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2024年注目の「気候テック15社」リストから見えてくること
Stephanie Arnett/MIT Technology Review | Solugen, BYD, Sublime Systems, Envato
These 15 companies are innovating in climate tech

2024年注目の「気候テック15社」リストから見えてくること

MITテクノロジーレビューは例年、気候変動への取り組みで傑出したテック企業15社のリストを公表している。この企業リストは、気候テクノロジーについて考える際のいくつかの重要なテーマを例示している。 by Casey Crownhart2024.10.31

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

ついに公開!MITテクノロジーレビューは2024年に注目すべき気候テック企業15社のリストを発表した。毎年恒例のこのプロジェクトには本誌の気候チームが多くの時間と熟考を注ぎ込んでおり、ようやく皆さんにお披露目できることを大変うれしく思う。

私たちの目標は、気候変動への取り組みに影響を及ぼすと思われるビジネスにスポットライトを当てることである。今年のリストには、5大陸に本社を置く幅広い業界の企業を取り上げている。まだご覧になっていないならぜひ一度、目を通すことをお勧めしたい。各企業のプロフィール欄には、リストへの掲載理由、ビジネスがもたらす潜在的なインパクト、そして直面しそうな課題についてまとめている。

ここでは、今年のリスト全体について考えたことを読者と共有したい。この企業リストは、気候テクノロジーについて私が執筆する際に何度も目にする、いくつかの重要なテーマを例示している。 

1. 気候変動への対処には、大規模かつ迅速に多くのものを作り上げる必要がある

リストに取り上げた一握りの企業が突出している理由として挙げられるのは、それらの企業が圧倒的なスケールでテクノロジーを構築し、展開していることである。スケールは必要だ。気候変動へ対処するには、毎年数百億トンが記録されている二酸化炭素排出量を実質ゼロにしなければならないからだ。

たとえば、2023年のリストに取り上げていたBYD(比亜迪)を再び掲載することは、チームにとって疑う余地のない選択だった。

世界最大の電気自動車(EV)メーカーという称号は、EVをどう定義するかにかかっていた時期があった。プラグインハイブリッド車を含めれば、その王冠を手にするのはBYDだ。純粋主義的な視点で完全なバッテリー駆動車だけを数に入れるなら、テスラ(Tesla)が勝利する。

しかし現在、BYDは2023年の最終四半期にテスラの販売台数を上回り、その純粋主義的称号すら手に入れようとしている。EVを路上に投入する圧倒的なスピードとスケールを持っている点で、私はこの企業に注目している。

他の企業はまだ成長途中だが、大きな進歩を遂げている。ランザジェット(LanzaJet)は、毎年900万ガロンの代替ジェット燃料を生産できる工場をジョージア州に開設したばかりだ。これは、毎年数十億ガロンが使用されている燃料のほんの一部に過ぎないが、代替燃料への大きな前進である。また、米国の太陽光設備メーカーであるファーストソーラー(First Solar)アラバマ州に11億ドルの工場を開設したばかりであり、2025年にはルイジアナ州に別の工場開設を予定している。

2. 長年使われているシステムに組み込まれている気候への影響については、古い問題に対処するための創造的な新手法が求められている 

気候変動への対処競争の中には、おそらくほとんどの人にとってなじみ深いものがある。たとえば、化石燃料とそれに関連する排出物は、発電所やガソリン自動車ではっきりと目に見える。

しかし、隠された気候課題は身近な物の中に潜んでいる。シャンプーボトルから歩道まで、製品の生産には、地球温暖化を招く汚染物質を大量に排出する可能性が伴う。当誌は、こうした見えにくい問題に取り組むいくつかの企業を取り上げている。

サブライム・システムズ(Sublime Systems)は、今年もリストに登場している。同社は、従来の方法に比べて大幅に低い排出量でセメントを製造する電気化学プロセスの規模拡大を進めている。その他、化学業界で活躍している企業にもスポットライトを当てた。化石燃料の代わりに、生物学的出発原料で化学物質を製造しているソリュージェン(Solugen)だ。ヒューストンで工場を運営している同社は、ミネソタ州にも別の工場の開設を控えている。

3. 気候変動は、事実上あらゆる業界に関わる大きな問題であり、やるべき事が山ほどある

この数カ月にわたって候補企業について議論する中で、チームの望む業界すべてを取り上げることがいかに難しいかを知った私は愕然とした。たとえば、電池に取り組んでいる企業だけで、個人的に15社を選べただろう。

エネルギー企業や輸送企業も、もちろんリストに載せたかった。しかし、農業、化学、燃料もある。それに、気候変動への適応も考慮すべきではないか。最終的なリストは、「気候テック」 という包括的な言葉がいかに大きなものになったかを示していると思う。

例として、オーストラリアのルミン8(Rumin8)がある。同社は、牛が吐き出すメタンの量を減らすことができる牛用サプリメントを製造している。他にはパノAI(Pano AI)は、地球温暖化が進むにつれ悪化している山火事を早期に検出するために、人工知能(AI)と連携するカメラステーションを設置している。

世界には、気候変動に関して必要な進歩を遂げるためにやるべき事が無数にある。これらの企業が今年、そしてその先に、どのような変化を創り出すことができるのかを見守っていきたい。


気候変動関連の最近の話題

  • ハリケーン「ヘレン(Helene)」による被害の最新の写真を見てほしい。この嵐はカテゴリー4の勢力でフロリダを襲った。だが死亡者数が最も多かったのは、壊滅的な洪水に見舞われたノースカロライナ州西部の山岳地帯だった。(ワシントンポスト紙
    → ジェフ・ヴァンダミアがゲストエッセイで述べているように、長年ハリケーンと暮らしてきた人々でさえ、過去になかった厳しい決断を迫られている。(ニューヨーク・タイムズ紙
  • ハリケーンによる直後の被害は明らかだが、長期的な影響は送電網全体に波及する可能性がある。ノースカロライナ州西部では主要機器が故障しており、修理用品の深刻な不足が起こっている。(ラティチュード・メディア
  • 今、米国で問われている主要な政策問題:クリーン水素はどこへ向かうべきなのか。カナリー・メディア
    → 今年の初め、私は水素がほぼ何にでも利用できること、しかし恐らくそうすべきではない理由を説明した。(MITテクノロジーレビュー)
  • ニューヨーク・タイムズ紙が主催したニューヨーク市の気候問題イベントで、石油会社の幹部が登壇すると、抗議者によって講演は中断された。インサイド・クライメート・ニュース
  • チャーム・インダストリアル(Charm Industrial)は、米国森林局と協力して二酸化炭素除去のパイロットプロジェクトに取り組んでいる。森林間伐プロジェクトの木材やその他の材料をバイオ燃料油に変換し、地中深くに注入する、というのがそのアイディアだ。 (ヒートマップ・ニュース
    → チャーム・インダストリアルのテクノロジーについては、トウモロコシの茎をベースにしたものを2022年の記事で取り上げている。(MITテクノロジーレビュー
  • 富める国々は、気候変動が引き起こした災害による損失と損害への賠償を支援するために数億ドルの拠出を表明した。それは専門家が述べている必要額のほんの一部であり、新たな資金調達の動きは鈍化している。(グリスト
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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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