気候テック「冬の時代」になぜエネ企業のIPOが相次ぐのか?
気候テックへの連邦支援が打ち切られる米トランプ政権下で、地熱・原子力・太陽光の3社が相次いでIPOを果たした。データセンターの急拡大が電力需要を押し上げ、グーグルやアマゾンを後ろ盾に持つエネルギー企業に、投資家の資金が集まっている。 by Casey Crownhart2026.05.29
- この記事の3つのポイント
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- 米国でエネルギー系IPOが相次ぎ、地熱・SMR・太陽光企業が合計300億ドル超の時価総額を形成
- AI・データセンター需要増を背景に、大手テック企業が戦略的投資家として各社を支援
- 技術実証と工期遵守が今後の鍵で、失敗は後続企業の資金調達にも連鎖的影響を及ぼす
今年、米国では注目すべきエネルギー企業のIPO(新規株式公開)が相次いでいる。
太陽光発電・蓄電池企業のソルブ・エナジー(Solv Energy)は2月に60億ドル規模で上場した。小型モジュール炉(SMR)を開発するエックス・エナジー(X-energy)も4月に上場し、初日の取引で株価が急騰して時価総額は115億ドルに達した。最近では、地熱エネルギー企業のファーボ・エナジー(Fervo Energy)が5月中旬に上場し、現在の時価総額は約124億ドルとなっている。
これらはいずれもIPO市場における成功事例だ。データセンターの普及などを背景に電力需要が高まる時代に、これらの企業がこぞって電力供給に乗り出しているのは、決して偶然ではないだろう。各社の現状、この動きが電力網について何を示しているか、そして今後の展望を見ていこう。
まずはファーボ・エナジーから始めよう。本誌がこれまで何度も取り上げてきたこの企業は、強化地熱システム(EGS)の開発に取り組んでいる(本誌の2025年版「気候テック企業10」リストにも選出されている)。従来の地熱発電は、発電所の稼働に適した熱い岩盤・水・亀裂が存在する特定の場所を見つける必要があるが、ファーボは水圧破砕(フラッキング)技術を応用して必要な条件を人工的に作り出す。
同社は2017年に設立され、IPO前までに投資家から累計約15億ドルを調達した。
ファーボの最初の商業プロジェクトであるユタ州の「Cape Station(ケープ・ステーション)」は、約500メガワットの発電容量を持つ見込みだ。第1ユニットは10月までに顧客向けの発電を開始し、続く2ユニットも2027年1月までに稼働する予定となっている。
IPOによる新たな資金調達は、同社の事業拡大を後押しする可能性がある。ファーボは現在、600メガワット超に相当する、拘束力のある電力購入契約を締結している。また、合計で40ギガワット超の発電が可能な土地の賃借権も保有している(2024年時点で、米国の地熱発電設備全体の容量はわずか4ギガワットにすぎない)。
同社はまた、建設・掘削コストの削減にも注力している。ケープ・ステーション発電所の建設費は1キロワット当たり約7ドルと見込まれており、新設の原子力発電所よりは安いものの、米国における新設の天然ガス発電所の2倍以上のコストとなっている。
エックス・エナジーも、信頼性の高いクリーンエネルギーの供給を目指している。同社は小型モジュール炉の開発に取り組む次世代原子力企業群の一角を担っており、高温ガス冷却炉の建設を進めている。この炉は、核燃料を封入した球状のペブルにヘリウムを循環させる方式を採用している。各炉の発電量は80メガワットで、米国の商業用原子力発電所として最新の追加となったジョージア州プラント・ヴォグトル(Plant Vogtle)の4号機のような大型炉の出力の10分の1以下だ。
エックス・エナジーのIPOも好調で、公開後の取引で株価が急騰した。興味深い点として、同社は2023年にも上場を計画していたが、市場環境の悪化を理由に断念した経緯がある。
同社が商業プロジェクトで技術を実証するまでには、まだ数年を要する見通しだ。
私が昨年執筆した、テキサス州のダウ・ケミカル(Dow Chemical)の工場跡地に原子炉を建設しようとする同社の取り組みについての記事を覚えている読者もいるだろう。同社はこのプロジェクトについて最近、重要な環境審査の承認を受けたが、建設開始に向けた原子力規制委員会(NRC)の最終許可はまだ「待ち」の状態だ。
最後に、ソルブ・エナジーは主に電力会社や独立系発電事業者向けに、太陽光発電・蓄電プロジェクトを手がけている。太陽光発電と蓄電池は、電力網へ追加できる技術の中でも特に安価で導入しやすいため、同社は短期間で大量の発電容量を稼働させられる可能性がある。すでに35州で合計21ギガワット相当のプロジェクトを運用中だ。
エネルギー業界の多くの企業が、データセンター建設・運用の急拡大に期待を寄せている。AIブームはエネルギー情勢を一変させ、過去10年ほど比較的横ばいだった米国の電力需要を押し上げている。ソルブ・エナジーは、IPO前に証券取引委員会(SEC)に提出した書類の中で、データセンターについて10回以上言及している。
ファーボとエックス・エナジーは、AIを牽引するテック大手とも特に深い関係にある。グーグルはファーボの長年の投資家であり、同社との間でいわゆる「クリーン移行関税(clean transition tariff)」を先駆的に導入した企業でもある。アマゾン(Amazon)はエックス・エナジーの顧客であると同時に投資家でもあり、同社の約20%を保有しているとされる。
ファーボとエックス・エナジーはまた、政治的に有利な立場にある分野に属している。トランプ大統領と政権は風力発電などの再生可能エネルギーに対して既存の支援を打ち切り、新規プロジェクトの承認を遅らせるなど、厳しい姿勢をとっている。一方、地熱エネルギー、とりわけ原子力は連邦政府の支持を維持し、税額控除や補助金の交付も継続されている。
これらのIPOを通じて有力企業が資金を調達できれば、投資家がエネルギーセクターへの支援に自信を持つきっかけとなる可能性がある。たとえその資金が初期段階の企業よりも、これらのような後期段階のベンチャーに集中するとしても、だ。
今後1年間で、特に原子力や地熱の分野で、同様の上場を試みる企業が現れる可能性がある。
ここで注目すべき重要な点は、特にファーボとエックス・エナジーが技術の拡大展開に成功できるかどうかだ。いずれかの企業がつまずいたり、予定スケジュールを守れなかったりすれば、この極めて魅力的な道を追随しようとする企業にも波及効果をもたらしかねない。
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- ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
- MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。