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休校続く米国で関心高まる
「ポッド」教育
コロナ禍で格差も拡大
Ms Tech | Pixabay
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American parents are setting up homeschool "pandemic pods"

休校続く米国で関心高まる
「ポッド」教育
コロナ禍で格差も拡大

休校が続く米国で、子どもたちが集まって自宅学習するための少人数グループである「ポッド」に対する保護者たちの関心が高まっている。従来のホームスクーリングより手軽で、コストや親の負担を抑えられるが、問題点がないわけではない。 by Tanya Basu2020.08.11

ここ数週間のところ、ソーシャルメディアの子育てグループ内で新しい言葉が登場するようになった。「パンデミック・ポッド」「コーポッド」「マイクロスクール」「ホームスクール・ポッド」といった言葉だ。パンデミックが秋の新年度にまで忍び寄る中で現れたこれらの言葉は全て、自宅で一緒に勉強するために作られた生徒たちのグループのことを指している。

ホームスクーリング(編注:在宅教育。通学せずに家庭で学習することで米国では制度化されている)ではない。地方および連邦政府が学校を再開するリスクについて延々と議論し続けている中、保護者たちは自宅で教育をするために同じ年頃の子どもたちのグループを必死で集めている。個人授業料の支払いをしたり、1人の親に子どもたちの監督を委託して残りの親たちは仕事に戻れるようにしたりするために結束するというアイデアだ。少人数のポッドなら、何十人もの子どもたちを1つの部屋に詰め込むことで生じる感染リスク無しに、学校の社会面での教育もある程度提供できるはずだ。

ポッドにはさまざまな形態がある。あるものは、隔離集団のルールに従い、グループ以外の人とは接触しないことにしている。またあるものは、グーグルドキュメントや、ローカルSNSのネクストドア(Nextdoor)、フェイスブックのグループなど、現代のネットワーキングツールを使用して集い、屋外と屋内で子どもたちを入れ替えて授業中はマスクを着用する。安全面での懸念から自主的に学校の代わりとして使用しているグループもあれば、社会的距離の遵守から断続的になってしまいがちな秋の学校の授業を補完するためにポッドを利用する人々もいる。多くの場合、保護者が子どもたちを指導するが、定年退職した元教師や教育過程の修了生に協力を求めているグループもある。

https://twitter.com/gingi0/status/1285416083512492033

この動きに乗じようとしている起業家たちもいる。数学教師であり、教育コンサルタント、2児の母親でもあるアリス・ロカテッリはザ・ポッド・ドット・コム(thecopod.com)を、ほんの数週間前に共同創業した。ポッドに関心のある人々が居住地や子どもの年齢のほか、マスクが必要かどうか、どの程度の頻度で開催するかなどの必要事項を入力すると、他の家族や教育者たちとマッチングされる仕組みだ。この話を聞いた筆者が、出会い系アプリのアルゴリズムのホームスクーリング版のようだと述べたところ、ロカテッリは笑って、「私たちはこの仕組みをコーポッドのためのイーハーモニー(eHarmony、編注:マッチングの仕組みに強みを持つ出会い系サイト)と表現しています」と語った。

教育分野と技術分野での経験を持つロカテッリは、保護者達が自分に合うポッドを見つけるための草の根的な取り組みが実施されていることに気づき、このビジネスのアイデアを思いついたという。「もっと大規模にする必要があることは明らかでした」とロカテッリは語る。そこでロカテッリと彼女のビジネスパートナーは、ポッドの設立に必要なよくある質問のいくつかを集め、登録時に入力できるシンプルなフォームを作成した。すぐに反応があった。ロカテッリによると、現在米国中にユーザーがおり、その大半がサンフランシスコやシカゴ、ニューヨークなどの都市に集中しているという。

スイング・エデュケーション(Swing Education)の共同創業者兼CEO(最高経営責任者)であるマイク・テンは、パンデミック発生前に実施していた代理教師を学校に派遣するビジネスに、新しい角度から取り組んでいる。スイングは現在、複数の学校と共に施設内で教育を提供することを計画しており、「バブルズ(Bubbles)」と呼ばれるプログラムを通して学習ポッド向けに教師の派遣もしている。

教師たちは「多くの人々と一緒に居るリスクを冒さずに安定した収入が得られる展望」に喜んでいるとテンCEOは語る。

計画は始動しつつある。テンC …

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