KADOKAWA Technology Review
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新型コロナ後遺症、症状記録をサポートする新スマホアプリ
Stephanie Arnett/MITTR; Envato
A new app aims to help the millions of people living with long covid

新型コロナ後遺症、症状記録をサポートする新スマホアプリ

新しいアプリ「ビジブル(Visible)」は、新型コロナウイルス感染症の後遺症に苦しむ人々が、自分の症状を管理するのに役立ち、科学的理解を高めてくれる可能性がある。 by Rhiannon Williams2023.01.18

何が症状を和らげ、何が障害となるか。その理解につながる新しいスマートフォン・アプリ「ビジブル(Visible)」が、新型コロナウイルス感染症の後遺症(ロング・コビッド)を抱える人に役立つかもしれない。

新型コロナ遺症を世界保健機関(WHO)は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した後、同様の症状が2カ月以上持続する、または断続的に現れる症状」と定めている。人々は後遺症により頭痛、疲労、倦怠感、発熱といった症状に苦しんでいる。そうした患者のなかには、活動と(症状からの)回復のための休息期間とのバランスを図り、コントロールする「ペーシング」と呼ばれる習慣を実践する人もいる。しかし、無理をしてペーシングを続けすぎると、状況が悪化する恐れがある。

ビジブルは、症状がどのように変動するかを理解できるように毎日データを収集し、その推移による(症状の)管理を目的としている。ユーザーは毎朝、スマートフォンのカメラに60秒間指を当て、心拍数の変動(一定時間内に心臓が拍動する回数の変化)を測定する。脈拍の測定は、ユーザーの皮膚の色のわずかな変化を読み取ることで実現している。

その後ユーザーは夕方に、後遺症の具合を0〜3までの尺度で評価する(0は無症状、3は重症)。米国心臓協会(American Heart Association)の研究によると、神経系にストレスがかかったときに起こる心拍数の低下という症状が、後遺症を抱える人にはよく見られることが判明している。

心拍数の変動を追跡することで、その人の疲労が溜まりやすい時期の予測が容易になる。ビジブルは、このデータを使って1〜10までの「ペース・スコア」を作成する。8〜10は最近のペーシングが良好であり、4〜6は今後数日間は静かに過ごすべきであり、1〜3は休息を優先させるべきだと指摘する。つまり、ユーザーがいつ休息をとるかの判断ができるようにするのだ。

アプリと同名の開発会社ビジブルの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のハリー・リーミングは、2020年9月から後遺症を患っており、医療専門家が驚くほど無知なこの症状について、ユーザーのみならず社会一般の理解を深めるのに役立つことをこのアプリに期待している。同社は間もなくユーザーが、自分のデータをインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームと共有するかどうかを選択できるようになると述べている。

ビジブルは、後遺症に苦しむ人々を支援するために立案された、さまざまなプロジェクトの1つに過ぎない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは、最近、ランジー(Lugy)というアプリを開発した。このアプリは、新型コロナウイルス感染症の後遺症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などを患う人々の呼吸運動を支援する。また、英国のノーザン・ケア・アライアンズNHSグループ(Northern Care Alliance NHS Group)が開発したアプリは、患者が自身の症状の経過を記録することで、臨床医がそれに応じた治療を調整できるようにする。

後遺症の患者数の裏には、この症状への医療的無知にまつわる人たちの苦痛、悲嘆、失望が膨大にある。そう話すマイク・クラークは、2020年10月から後遺症を患いながら生活している、44歳のメディカル・コピーライターだ。彼は座っているだけでも心臓に負担がかかるため、毎日何時間も横になったまま過ごさなければならない。

「2日ほど特に体調の悪い日が続いた翌日のペース・スコアは、それ相応に低くなっていました。大したことではないように思われるかも知れませんが、医師の検査では身体のどこにも異常が見られないと2年間言われ続けてきた私にとって、10日間使用したビジブルのデータのほうが適切だと感じました」(クラーク)。

「何の進展も得られないまま2年間を過ごしてきた私のような後遺症を患っている人の多くは、誰でも、物でも、何でもいいから希望を与えてくれる何かを必死に求めています。私はビジブルというアプリから、おぼろげながらそれを感じ取れるのです」。

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米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」の執筆を担当。MITテクノロジーレビュー入社以前は、英国「i (アイ)」紙のテクノロジー特派員、テレグラフ紙のテクノロジー担当記者を務めた。2021年には英国ジャーナリズム賞の最終選考に残ったほか、専門家としてBBCにも定期的に出演している。
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