸器の増産を目指し、ワシントン州ボセルのベンテック・ライフ・システムズ(Ventec Life Systems)との提携を発表した。同社のこの動きは、新型コロナウイルス感染拡大防止活動をしている民間団体、ストップ・ザ・スプレッド(StopTheSpread.org)が呼びかける「民間部門の協調対応」の一環である。両社は、4月中に最初の人工呼吸器を提供する予定だとしており、 最大月間1万台まで増産できるようになると語った。

一方で、マサチューセッツ工科大学(MIT)ミネソタ大学の研究者をはじめとするいくつかの学術グループも、低コスト人工呼吸器のオープンソース設計の公開を目指していると発表した。同様に、これまで数多くのエンジニアや愛好家が、基本的な人工呼吸器の設計を作り出して共有している。

米国食品医薬局(FDA)は最近、人工呼吸器およびその他の呼吸装置に対する施行方針を変更した。今回の公衆衛生上の緊急事態の期間、規制当局への追加申請を省略した制限付きの変更を許可し、通常は医療機器を生産しない企業がこの緊急事態に介入するための指針を提供している。

人工呼吸器増産についての行きつ戻りつの協議の末、トランプ大統領は3月27日に「国防生産法」を発動し、米国企業に人工呼吸器の生産を命令し、連邦政府が数千台を購入すると発表した。

しかし、産業界や学界の取り組みと同様、トランプ大統領の動きは手遅れの可能性がある。人工呼吸器の増産スピードがパンデミックの加速に追いつかないのではないかと、多くの人が心配している。

(関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧

人気の記事ランキング
  1. A million-word novel got censored before it was even shared. Now Chinese users want answers. 「この原稿は違法です」中国のワープロソフト、未公開小説をロック
  2. Corruption is sending shock waves through China’s chipmaking industry 中国の半導体産業に激震、国有ファンド幹部逮捕で投資方針見直しか
  3. Homophobic misinformation is making it harder to contain the spread of monkeypox 「サル痘」感染拡大でまた陰謀論、同性愛嫌悪の誤情報も拡散
  4. OpenAI is ready to sell DALL-E to its first million customers オープンAI、文章から画像を描く「DALL-E2」を100万人に提供
  5. How EnChroma’s Glasses Correct Color-Blindness 色覚補正メガネ エンクロマの仕組み
ジェームス・テンプル [James Temple]米国版 エネルギー担当上級編集者
MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. A million-word novel got censored before it was even shared. Now Chinese users want answers. 「この原稿は違法です」中国のワープロソフト、未公開小説をロック
  2. Corruption is sending shock waves through China’s chipmaking industry 中国の半導体産業に激震、国有ファンド幹部逮捕で投資方針見直しか
  3. Homophobic misinformation is making it harder to contain the spread of monkeypox 「サル痘」感染拡大でまた陰謀論、同性愛嫌悪の誤情報も拡散
  4. OpenAI is ready to sell DALL-E to its first million customers オープンAI、文章から画像を描く「DALL-E2」を100万人に提供
  5. How EnChroma’s Glasses Correct Color-Blindness 色覚補正メガネ エンクロマの仕組み
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.7
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.7世界を変える10大技術 2022年版

パンデミック収束の切り札として期待される「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)飲み薬」、アルファ碁の開発企業が作った「タンパク質構造予測AI」、究極のエネルギー技術として期待が高まる「実用的な核融合炉」など、2022年に最も注目すべきテクノロジー・トレンドを一挙解説。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る