KADOKAWA Technology Review
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Earbuds: The Next Generation

イヤホンだってスマートになれる!「ヒア・ワン」製品レビュー

シンプルな外見に、左右3つずつのマイクとタッチ・センサーを内蔵したスマート・イヤホンが新発売された。改善点は多いが、イヤホンでこれだけスマートにできるなら、イノベーションはあらゆる製品で起こせそうだとわかる。 by Rachel Metz2017.02.22

Here One earbuds go on sale Tuesday, but they still have some kinks to work out with the technology.
21日に新発売のイヤホン「ヒア・ワン」は、今後の改善に期待の機能が満載

イヤホンにできることは、音楽の再生や通話、Siriやグーグル・ナウ等のパーソナル・アシスタントの呼び出し、といったところだが、もっとスマートにする余地がある。

ここ数年のウエアラブル機器市場では、手首用のガジェットばかりが注目され、耳用はあまりなかった。ちょっと考えてみれば、耳はハイテクなアクセサリーに最適の場所とわかる。現在、多くのユーザーがイヤホンやヘッドホンを身につけてスマホを操作しているし、耳は口に近いので音声指示に適しており、手で触りやすい位置にあり、タッチ操作もしやすい。

スタートアップ企業のドップラー・ラボは、そんな耳の可能性に気付いた企業のひとつだ。21日に新発売されたドップラー・ラボ初の一般向け製品である無線イヤホン「ヒア・ワン(Here One)」(1組300ドル)は、あらゆる音をフィルター機能で遮断したり、逆に強調したい音だけに絞り込んだりして、自分の周りの音を制御できる。

ただし、ヒア・ワンは一般消費者向けには高価すぎるし、まだ多くの改善点(たとえば、使い方によっては、電池は2、3時間しかもたない)がある。それでも、ヒア・ワンが搭載する機能は、ウエアラブル・テクノロジーの未来を示すようで興味深い。

ヒア・ワンの見た目は、昨年レビューしたドップラーの初製品とほぼ同じだが、機能は大幅に増えている。レストランで着席したとき、耳障りな周囲の音を減らせるのは以前と同じだ。グラフィック・イコライザーまたはヒア・ワンのアプリに設定済みのフィルターで、邪魔な音を手動で調整できる。今回は、左右のイヤホンに3つずつ内蔵のマイクにより、自分の後方や前方だけの声を大きく(小さく)できるようになった。また、電話で通話したり、音楽を聴いたり、iPhoneでSiriを呼び出したり、一部のアンドロイド・スマホ(現在サムスンのGalaxy S6とS7のみに対応)でグーグル・ナウも呼び出せる。ヒア・ワンの多くの動作は、左右どちらかのイヤホンを1回か2回タップすることで操作する。

最初にスマホ用アプリを起動すると、片方の耳でホワイトノイズを聞きながら、もう片方の耳で信号音が聞こえるかどうかの検査があり、パーソナライズされたリスニング特性を調整できる。あえてノイズを発生させるフィルターもある。たとえば「ノイズマスク」フィルターは、自分の周囲にホワイトノイズを発生させた状態を作り、周りの音を全般的に遮る。

理屈の上では、ヒア・ワンのタッチ操作はいいアイデアだったが、製品の信頼性は不十分だ。音楽の一時停止や再生、Siriへの命令や、再生中の音楽の音量を元に戻そうとして、耳を何度もタップすることがあった。この操作はややイラつくだけでなく、私の目の前に立っている人には、頭の片方を繰り返し叩くのがおかしな様子に見えたはずで、ちょっと恥ずかしかった。

ヒア・ワンで電話をかけるときの音声品質は改善すべきだ。通話相手の声はプラグ式の単純なイヤホンより聞こえにくく、相手にも私の声が聞き取りにくかった。

今のところ、ヒア・ワンは一般受けする製品というより、まだ特殊なニーズ向けの製品に留まっており、新しい物好きのオーディオマニアや本当に静かな通勤時間が欲しい人、また、補聴器を使うほどではないが、やや聞こえにくい場合があるため、医療補助機器まではお金を出したくない人にもよさそうだ。ヒア・ワンはスマート・イヤホンであり、ソフトウェアの更新で機能が向上していく。ユーザーの現在地や時刻等の要因を考慮してフィルターを提案する機能を、ドップラー・ラボは数カ月以内にリリースする計画だ。遠くない将来、ヒア・ワンの機能は多くのユーザーの必需品になっているだろう。

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レイチェル メッツ [Rachel Metz]米国版 モバイル担当上級編集者
MIT Technology Reviewのモバイル担当上級編集者。幅広い範囲のスタートアップを取材する一方、支局のあるサンフランシスコ周辺で手に入るガジェットのレビュー記事も執筆しています。テックイノベーションに強い関心があり、次に起きる大きなことは何か、いつも探しています。2012年の初めにMIT Technology Reviewに加わる前はAP通信でテクノロジー担当の記者を5年務め、アップル、アマゾン、eBayなどの企業を担当して、レビュー記事を執筆していました。また、フリーランス記者として、New York Times向けにテクノロジーや犯罪記事を書いていたこともあります。カリフォルニア州パロアルト育ちで、ヒューレット・パッカードやグーグルが日常の光景の一部になっていましたが、2003年まで、テック企業の取材はまったく興味がありませんでした。転機は、偶然にパロアルト合同学区の無線LANネットワークに重大なセキュリテイ上の問題があるネタを掴んだことで訪れました。生徒の心理状態をフルネームで記載した取り扱い注意情報を、Wi-Fi経由で誰でも読み取れたのです。MIT Technology Reviewの仕事が忙しくないときは、ベイエリアでサイクリングしています。
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