KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
米大統領が大企業にワクチン接種義務化、アメからムチへ方針転換
AP Photo | Andrew Harnik
There's a gig worker sized hole in Biden's vaccine mandate plan

米大統領が大企業にワクチン接種義務化、アメからムチへ方針転換

米国のバイデン大統領は大企業を対象に、従業員にワクチン接種を受けさせることを求める大統領令に署名した。停滞する接種率を踏まえ、これまでの「アメ」から「ムチ」に方針を転換した。 by Charlotte Jee2021.09.12

米国のジョー・バイデン大統領は、米国の大勢の労働者に対して、新型コロナウイルス・ワクチンの接種を求める大統領令に署名した。100人以上の従業員を抱えるすべての企業、保健医療や介護従事者、連邦政府職員や政府の請負業者が対象で、従業員にワクチンの接種か、週1回以上の検査を義務付ける。雇用者には、接種を受ける従業員に有給休暇を与える義務が発生する。

政府職員が拒否した場合には懲戒処分の可能性がある。適正に実施されれば、米国の労働者のおよそ3分の2がこの大統領令の対象となる(もっとも、すでに接種済みの労働者がどのくらいいるかは不明だ)。今回の大統領は、パンデミックを制御しようとする多面的な計画の一環。計画には、雇用者にワクチン接種のための有給休暇の付与を求めたり、大型の屋内施設に入場する際に接種済み証明や陰性証明を求めたりする措置が含まれている。

MITテクノロジーレビューが以前指摘したように、有給休暇の付与はワクチン接種を推進する効果的な方法だろう。だが、今回の大統領令も、従業員数100人以上の大企業だけを対象としており、ギグワーカーについては言及していない。本来であればギグワーカーは減少する時給補填の恩恵を最も受ける立場にあり、米国の労働人口のかなりの割合を占める上に、ますます増加傾向にある。また、米国内の840万人に上る失業者の救済にもつながらない。

バイデン大統領はなぜ、ここに来て義務化に動いたのか。政府はこれまで、お金や食べ物、ビールなどのインセンティブがワクチン接種を後押しすると考えていたが、いまだ8000万人が未接種となっている。2回の接種を完了しているのは1億7700万人で、接種対象の62.5%、全人口の52%にすぎない。つまり、アメを使ったアプローチを試みたものの十分な成果が上がらなかったことから、今度はムチを選ぼうというわけだ。

米国ではなお、1日の新規感染者数がおよそ15万人を記録しており、大統領はこの悲惨な状態はワクチン未接種者に原因があると考えているようだ。なおかつ、米国の多くの人々が同じように感じているとも確信している。バイデン大統領は未接種者に直接的に語り掛けて、こう言った。「私たちは我慢してきました。しかし、我慢もそろそろ限界です。あなたたちの接種拒否が、私たちみんなに犠牲を払わせているのです」

9月13日6時更新:第1段落の「PCR検査」を「検査」に修正しました。

人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る