KADOKAWA Technology Review
×
10/9「生成AIと法規制のこの1年」開催!申込み受付中
見知らぬ人を悼む人々——パンデミックで変わる「死」の受け止め方
Ms Tech | Getty
人間とテクノロジー 無料会員限定
The way we express grief for strangers is changing

見知らぬ人を悼む人々——パンデミックで変わる「死」の受け止め方

新型コロナウイルスのパンデミックは、死者との向き合い方も変えつつある。リモート葬儀に加え、ネット上では見知らぬ死者を追悼する動きも広がっている。 by Tanya Basu2020.12.14

クレア・レズバは3月下旬、ディードレ・ウィルクスの悲劇的な死について知った。マンモグラフィ技師だったウィルクスは42歳。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、自宅で人知れず死亡していた。ウィルクスの遺体のそばには、4歳の子どもの姿もあった。

バージニア州リッチモンドに住む医師のレズバはこの話に動揺した。「心に響きました。ウィルクスは私と同じくらいの年齢でしたから」。ウィルクスの死は、家族のもとへ新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を持ち帰ることに対してレズバ医師が抱いている、不安と恐怖を増長させるものでもあった。

レズバ医師は反応した。追悼プロジェクトという形で行動を起こしたのだ。レズバ医師は、時間を見つけては、医療従事者が亡くなったという知らせを探した。4月中旬までに150件の情報を収集し、自身のツイッター・アカウントに死亡記事としてツイートし始めた。レズバ医師は、「COVID-19で亡くなった米国の医療従事者(US HCWs Lost to Covid19)」というリスト作成が「自分の使命になりました」と話す。そして、リストは日に日に長くなっている。

https://twitter.com/CTZebra/status/1327602432499658752

 

https://twitter.com/CTZebra/status/1326322498833616898

 

レズバ医師のツイッター・アカウントは、新型コロナウイルス感染症の犠牲者を忘れないための、ネット上での新たな取り組みの1つに過ぎない。例えば、コビッド・メモリアル(Covid.memorial)は、亡くなった人々の人生について知ることができるバーチャル・スクラップブックだ。新型コロナで亡くなった米国の囚人を記載したあるグーグル・ドキュメントは、その犠牲者の数の多さと認知の低さをあらわにしている。あるいは、米国のフィリピン人医療従事者を追悼するために作られた別のカタログも存在する。

前出のグーグル・ドキュメントは米国自由人権教会がスポンサーとなっているものの、こうしたプロジェクトのほとんどは、見ず知らずの死者に敬意を表する一般のインターネット・ユーザーが独自に調査し、まとめたものだ。

大勢の人々が亡くなったこの年に、死者のことをよく知る方法を見つけたいと思うのは、理解に難くない。新型コロナの感染者はしばしば、1人で死を迎えることになる。ソーシャル・ディスタンスの観点から、死に際を見守り悲しみを受け止めるという通常の見送り方はできない。 パンデミックと死者数の増加がニュースの大半を占める中、感染を避けるために人々は孤立を余儀なくされ、無力感を感じている。 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #30 MITTR主催「生成AIと法規制のこの1年」開催のご案内
  2. A brief guide to the greenhouse gases driving climate change CO2だけじゃない、いま知っておくべき温室効果ガス
  3. Why OpenAI’s new model is such a big deal GPT-4oを圧倒、オープンAI新モデル「o1」に注目すべき理由
  4. Sorry, AI won’t “fix” climate change サム・アルトマンさん、AIで気候問題は「解決」できません
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る