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30年までに最大500万トン、生成AIブームで大量の電子廃棄物
Photo Illustration by Sarah Rogers/MITTR | Photos Getty
AI will add to the e-waste problem. Here’s what we can do about it.

30年までに最大500万トン、生成AIブームで大量の電子廃棄物

生成AIブームによって大量の電子廃棄物が発生することが新たな研究で試算された。2030年までに最大500万トンの電子廃棄物が生み出される可能性があるという。 by Casey Crownhart2024.11.05

この記事の3つのポイント
  1. 生成AIによる電子廃棄物は2030年までに最大500万トンに達する可能性がある
  2. 電子廃棄物には有害物質や貴金属が含まれ適切な処理が必要である
  3. 電子機器の長期使用や再利用リサイクルによって廃棄物を最大86%削減できる
summarized by Claude 3

新しい研究によると、生成AIは、2030年までに最大500万トンの電子廃棄物を生み出す可能性があるという。

現在、世界全体で毎年6000万トンを超える電子廃棄物が生じているのに比べれば、わずかな量である。しかしそれでも、増大し続けている問題の重要な一角を占めていると専門家たちは警告する。

電子廃棄物(E-Waste)とは、エアコンやテレビ、ならびに携帯電話やノートパソコンなどの個人用電子機器といった物が廃棄される際、それらの廃棄物を表すために使われる用語である。それらの機器にはしばしば有害または有毒な材料が使われており、適切に処分しないと人間の健康や環境に害を及ぼす可能性がある。そうした害の可能性だけでなく、洗濯機や高性能コンピューターなどの電化製品がゴミとして捨てられると、機器の内部で使われている貴重な金属も無駄になり、リサイクルされることなくサプライチェーンから外されてしまう。

『ネイチャー・コンピューテイショナル・サイエンス(nNature Computational Science)』誌に10月28日付けで掲載された研究によると、生成AIが2030年までに新たに生み出す電子廃棄物の総量は、普及率にもよるが、120万トンから500万トンになる可能性があるという。

「この増加が、既存の電子廃棄物問題をさらに深刻化させるでしょう」。研究報告書を共同執筆したイスラエルのライヒマン大学の研究者、アサフ・ザチョール博士は電子メールで述べた。

この研究は、電子廃棄物に対する人工知能(AI)の影響を定量化しようとしている点で斬新であると、国連訓練調査研究所(United Nations Institute for Training and Research)の上級科学専門家、キース・バルデ博士は言う。バルデ博士は、年次報告書『世界電子廃棄物モニター(Global E-Waste Monitor)』最新版の執筆者である。

生成AIによって発生する電子廃棄物のうち、大きな割合を占めるものは、データセンターやサーバーファームで使われているサーバーやGPU、CPU、メモリーモジュール、ストレージデバイスなどの高性能コンピューティング・ハードウェアである。それらの機器には、他の電子廃棄物と同様に、銅、金、銀、アルミニウム、レアアース元素などの貴重な金属だけでなく、鉛、水銀、クロムなどの有害な材料も含まれていると、ザチョール博士は言う。

AI企業が非常に大量の廃棄物を生み出す理由の1つは、ハードウェア技術の進歩の速さだ。通常、コンピューティング・デバイスの寿命は2~5年であり、頻繁に最新版のデバイスと交換される。

電子廃棄物問題はAIの領域をはるかに超える大きな問題ではあるが、AI技術の急速な成長は、私たちが電子廃棄物にどう対処し、この問題に取り組むための基礎をどう作るかということを検討する機会を提供する。幸いなことに、予想される廃棄物の量を減らすのに役立つ可能性がある戦略がある。

電子機器をより長く使うことでテクノロジーの寿命を延ばすことは、電子廃棄物を削減する最も重要な方法の1つであると、ザチョール博士は言う。部品の再生や再利用も重要な役割を果たすことができ、リサイクルやアップグレードが容易になるような方法でハードウェアを設計することも可能だ。それらの戦略を実施することで、最良のシナリオでは電子廃棄物の発生を最大86%削減できると、この研究では予測されている。

世界電子廃棄物モニター 2024(2024 Global E-Waste Monitor)によれば、現在、公式に回収・リサイクルされている電子廃棄物は、わずか22%程度である。非公式なシステムを通じて回収・再生されている電子廃棄物の量はもっと多い。これには、電子廃棄物管理インフラがまだ整っていない低・中所得国の電子廃棄物が含まれる。そのような非公式のシステムは、貴重な金属の回収はできるものの、有害材料の安全な処分の仕組みは組み入れられていないと、バルデ博士は言う。

AI関連電子廃棄物を削減するにあたってのもう1つの大きな障壁は、データセキュリティに関する懸念である。機器を破壊すれば情報が漏れないことが保証されるが、機器を再利用したりリサイクルしたりするには、データを保護するために別の手段を用いることが必要になる。特に機密データを扱う企業は、リサイクルする前にハードウェアから機密情報を確実に消去することが重要であると、ザチョール博士は言う。

AIから発生するものを含め、電子廃棄物が適切にリサイクルまたは処分されるようにするには、さらなる方策が必要になるだろう。貴重な金属(鉄、金、銀を含む)を回収することは、リサイクルの有益性を経済的に実証するのに役立つ可能性がある。しかし、電子廃棄物のリサイクルにはまだ代償が伴う可能性が高い。というのも、機器内部にしばしば使われている有害な材料の安全な取り扱いにコストがかかるからだと、バルデ博士は言う。

「企業やメーカーにとって、自社製品が環境や社会に与える影響に責任を持つことは非常に重要です」と、ザチョール博士は話す。「そうすることで、私たちが頼りにしているテクノロジーによって、人類や地球の健康が犠牲にならないようにできるのです」。

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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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