KADOKAWA Technology Review
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Here’s What Happens When You Add Scent to Virtual Reality

バーチャル・リアリティに匂いを加える最先端研究

実際には何も食べずに、食べる、味わうという行為がエンターテインメントになるかもしれない。視覚、触覚、嗅覚を組み合わせたアミューズメント施設や、世界中のレストランを実食体験ができるサービスが可能になる。 by Rachel Metz2017.02.01

Researchers at Stanford University’s Virtual Human Interaction Lab are exploring how scent—like that of a doughnut—can be combined with virtual reality.
スタンフォード大学のバーチャル・ヒューマン・インタラクション研究室が模索しているのは、香り(ドーナツ等)を実質現実と組み合わせる手法の可能性だ

スタンフォード大学のバーチャル・ヒューマン・インタラクション研究室で、VRゴーグルのレンズ越しにチョコレートやレインボー・クリスタル・シュガーがかかったドーナツを眺めていたとき、手には甘いドーナツにとてもよく似た感触があり、確実にチョコレートやドーナツの匂いがした。

ためらいながらも耐えられたのは幸運だったが、泡でできたドーナツを本物と認識してしまい、思わず食べてしまいそうになった。視覚や聴覚、触覚で食欲をそそられたのは間違いない。

私の反応は、スタンフォード大学のベンジャミン・リー研究員にとっては狙いどおりだ。リー研究員は、VRに匂いや感触を加える手法を通じて、VRで人間が食品をどう認識するかを研究している。

実質現実の商業利用が始まったばかりだが、学術分野でも企業でも、人間の認識に与える実質現実の有効性については以前から研究されており、実質現実と香りを組み合わせる方法も模索されてきた。他と比べてディストピア的な感じのする話ではあるが、リー研究員はさまざまな手法により、匂いと感触、実質現実の組み合わせが今後可能になると考え、ジェレミー・ベイレンソン教授(バーチャル・ヒューマン・インタラクション研究室の創設者で所長)と共同で研究を進めている。

たとえば、サケが絶滅した世界を想像してみよう。バーチャルなサーモン寿司を見て、サケに似た匂いを嗅ぎ、別の魚の本物の手巻き寿司を口にすれば、サケを食べたことがない人でも、サーモン寿司を食べる体験ができる。また、実質現実に香りを付け加えれば、食事を減らしたと実感せずに健康的な食生活を実現できる可能性もある。実際には主成分が植物性のパテを噛みながら、肉汁たっぷりなチーズバーガーを目と鼻で楽しめるようにもなるだろう。

ある実験でリー研究員は、手にドーナツの感触があり、VRゴーグル越しにドーナツを視認し、チョコレートのフレグランスに浸した綿棒で匂いを感じさせたときの人の反応を観察した。この実験により、実質現実で何かを食べさせて食品を実感するには、視覚だけ入れ替えても別のものを食べていると実感できないと証明された、とリー研究員はいう。

また、別の実験では、ドーナツが偽物だと説明した上で、VRゴーグルを装着した実験参加者に本物のドーナツを食べさせた。ドーナツを食べるのは何かの報酬ではなく、ドーナツを見たり匂いを嗅いだり感触を得たりしたとき、そうでない場合に比べて本物のドーナツを強く欲するかを明らかにしたい、という意図の実験だ。

リー研究員はこの実験から得たデータからまだ結論を導けていない。だが、複数の実験結果から、ドーナツをバーチャル世界で見たり、匂いを嗅いだり、感触を感じたりすると、ドーナツを食べたい気持ちになる、とリー研究員はいう。研究室で私が体感したことを考えると、その通りといえるだろう。

実験は、ドーナツ以外の食品の香りを組み合わせでも可能で、実際、ポップコーンやベーコンの香りでも調査しているという。だが、現時点でリー研究員は、ドーナツ店等の、食品が現在置かれている環境で、何が人に食べたいと感じさせるか、に関心が強い。私たちが普段暮らしているような殺風景な部屋ではなく、次のステップでは店頭のバーチャル化を検討しているのだ。

「自分がドーナツ店に入って、人で賑わっている店内でドーナツの匂いを嗅いでいる場面を想像してください。研究室にいるより、強い食欲を感じるでしょう」とリー研究員はいう。

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レイチェル メッツ [Rachel Metz]米国版 モバイル担当上級編集者
MIT Technology Reviewのモバイル担当上級編集者。幅広い範囲のスタートアップを取材する一方、支局のあるサンフランシスコ周辺で手に入るガジェットのレビュー記事も執筆しています。テックイノベーションに強い関心があり、次に起きる大きなことは何か、いつも探しています。2012年の初めにMIT Technology Reviewに加わる前はAP通信でテクノロジー担当の記者を5年務め、アップル、アマゾン、eBayなどの企業を担当して、レビュー記事を執筆していました。また、フリーランス記者として、New York Times向けにテクノロジーや犯罪記事を書いていたこともあります。カリフォルニア州パロアルト育ちで、ヒューレット・パッカードやグーグルが日常の光景の一部になっていましたが、2003年まで、テック企業の取材はまったく興味がありませんでした。転機は、偶然にパロアルト合同学区の無線LANネットワークに重大なセキュリテイ上の問題があるネタを掴んだことで訪れました。生徒の心理状態をフルネームで記載した取り扱い注意情報を、Wi-Fi経由で誰でも読み取れたのです。MIT Technology Reviewの仕事が忙しくないときは、ベイエリアでサイクリングしています。
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