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「生物学的に老けている」と言われたら何をすべきか?
Stephanie Arnett/MITTR | Envato
A test told me my brain and liver are older than they should be. Should I be worried?

「生物学的に老けている」と言われたら何をすべきか?

生物学的年齢を割り出す「老化時計」はどの程度、信用できるのだろうか。そして、その測定結果を受けて私たちは何をするべきなのだろうか。 by Jessica Hamzelou2023.04.25

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

ここ、北半球は春である。私の住むロンドンの公園や植木箱は、水仙やチューリップ、ヒヤシンスが満開だ。週末には何頭かの子羊さえ見かけた。しかし、私はここで、自分の死がどれくらい近いか考えている。

昨年、私は自分の生物学的年齢を知るために検査を受けた。DNA上の化学マーカーを評価するこのような検査は、自分の体がこれまでにどれくらい傷ついているか、そして本質的には、あと何年寿命が残っているか、推定することを目的としている。

検査を受けたのは35歳の時だった。そして、検査結果は、私の生物学的年齢も35歳であることを示すものだった。つまり、他の人たちのデータとの比較において、私は正常な速さで歳を取っているということだ。しかしその後、この検査を実施した会社が提供サービスをアップデートした。そして数カ月前に私の結果を再分析し、脳、肝臓、心臓、血液を含む9つの系統ごとに、個別の生物学的年齢を教えてくれた。

昨年の検査結果では、植物性の食事と定期的なヨガにもかかわらず、私は生物学的に平均より若くないということを知り、がっかりした。だから、自分の脳の生物学的年齢が実年齢より4歳も高いことを知ったとき、どれほど動揺したかを想像してほしい。肝臓に至っては、なんと7歳も高かった。確かに私は英国人だが、飲酒量がそれほど多いとは思わない。このような結果を、どれくらい真剣に受け止めるべきだろうか?

10年ほど前に開発された最初の「老化時計(エイジング・クロック)」は、唾液サンプルを使ってDNA上のエピジェネティック(後成的)マーカーを分析するように設計された。こうしたマーカーは、基本的に、DNAに付着して遺伝子がタンパク質を作る方法を制御する化学物質である。それらのマーカーのパターンは年齢と一致することが、研究で示されている。科学者たちは、そのようなマーカーを分析するだけでその人の年齢を推定するように、アルゴリズムを訓練できる。

それ以来、科学者たちはこのテクノロジーの改良を重ねてきた。新しい老化時計には、エピジェネティック・マーカーだけでなく、血糖値や白血球数など、その他のさまざまな健康バイオマーカーが組み入れられている。これらの検査は、その人の生物学的年齢について、ある程度のことを教えてくれるかもしれない。過ぎた誕生日の回数だけでなく、健康な生活があと何年続くかということも。

現在、さまざまな老化時計が世に出ている。個別の臓器用に開発されたものもあれば、特定の動物種のために設計されたものもある。血液サンプルを分析するものや、マイクロバイオーム(微生物叢)を評価するものもある。私が昨年受けた検査は、エリシウム(Elysium)が開発した、唾液のサンプルを使ってエピジェネティック・マーカーを評価するものだ。

エリシウムのチームはその後、この検査の対象を拡大してきた。小さな試験管に唾液を入れて送れば、すぐに、自分の総合的な生物学的年齢だけでなく、心臓、脳、肝臓、腎臓、血液、代謝系、免疫系、ホルモン系、そして炎症系と呼ばれるものなどの具体的な生物学的年齢を教えてもらえる。

それらのスコアは、さまざまなバイオマーカーと、個別系統の健康状態との関連性を評価することによって開発されたと、エリシウムの創業者兼主任科学者であるレニー・グアレンテは言う。エリシウムの科学者たちは、ボランティアの大規模な研究から健康状態や死亡率のデータを収集し、それを組み入れてきた(ボランティアの数は公表していない)。これらの研究から、個々の臓器の健康状態を示すバイオマーカーが明らかになった。それらのバイオマーカーをDNAサンプル上のエピジェネティック・マーカーのパターンと結びつけることにより、エリシウムの独自アルゴリズムで各系統の生物学的年齢を推定できるようになる。

昨年、私がエリシウムに送った唾液の分析によって明らかになったのは、生物学的年齢と当時の実年齢が一致していたとしても、体の各系統の年齢はバラバラであるということだ。

私の脳は39歳、肝臓は42歳という生物学的年齢が示された。ホルモン系も41歳と、あまり良いとは言えない。一方、腎臓や炎症系、血液系の生物学的年齢はすべて34歳と推定され、実年齢より少しだけ若い。最も良好だったのは心臓で、生物学的年齢は31歳である。そう、私は心臓が若いのだ。

このような結果を提示され、私の頭はそれを解釈しようとしてフル回転し、過熱状態に陥ってしまった。ストレスや睡眠不足のせいで脳が老け込んでいるに違いない。お酒の飲み過ぎか、あるいは長年にわたる鎮痛剤の飲み過ぎのせいで、肝臓が年齢相応の状態を維持できていないのかもしれない。私は子宮内膜症なのだが、それが体内でのホルモン生成やホルモン反応に影響しているのだろうか? 心臓の若さは、私の家系に心臓疾患が多いことを考えると意外である。しかし、私はこの結果を受け入れるつもりだ。

次のステップは、これらの結果を受けてどうするべきか考えることである。エリシウムは、それぞれのスコアごとに一連の推奨事項を提示してくれる。私の老け込んだ脳については、もっと運動し、より社交的になり、十分な睡眠をとって、喫煙と飲酒を避けるように推奨している。また、エリシウムのWebサイトで販売されているサプリメントの摂取も勧められた。

ただ、もっと睡眠をとり、運動するべきだということは、もう知っている。そんなことは、みんな分かっているだろう。生物学的年齢スコアで、私たちの行動は変わるだろうか? 私の場合は変わらない。もっと運動したり、睡眠をとったりする時間があるなら、すでにやっている。私は、エリシウムでバイオインフォマティクス担当副社長を務めるデイル・サンプソンに、自分自身のスコアを知ったことで何かが変わったか質問してみた。何も変わっていなかった。

サンプソン副社長は自身の年齢を38歳と教えてくれたが、エリシウムの検査によると、生物学的年齢は36歳だという。しかし、脳年齢は43歳という結果だった。サンプソン副社長は、運動のし過ぎだと考えている。運動のし過ぎは、一部の研究で老化の加速と関連付けられている。サンプソン副社長は検査結果を受け取った後、運動を減らしたのだろうか? 彼の答えは「いいえ」である。

いずれにせよ、このような検査がどれほど正確なのかは、わからない。そもそもエリシウムが認めるところによれば、検査には老化への影響が知られている多くの要素が組み入れられていない。たとえば、マイクロバイオームの役割が考慮されていない。あるいは、古い細胞が炎症性化学物質の有毒な混合物を生成して周囲の組織に損傷を与えることがある「老化反応」と呼ばれるプロセスについても同様である。

エリシウムは多くのことを公開していないため、この検査がどの程度有効なのか評価するのは難しい。研究チームが考慮に入れたバイオマーカー、およびそれらのバイオマーカーと特定の臓器の損傷との関連性や、唾液サンプルで測定可能なエピジェネティック・マーカーとの一致について、教えてくれないのだ。

人の脳の年齢評価に関しては、エピジェネティック・マーカーに基づく検査で全体像がわかるとはとても思えないと、スコットランドのグラスゴー大学で生物学的時計を研究しているポール・シールズ博士は言う。「あなたが性能について知りたがるのも当然です」。科学者たちはこれまでに、認識、記憶、知能などに関する検査を数多く開発してきたが、いずれも私の脳年齢スコアには組み入れられていない。

他の臓器についても同じことが言えるかもしれないと、腎臓の老化度合いを研究しているシールズ博士は言う。「唾液のサンプルを臨床的に使用することで、腎臓の機能的な能力についての情報を得ることはできません」と、同博士は話す。ある人の腎臓がどの程度機能しているか評価するには、血液検査や尿検査が必要だ。

こうしたことは、エリシウムや他の機関の研究者がしている研究を否定するものではない。この科学は魅力的であり、まだ新しい。エリシウムのチームは同社の検査について、この種で初めてのものであり、現在も進行中の研究であると話す。「これらの老化時計を確立されたものと見なすべきではありません」と、グアレンテは言う。「私たちは時計の改善を続けたいと考えています。それらの時計は進化し、より良いものになると思っています」。

MITテクノロジーレビューの関連記事

見逃しているかもしれないので、生物学的年齢に関する昨年の記事を紹介しておこうこれらの検査とその結果から判断できることにも触れている。

MITテクノロジーレビューは毎年、「ブレークスルー・テクノロジー10」を発表している。2022年は読者投票(米国版)で老化時計が11番目のブレイクスルーに選ばれた。この技術がどれくらい進歩したかということについて記事を書いている

老化時計を開発している多くの人々が、その時計を使って寿命を延ばす治療が有効かどうかテストすることを望んでいる。長寿に関する研究には、超富裕層が巨額の投資をしている。こちらの記事で、長生きを望む億万長者の投資家たちが集まる会議での騒動について書いた

編集部のアントニオ・レガラード編集者は、オープンAI(OpenAI )のサム・アルトマン CEO(最高経営責任者) が、長寿の実現について研究している企業に 1 億 8000 万ドルを投資したという記事を書いた長寿研究に10億ドルを投資するサウジアラビアの計画についても報告している。

長寿研究は人間以外にも広がっている。ペットの犬の寿命を延ばそうとしている科学者たちに関する記事はこちら。そして、最終的には飼い主の寿命も。

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ジェシカ・ヘンゼロー [Jessica Hamzelou]米国版 生物医学担当上級記者
生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

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