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Whatever happened to DNA computing?

DNA、スピントロニクス……ムーアの法則後のコンピューターの未来

シリコントランジスタの微細化を原動力とするムーアの法則は、間もなく終焉を迎える。その一方で、シリコンの代替品は何年にもわたり提案され続けてきており、その一部は限られた用途ではあるが製品化もされている。 by Lakshmi Chandrasekaran2021.11.09

1947年に最初のトランジスターが開発された時、ロジックチップの中核を成すスイッチング素子であるこのデバイスがもたらす最終的な影響を、誰が予想できただろうか。

トランジスターがコンピューティングの主役に代わったのはシリコンのおかげだ。不純物を少量加えることで、シリコンはコンピューター・チップのトランジスターにほとんど理想的な材料を形成する。

50年以上にわたり、エンジニアはシリコンベースのトランジスターの小型化を重ね、その過程で、より小さく高速でエネルギー効率の良いコンピューターを生み出してきた。だが、長きにわたり続いた技術的勝利とそれによる小型化は、永久に続くわけではない。「シリコントランジスターの微細化は大きな限界に達しつつあるため、シリコンより優れたテクノロジーが求められています」とカリフォルニア州のAMDのコンピューター科学者であるニコラス・マラヤは話す。

シリコン・トランジスターに代わる可能性のあるテクノロジーは何だろうか? 過去50年にわたり、コンピューティングへの代替アプローチは数多く提案されている。そのうち最も印象的な5つのアプローチを紹介する。どれも大げさに宣伝されたが、結局シリコンに遠く及んでいない。だがもしかすると、まだ望みはあるかもしれない。

スピントロニクス

コンピューター・チップは、電子の流れ(より厳密にいえば、電子の電荷)を制御する戦略を中核に据えて作られている。一方で電子は、電荷に加えて、磁場でコントロールできるスピン(角運動量)も持つ。スピントロニクスは、ビットを表すのにスピンを利用できるというアイデアを基に1980年代に登場した。たとえば、スピンの向きの違いで「1」と「0」のビットを表現する。

理論上は、スピントロニクスのトランジスターは小型化でき、高密度のチップを可能にする。だが実際には、その構築に適した材料を見つけるのは困難だ。研究者によると、実現には基礎的な材料科学を研究する必要がまだあるという。

とはいえ、ニューヨーク州イサカ市にあるコーネル大学の応用物理学者であるグレゴリー・フックス准教授によると、スピントロニクスのテクノロジーはいくつかの非常に特殊な分野で商用化されている。これまでのところ、スピントロニクスの最大の成功例となっているのは、停電時のデータの損失を防ぐ不揮発性メモリだ。スピン注入メモリ(STT-RAM:Spin Transfer Torque Random Access Memory)は2012年以来製造されており、クラウド・ストレージ施設で使用されている。

メモリスター

従来のエレクトロニクスは、キャパシタ(蓄電器)、抵抗器、インダクタ(コイル)の3つの素子に基づいていた。1971年に電気技師のレオン・チュアは、それらに次ぐ第4の回路素子を理論化し、メモリーレジスタにちなんで「メモリスター」と名付けた。2008年にヒューレット・パッカード研究所の研究チームが、二酸化チタンを用いて最初の実用的なメモリスターを開発した。

理論上、メモリスターは記憶素子としても論理素子としても使用できるため、期待が …

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