KADOKAWA Technology Review
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観測史上最も近距離から撮影された「太陽」画像、ESAが公開
Solar Orbiter/EUI Team (ESA & NASA)
These are the closest images of the sun ever taken

観測史上最も近距離から撮影された「太陽」画像、ESAが公開

欧州宇宙機関の探査機「ソーラー・オービター」が地球と太陽の距離の約半分にあたる位置から撮影した太陽の画像が初めて公開された。これまではっきりと確認できなかった太陽表面の小規模なフレアの様子が明らかになっている。 by Neel V. Patel2020.07.20

これまでのところ、2020年は太陽観測の当たり年だと言える。ハワイのダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡は、過去最高と言える太陽の画像を発表した。これらの画像ではキャラメルのような太陽の表面を確認することができ、個々のプラズマのセルがゆっくりと上下に噴出している様子が見られる。これに負けじとばかりに、欧州宇宙機関(ESA)主導の「ソーラー・オービター(Solar Orbiter)」ミッションで撮影された太陽の画像が初めて公開された。ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡の画像ほど驚くべきものではないかもしれないが、それでも7600万キロ(地球と太陽の距離の約半分)という、天体観測史上最も近距離で撮られた太陽の画像だ。

この新たな画像からは、太陽のコロナ(大気)から発されている、絶え間なく激しい活動を確認でき、直径400キロから500キロメートルしかない現象の様子を明らかにしている。とりわけ、太陽表面近くの小規模の「キャンプファイア」のような太陽フレアを確認できる。「これまではこうした太陽フレアをはっきりとは確認できなかったので、本当にエキサイティングです」と、同ミッションの極端紫外線撮像装置(EUI)の研究責任者であるデイヴィッド・ロング博士は言う。

観測された「キャンプファイア」と呼ばれる太陽フレア。直径数百キロメートルと小さいため、はっきりと観測したのはソーラー・オービターが初めて。

これまで科学者が頭を抱えてきた最も差し迫った課題の1つは「コロナ加熱問題」だ。太陽の大気であるコロナは100万度以上もあり、太陽の表面温度である約5500度 よりはるかに高温なのはなぜだろうか。

今回の新たな観測が示しているのは、この加熱が太陽全体で起こっている多数の小さな活動(キャンプファイアなど)により起こっているのではないかということだ。これらが全て、コロナに熱を与えるエネルギーを放出し、それが合わさってコロナの温度を上昇させている可能性がある。

これがコロナ加熱の仕組みであると証明するにはさらなるデータが必要となる。「しかし、非常に有望な最初の観測となっています」(ロング博士)。

10種類の異なる観測機器を搭載するソーラー・オービターは、2020年2月10日に打ち上げられた。複数の異なる波長で太陽を直接観測するための6台の望遠鏡と、探査機の周囲の環境(太陽風の分布や磁力線の構造など)をモニターする4つの機器だ。極端紫外線撮像装置はキャンプファイアを写す高解像度の撮像機器であるが、他の機器は他のレンズを通して太陽を観測する。

今回発表された新たなデータは、ソーラー・オービターのミッションで6月に初めて太陽に接近した際に記録されたものだ。2022年初めには、探査機は太陽から4800万キロメートル以下の距離にまで到達する予定だ。これは、水星の軌道に近い距離である(水星の近日点での距離は4600万キロメートル、遠日点での距離は7000万キロメートル)。

ソーラー・オービターのミッションは、太陽の物理的な特性を解明することだけではない。同ミッションの背景には、より実用的な理由がある。宇宙の天候、つまり太陽により活性化され、宇宙へと押し出される荷電粒子の流れを理解することだ。地球の磁場はこれらの荷電粒子から地球を守っているが、宇宙の激しい天候は、地球周回軌道上の電子機器(GPSや通信に使われる重要な人工衛星など)や人々の日々の暮らしに電力を供給する地表の送電網などを壊してしまう可能性がある。

ソーラー・オービターの極端紫外線撮像装置(EUI)と偏光・日震撮像装置(PHI:Polarimetric and Helioseismic Imager)により撮影された太陽の5つの画像。

たちの悪い宇宙の天候事象を予測可能にして人々の暮らしを守るためには、太陽磁場がどのように活性領域と関わり、太陽フレア、コロナ質量放出、激しい太陽風の発生を引き起こしているかについてのさらなる理解が必要となる。

ソーラー・オービターは太陽を研究するために使用されている唯一のツールというわけではないが、他の探査機ではできない役割を果たしている。ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡などの地上ベースの観測所は、地球の大気が原因で、紫外線やX線のスペクトルでは太陽を上手く観測できない。また、米航空宇宙局(NASA)が2018年に打ち上げた探査機「パーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)」 は太陽に接近する予定だが、実際には接近しすぎることになるため(太陽表面から約600万キロメートル)、有用な形でカメラで直接太陽を撮影することはできない。

今のところ、ソーラー・オービターは巡航するフェーズに入っており、地球から離れ、太陽の向こう側に行くことになる。そのため、同探査機の望遠鏡は、2021年11月の科学フェーズが開始されるまで、キャンプファイアの現象を観測できない(4台の機器は既に定常運転状態にある)。しかし、それでも太陽を観測するのに良い機会である。新しい太陽周期は始まったばかりか、あるいは今年の後半に始まる予定だ。どちらにしろ、新しい活動期間に向けて活性化している ところだ。太陽で新しい爆発が起これば、ソーラー・オービターが集めたデータにより、このような爆発がどのようにして起こるのか、それらがどのように人類の活動に大きな影響を与え得る宇宙の天候に関係しているのか、どうすれば爆発を事前に予測できるのかが解明できるだろう。「ソーラー・オービターの素晴らしい成果として得られるのは、まさにこうしたことです」とロング博士は言う。「まだ初期段階でしかないですが、これらの写真は最初の撮影で素晴らしい光景を見せてくれています。科学的な観察を定期的に始める来年の11月が待ち遠しいです」(同)。

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MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。
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