KADOKAWA Technology Review
×
Innovators Under 35 Japan 2026 候補者募集開始!
気候変動対策に4000億ドル、米「インフレ抑制法案」が可決
David McNew/Getty Images
気候変動/エネルギー 無料会員限定
Predicting the climate bill's effects is harder than you might think

気候変動対策に4000億ドル、米「インフレ抑制法案」が可決

米国史上最大となる約4000億ドルを気候変動対策に投資するバイデン政権の目玉政策が米連邦議会で可決された。温室効果ガスの大幅な削減に向けた大きな一歩だが、実際にどの程度削減されるかは不透明だ。 by Casey Crownhart2022.08.16

8月7日に米国連邦上院で可決(日本版注:12日に下院でも可決)された2022年インフレ抑制法案( Inflation Reduction Act)は4000億ドル規模となり、米国史上最大の気候変動対策とクリーンエネルギーへの投資となる。これは環境問題における明らかな勝利だ。だが、この資金拠出が二酸化炭素排出の削減にどれだけ貢献するかはいまだ明らかでなく、結果の確実性は一部の人たちが主張するよりはるかに低い。

税額控除、補助金、融資制度を組み合わせた同法案により、2030年までに最大年間10億トンの排出量削減が可能との推定もなされている。いくつかの分析によると、これは米国が温室効果ガス排出量を2005年のピークから最大40%削減できることを意味するという。

諸々のモデルは共通の推定値として、この40%削減に収束している。だが、一部のエコノミストは、税額控除の効果は不透明である可能性があり、将来の実際の排出削減量を予測するのは困難だと強調している。

不確実性の理由の一つは、同法案が規制や義務ではなく金銭的インセンティブに著しく依拠しているため、効果が消費者の選択やビジネスの意思決定に依存することである。そのどちらも予測不能に陥る可能性がある。

例えば、インフレ抑制法案では再生可能エネルギーによる電力をより多く生産する企業がふんだんに報奨を得られるため、排出量削減のほとんどは電力業界によって実現されると予想されている。だが、太陽光発電所や風力発電所の新規建設に対する地元の反対や、クリーンエネルギー・プロジェクトに対するその他の障壁によって進行が停止し、投資意欲が削がれ、展開が停滞する恐れがある。

タダで手に入る資金

税額控除は、インフレ抑制法の温室効果ガス排出量削減戦略の中核に位置付けられる。

同法案の税額控除の一部は個人向けだ。自宅をアップグレードして電化する人向けに約350億ドルが割り当てられ、電気自動車の新車購入では7500ドルの税控除(中古車の場合は4000ドル)がある。だが、どれだけ多くの人が電気自動車を購入するかは、経済の健全性、安定した供給、製品に魅力を見い出せるかどうかに依存している。

その他の税控除は、クリーンエネルギー・プロジェクトの建設に携わる企業や公共事業体が対象だ。これは法案の大きな部分を占め、原子力発電所の稼働継続を目指すプログラムを含めて約1600億ドルに上る。

これらの税控除には2つの方式がある。投資税控除はプロジェクト建設の初期投資に対する比率として計算され、30%から始まる。プラント費用が10億ドルの場合、建設業者は3億ドルの控除を受ける。他方、生産税額控除はプラントの生産量を基準にし、生産電力1キロワット時あたり2、3セントが支払われる。

クリーンエネルギー・プロジェクトの建設を目指す企業は、生産税額控除か …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Anthropic’s Code with Claude showed off coding’s future—whether you like it or not 「Claudeに任せてしまおう」 たった1年で激変したソフトウェア開発
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  3. It’s time to address the looming crisis in entry-level work. 「コーディングを学べ」もう通用せず、AIが若者の雇用を奪い始めた
▼Promotion
社会実装都市「ひろしま」の魅力に迫る ローカル ✕ イノベーション
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る