3Dプリントのロケット・ラボ、初のブースター回収に成功
ニュージーランドの企業であるロケット・ラボは、主力ロケットのブースターを海上に軟着水させ、回収することに成功した。同社は3Dプリンターで製作したロケットで小型人工衛星を打ち上げるビジネスを手掛けており、ブースターを回収して再利用できるようになれば、より頻繁な打ち上げが可能となる。 by Neel V. Patel2020.11.28
ニュージーランドの企業ロケット・ラボ(Rocket Lab)が、主力ロケットである「エレクトロン(Electron)」の発射および回収に成功した。同社として16回目に当たる今回のミッションには、パラシュートを使って第1段ブースターを海上へ軟着水させる実験が含まれており、節目となるミッションであった。
エレクトロンは現地時間11月20日午前1時46分頃、ニュージーランド北島の南端にあるロケット・ラボの発射場から打ち上げられた。今回のミッションで同社は、30個の衛星を地球低軌道に配置することに成功した。
エレクトロン・ロケットは高度7.9キロメートル以上で2分間飛行し、その後、第2段から切り離された第1段ブースターが180度回転してパラシュートを展開し、落下速度を落として太平洋上に軟着水した。軟着水したブースターは、船の乗組員が首尾よく回収できた。ロケット・ラボにとってロケットブースターの回収は初の試みだった。
スペースX(SpaceX)もブルーオリジン(Blue Origin)も、ロケットブースターの回収を長年実施している。だがこれら2社の方法は、ブースターを垂直に着陸させるものだ。
ロケット・ラボは別の方法で先駆者となることを目指している。最終的な目標は、ブースターが落下している最中にヘリコプターで捕捉し、回収することだ。ブースターがパラシュートを展開した後、海へ落ちる前にパラシュートのラインをすばやく掴むのだ。
ロケット・ラボは2020年3月下旬に、海上約約1.5キロメートルから落下したダミーのロケットをヘリコプターで捕捉するデモを実施した。それより前の2019年12月と2020年1月のミッションでは、エレクトロン・ロケットを誘導して大気圏に再突入させるデモに成功し、第1段ブースターが再突入に耐え得ることを証明した。11月20日のミッションは、ブースターが無事に地球に帰還できることを示すものだ。
Welcome back to Earth Electron! pic.twitter.com/lI39kLAS4Z
— Peter Beck (@Peter_J_Beck) November 20, 2020
ロケット・ラボは、積載量の少ない打ち上げを専門としている。同社の全長17メートルのエレクトロン・ロケットは3Dプリンターで製作されており、現役のロケットとしては他に類がない。エレクトロンは、ロケット自体が軽すぎるため、重量の非常に大きな衛星は宇宙に送れない。だが、小型衛星の台頭により、ロケット・ラボが収益を見込める大きな市場が開かれている。ブースターを回収して頻繁にロケットを打ち上げられるようになれば、なおさらだ。同社は来年以降、バージニア州のワロップス島において、米国での打ち上げ作業を開始する計画だ。
また、将来的には深宇宙へのミッションも目論んでいる。2023年には、金星に向けて小型衛星を打ち上げ、金星の大気を調査して生命の痕跡を調べる計画もある。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。