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「ズーム疲れ」時代のつまらないテレカンを盛り上げる方法
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「ズーム疲れ」時代のつまらないテレカンを盛り上げる方法

リモートワークやハイブリッドワークが当たり前になり、ビデオ会議が普通のものになった。しかし、多くの人がビデオ会議にうんざりしていることも確かだ。そこで、会議にビデオゲームやVRの要素を取り入れる動きが活発になっている。 by Tanya Basu2021.09.14

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は3週間前、テレビ番組『CBS ディス・モーニング(CBS This Morning)』に出演し、司会のゲイル・キングと対談した。だが、2人はスタジオの席に座っていたり、ビデオ会議アプリを使ったりして話していたのではない。実質現実(VR)の中で会話していたのだ。

ゴールデンタイムに出演したザッカーバーグCEOが紹介したのは、「ホライズン・ワークルーム(Horizon Workrooms)」というフェイスブックが開発したアプリだ。このアプリは、同社の「オキュラス(Oculus)」ヘッドセットを介し、ユーザーをVR空間へと誘う。ザッカーバーグCEOとキングは、この日のためにアニメ調の自分たちのアバターを作成しており、モーションセンサーによって2人の頭や手の動きがアバターの動きとして再現されていた。

結果は、ひいき目に見てもぎこちないものだった。キングはザッカーバーグCEOのアバターにあるそばかすに驚き、ザッカーバーグCEOは「メタバース」について長々と語った。ある時点で、キングは答えにくい質問を投げかけた。「あなたはズームアウト(ズーム疲れ)を感じていましたか?なぜなら私はそうだったからです」。

ズーム(Zoom)が動詞として使われるほど普及し、同社は10億ドル近くを稼ぎ出すようになった。だが、ズームが広く普及したことには代償もあった。今回のパンデミックが原因でオフィス・ワーカーがバーチャル会議の利用を余儀なくされるようになってから、1年半が経過した現在、このビデオ会議アプリを日常的に使用している人たちがよく口にしているのが、「ズームアウト」あるいは「ズーム疲れ」しているという不満だ。

ズーム以外のテック企業が、自分たちも会議の形態に改革を起こそうと考えるのも無理はない。すぐにリモートワークがなくなるとは思えないからだ。しかし、ズームの栄冠を手にするためには、クリエイティブになり、従業員が延々と続くビデオ通話に疲弊してしまわないようにする工夫が必要だ。

そうした改革に取り組む企業の1つに、もちろんフェイスブックも入っている。ホライズン・ワークルームは、デジタルの「メタバース」を創造するという、かなり漠然とした野望に向けた、フェイスブックの最初のステップだ。メタバースとは、人々が働き、遊び、そしておそらくは企業に利益をもたらす広告を大量に目にすることになるバーチャル空間のことである。しかし、ホライズン・ワークルームのデモの後、多くの人がこのアプリをあざ笑った。例えば、あるライターは、このアプリが「実際のオフィス生活の最悪の部分」を捉えていると言い、別のライターは「魅力がない」と表現した。つまり、技術的にも従業員にとっても、完全没入型のバーチャル・ワークプレイスを実現する準備ができていないという意見で一致していたのだ。

とはいえ、企業はリモート環境で協調を促し、仲間意識を育む方法を必死に模索している。今のところ、完全没入型のVR環境というのはやり過ぎかもしれないが、多くの企業が、ビデオゲームの環境に似せたバーチャル世界を作ったり、ビデオゲームそのものを会議の場にしたりして、会議をもっと楽しいものにしようとしている。

そうすることで、従業員の生産性を高め、より幸せな生活を送ることができると期待されているのだ(どこかの企業ががうまくやってくれれば、の話だが)。

マイクロソフトの体験・デバイス担当主任科学者であるジェイミー・ティーバンは、体験に楽しさを取り入れることが重要な目標の1つである可能性を指摘する。ティーバン主任科学者が研究しているのは生産性だ。リモート会議によって、私たちの世界は窮屈なデジタルの四角形の中に閉じ込められ、コミュニケーションを取るための空間の使い方について疑問が投げかけられているという。より良いコミュニケーションのためには、遊びを通して空間を広げることが必要だというのが彼女の考えだ。「私たちは空間を利用するのが得意なのに、オンライン会議ではそれができずにいます。オンラインでは、ゲーム性と社会的なつながりを考えだすことが基本となるのです」。

そこで、8月初めのある朝、私はクモスペース(Kumospace)を使ってみた。このスタートアップ企業はグーグルを顧客に持ち、自社のホームページ上で「忘れられないバーチャル空間で有意義なつながりを作る」ことを約束している。自分が映っている動画が小さな四角形となって、ソファーやピアノ、観葉植物、スポティファイの 『クワイエット・アワーズ(Quiet Hours)』ミックスが流れるジュークボックスが置かれたバーチャルなロビー空間を動き回った。創業者兼社長のブレット・マーティンが画面に加わると、彼はその部屋の中を案内してくれた。私とマーティン社長との距離が離れすぎると、彼の声が小さくなった。現実世界を模した音響機能である。

「待って。見せた …

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