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世界最大級の新型コロナ調査データベースが活用アイデアを募集
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Ideas wanted: Help make the world’s biggest covid-19 symptom database useful

世界最大級の新型コロナ調査データベースが活用アイデアを募集

フェイスブックと共同で新型コロナウイルス感染症の兆候を調査しているカーネギーメロン大学の研究グループが、データ活用のアイデアを募集している。 by Karen Hao2020.09.10

4月以降、カーネギーメロン大学(CMU)のデルファイ(Delphi )研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の兆候追跡を目的とした世界最大級のデータベースを作成している。現在同グループは、フェイスブックや他のパートナーとともに新たなチャレンジ(コンテスト)を立ち上げ、米国のパンデミック対応を改善するためのデータ・プロジェクトをクラウドソーシングしようとしている。

米国における極めて優秀なインフルエンザ予測チームの1つであるデルファイ研究グループは、米国疾病予防管理センター(CDC)によるCOVID-19に関する予測の取り組みを支援するため、フェイスブックを介して、米国内の人々を対象に症状に関する調査を実施してきた。最新の調査には、自身が発症したか、あるいは発症した人を知っているか、人とどれくらいの頻度で接触しているか、心の健康または経済面での困難に直面しているかなど、36項目の質問がある。フェイスブックは毎日、無作為にユーザー群を選択し、ニュースフィード内で調査を働きかけている。調査の回答は、フェイスブックが目を通すことなくデルファイ研究グループに直接送られる。

5月にはメリーランド大学が共同研究に加わり、国際版の調査を管理している。データ・プライバシー規制の違いや世界保健機関(WHO)のニーズの変化により、質問内容は若干異なっている。双方のデータの集約版は参加者に公表され、研究者は必要に応じて、匿名化された非集約版への特別アクセスを要求できる。

Interactive covid symptom map of the world
調査を通じて集積されたCOVID-19の症状データのマップ。画像をクリックするとインタラクティブ版に移動する。

デルファイ研究グループは、プロジェクト開始以来、米国でおよそ1000万件、海外では1500万件の調査回答が集まったと公表している。2項目以上の質問に答えた米国の回答者の85%超が、最後まで調査に回答しており、完全回答率は研究者の当初の予想を大幅に上回っている。デルファイ研究グループは10を超す組織と提携して、さまざまな目的で豊富なデータ分析を実施した。とりわけ研究者たちは、病院向け地域予測モデルの開発、さらにはロックダウンがメンタルヘルスに及ぼす影響の研究を望んでいる。

運営チームに名を連ねる、カーネギーメロン大学のアレックス・ラインハート助教授(統計学・データサイエンス)は、「このデータにはとても多くの情報が存在し、あるいはさらに多くの情報が存在する可能性があるので、われわれ単独でこのデータを分析し、そこからあらゆる洞察を導き出して伝えることは不可能です」と述べる。「私の知る限り、これは国勢調査以外では過去最大規模の調査です。したがって、今回のCOVID-19の症状に関する調査は、パンデミックを研究している多くの研究者がデータを利用できることが、最も有益であると私たちは感じています」。

チャレンジの企画チームは、研究者から一般人まで、データ活用に斬新なアイデアを提案できる参加者を幅広く募りたい考えだ。ラインハート助教授は、「私は基本的に新しいことに関心があります」と述べる。「『自分はコミュニティで何をすべきか。このすべての情報が自身の具体的な意思決定にどのように役立つのか』といったことを知りたい人たちにとって、収集した全データを意味あるものにするあらゆるアプローチです。おそらく、より優れた予測手法やシンプルなダッシュボードの形で実現するでしょう」。

このチャレンジは、9月29日まで提案を受け付けている。最終選考者を決定した後、最終選考者に関連するパートナー組織や公衆衛生当局の他、提案されたアイデアから恩恵を受ける可能性がある他の関係者との連携を目指す。

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MITテクノロジーレビューの人工知能(AI)担当記者。特に、AIの倫理と社会的影響、社会貢献活動への応用といった領域についてカバーしています。AIに関する最新のニュースと研究内容を厳選して紹介する米国版ニュースレター「アルゴリズム(Algorithm)」の執筆も担当。グーグルX(Google X)からスピンアウトしたスタートアップ企業でのアプリケーション・エンジニア、クオーツ(Quartz)での記者/データ・サイエンティストの経験を経て、MITテクノロジーレビューに入社しました。
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