KADOKAWA Technology Review
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偽トランプが司会のディープフェイク新番組がスタート
Screenshot via YouTube
The creators of South Park have a new weekly deepfake satire show

偽トランプが司会のディープフェイク新番組がスタート

ディープフェイク技術をフル活用して作られた風刺番組が米国で始まった。ホストを務めるのは、トランプ大統領そっくりの顔をしたニュース・リポーターだ。 by Karen Hao2020.10.30

ディープフェイク、すなわち人工知能(AI)で合成したメディアを駆使し、現代の特に重要な話題を茶化す風刺番組が始まった。風刺コメディアニメ「サウス・パーク(South Park)」を制作したチームが手掛け、週に1回放送される「サッシー・ジャスティス(Sassy Justice)」という番組のホストを務めるのは、「フレッド・サッシー(Fred Sassy)」という人物だ。サッシーはワイオミング州シャイアンの地方ニュース局のリポーターで、声や髪型、人格はまったく異なるものの、ディープフェイクで加工されたドナルド・トランプ大統領そっくりの顔をして出演する。

10月26日にユーチューブで公開された最初のエピソードでは、ディープフェイクそのものを取り上げ、フレッド・サッシーが忠実な視聴者に対して、見えているものすべてを信用しないように警鐘を鳴らしている。風刺的な仕掛けとして、「本物」として提示されている映像はもちろんすべて加工されており、「偽物」とされているものはすべて本物の映像か人形が演じている。この回では、信憑性の高いディープフェイクを幅広く取り上げ、アル・ゴア元副大統領やフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)、それにトランプ大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナーが登場する。ディープフェイクで加工されたトランプ大統領も出演している。

サッシー・ジャスティスは、もっぱら顔交換技術を駆使して作られている。顔交換は、今年初めにオープン・ソースのアルゴリズム「ディープフェイスラボ(DeepFaceLab)」が公開されたことで、アーティストや映画制作者の間で人気が高まっている。アルゴリズムの仕組みは、ある人物の映像を使って訓練し、出来上がったその人物の顔面を「ベース俳優」に重ねるというものだ。俳優の体や声、演技は維持されたままで元の表情がディープフェイクの顔に変換されることから、もっとも信憑性の高い映像に仕上げるのに適した役者がキャスティングされる。ただし、このプロセスはいつもシームレスなわけではなく、ポスト・プロダクションの編集も必要だ。

最近では、多くのオーディオビジュアル制作で高品質なディープフェイクが使われている。スポーツ界のスターたちを加工したフールー(Hulu)のCMや、ウラジミール・プーチンや金正恩といった独裁者を加工した有権者の権利を訴える広告がそうだ。さらに、撮影対象の身元を守るために初めてディープフェイクが使用されたドキュメンタリー作品『チェチェンへようこそ(Welcome to Chechyna)』もあった。サッシー・ジャスティスは、ディープフェイクを番組の中核に据えた番組シリーズの初の例だ。

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カーレン・ハオ [Karen Hao]米国版 AI担当記者
MITテクノロジーレビューの人工知能(AI)担当記者。特に、AIの倫理と社会的影響、社会貢献活動への応用といった領域についてカバーしています。AIに関する最新のニュースと研究内容を厳選して紹介する米国版ニュースレター「アルゴリズム(Algorithm)」の執筆も担当。グーグルX(Google X)からスピンアウトしたスタートアップ企業でのアプリケーション・エンジニア、クオーツ(Quartz)での記者/データ・サイエンティストの経験を経て、MITテクノロジーレビューに入社しました。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

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