「Wi-Fiのような給電技術で電源の制約をなくす」東京大学 笹谷拓也
MITテクノロジーレビュー主催の「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」から、東京大学大学院の笹谷拓也氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by Koichi Motoda2022.01.05
MITテクノロジーレビューは2021年12月16日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」を開催した。Innovators Under 35は、世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。昨年に続き2 回目の開催となる本年度は、35歳未満の起業家や研究者、活動家など15名のイノベーターを選出した。
その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの取り組みへ対する思いや、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。
笹谷拓也(東京大学大学院)
ワイヤレス充電と聞くと充電パッドを想像すると思いますが、私が実現したいのは、空間の中にあるものがすべて充電される、Wi-Fiのようなワイヤレス給電技術です。そこには、大きな電力を広い範囲に送ることが難しいという壁があります。その問題を解決し、ワイヤレス給電を部屋スケールにまで拡張するプロジェクトに取り組んでいます。装置や金属版などを計画的に配置し、3次元のエネルギー場を作ることで、その部屋にいるだけでスマートフォンなどに電力が供給されるのです。
今ある場所を、簡単にワイヤレス給電エリアにすることも考えています。例えば、タイルカーペットのように並べていくだけで、好きな形状の給電エリアを作れるパネル型のワイヤレス給電システムや、シートを貼り付けるだけで、ワイヤレス給電対応の家具にするといった研究にも取り組んでいます。
電源の制約がなくなった時に、どんな新しいデバイスが生まれてくるのかについても興味を持っています。例えば、水の中や体の中など、配線も通せないし電池交換もできないところでも利用できるコンピューターができるんじゃないか? 薄くて電池など絶対に入れられないようなフォームファクターの新しいデバイスができるんじゃないか? など、わくわくしながら研究に取り組んでいます。
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- サイエンスライター。日本ソフトバンク(現ソフトバンク)でソフトウェアのマニュアル制作に携わった後、理工学系出版社オーム社にて書籍の編集、月刊誌の取材・執筆の経験を積む。現在、ICTからエレクトロニクス、AI、ロボット、地球環境、素粒子物理学まで、幅広い分野で「難しい専門知識をだれでもが理解できるように解説するエキスパート」として活躍。