KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
「ワクチン・パスポート」のアイデアはどこまで現実的か?
Singapore Press via AP Images
倫理/政策 無料会員限定
Will you have to carry a vaccine passport on your phone?

「ワクチン・パスポート」のアイデアはどこまで現実的か?

新型コロナウイルスのワクチン接種を証明する「ワクチン・パスポート」というアイデアが世界各国で提案されている。だが、医療・技術の両面から実現にはハードルが多い。 by Cat Ferguson2021.01.08

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な流行)が始まった当初はとても不可能だと思われていたことが、現実となっている。ワクチンが、記録的な早さで完成したのだ。新型コロナウイルス感染症のワクチンは、死と恐怖の影に覆われていた休暇シーズンに希望をもたらした。

だが、当局がこの大規模なワクチン・キャンペーンの詳細を練る一方で、市民は今も基本的な疑問を抱き続けている。それは「誰がワクチンの接種を受けられるのか」「ワクチンが接種済みかどうかをどう周知するのか」「職場や学校、政府機関の入口でワクチン接種の記録提示を求められることはあるのか」という疑問だ。

アナログまたはデジタルのツールで、ワクチンが接種済みであることを証明する「ワクチン証明書」や「免疫パスポート」を知っている方もいるだろう。それらを通常の生活に戻る手段として支持する専門家もいるが、プライバシーのリスクや差別・悪用の可能性について警鐘を鳴らす声も聞かれる。

それらの議論はまだ推測の域を出ないが、プライバシーや検証、倫理的な利用など基本的な問題があることは、ワクチンに限った話ではない。政府や企業は、誰が何をできるかの検証のために、新型コロナウイルス感染症に関する記録をすでに日常的に利用している。現時点で分かっている点について見ていこう。

ワクチンの接種記録自体は珍しくはないが、新しい利用方法がある

ワクチン接種の証明が必要なことについては、特に珍しいことではない。いくつかの国では、入国手続きの前に黄熱病ワクチンの接種証明が必要だし、義務付けられている予防接種を受けていなければ入学できない学校も多い。国民のワクチン接種状況を政府が追跡するのも、よくあることだ。世界各地の国および地方自治体は名簿を保有し、医師が接種記録を送っている。

だが、今回の接種証明の利用範囲拡大を巡っては、舞台裏で多くのことが起きている。政府や航空会社、雇用主、大学など数多くのグループが、健康記録を証明する方法や証明が必要な理由について激しく議論しているのだ。

議論の中で飛び交う言葉の中には、「ワクチン・パスポート」といった紛らわしい用語もある。市民の記録が、実際のパスポートのように機能する場面も考えられるだろう。例えば、新規入国の際に到着先の空港でスマホを取り出し、接種記録や検査の陰性結果のデジタル記録をスキャンする場合などだ。それらの記録は、社員証のような使い方もできるし、飲食店やバー、ショッピングモールへの入場パスとしても使える。

ワクチン・パスポー …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る