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エディターズ・レター:「世界を変える10大技術」はどう変わったか
「ブレークスルー・テクノロジー10」のリストは、世界を変える革新的なテクノロジーを突き止めるという核心に迫るものだ。技術の進歩の魅力的なスナップショットであると同時に、私たちが生きている時代のスナップショットでもある。米国版編集長からのエディターズ・レター。 by Mat Honan2023.03.07
MITテクノロジーレビューはこれまで、22年間にわたって「ブレークスルー・テクノロジー10」の年次リストを公開してきた。2018年には、ブレークスルーを「私たちの生活に大きな影響を及ぼすテクノロジー、あるいはテクノロジーの集合体」と定義した。かなり幅広い。だが、これこそが、MITテクノロジーレビューが突き止めようとしている、世界を変える革新的なテクノロジーの核心に迫るものである。
バックナンバーを掘り返して過去数年分のリストを精査するのは楽しい。変化が起こっていることが見てとれるからだ。このリストは大規模なテクノロジーのブレークスルーの進歩を示す魅力的なスナップショットである。エネルギー、人工知能(AI)、バイオテクノロジー、量子コンピューティング、気候テックをはじめ、科学と工学が交差する多くの中核分野で達成された進歩が記録されている。
リストは私たちの生きている時代のスナップショットでもある。2022年のリストを発表する時に、私は次年度のリストには新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の事項を挙げなくて済むようになってほしいと書いた。過去2年間は、mRNAワクチン、デジタル接触者追跡、新型コロナウイルス感染症治療法、変異株追跡などがリストを占め、パンデミックの深刻さを思い起こさせる厳しい備忘録になった。だが、私たちはまさにそれらのテクノロジーの進歩に助けられ、ようやく新型コロナウイルス感染症を制圧し始め、いくらかは正常に戻ったと感じながら生活を送れるようになっている。
今年のリストには新型コロナウイルス感染症関連のテクノロジーは含まれていないが、人類が直面している重大な問題を思い出させるものは他にもある。ウクライナでは今も戦争が続いている。人工中絶が米国の多くの州で制限され、州によっては禁止になった。気候変動に立ち向かう中で受ける逆風は、依然として強い。
軍事用ドローンの利用拡大など、いくつかは必ずしも良いニュースとは言えない。今年のリストをまとめる上で特に興味深かった議論の1つは、文字どおり殺人のために設計されたテクノロジーを含めるか否かだった。だが、結局のところ、このリストに掲載することの意味は、あるテクノロジーがもたらす潜在的な影響についての意見を表明することであり、支持の表明ではない。
他に起こっている変化に関しては、楽観視できる理由もある。クリスパー(CRISPR)などの遺伝子編集ツールや、オンデマンドで臓器を生産する可能性など、人間がより長く健康的な生活を送れるようにする支援技術に進歩が見られる。バッテリーのリサイクルや、電気自動車(EV)をガソリン自動車の代替として真に実用化する面でも改善が進んだ。
最後に、今年のリストで私が特に気に入ったのは、人類の偉業に畏怖と驚きを覚えるテクノロジーだ。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope)はもちろんリストに入れた。画像生成AIもそうだ。今後数年間のうちにアートの作成だけでなく、あらゆる分野に用途が広がるだろう。 そして、多くの新しい科学的発見を引き出す可能性を秘める古代人のDNAを解析する能力にもとにかく興奮させられる。何しろ、ネアンデルタール人のDNAが解明されるのだ。
ぜひ特集を楽しんでほしい。
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- マット・ホーナン [Mat Honan]米国版 編集長
- MITテクノロジーレビューのグローバル編集長。前職のバズフィード・ニュースでは責任編集者を務め、テクノロジー取材班を立ち上げた。同チームはジョージ・ポルク賞、リビングストン賞、ピューリッツァー賞を受賞している。バズフィード以前は、ワイアード誌のコラムニスト/上級ライターとして、20年以上にわたってテック業界を取材してきた。