KADOKAWA Technology Review
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「感染症と遺伝の関係を解明、次のパンデミックに備え」金井仁弘
SHINSUKE SUGINO
IU35 Japan Summit 2024: Masahiro Kanai

「感染症と遺伝の関係を解明、次のパンデミックに備え」金井仁弘

MITテクノロジーレビュー「Innovators Under 35 Japan Summit 2024」から、マサチューセッツ総合病院所属の金井仁弘氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by MIT Technology Review Japan2025.01.29

MITテクノロジーレビューは2024年11月20日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2024」を開催した。Innovators Under 35は、テクノロジーを用いて世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。5 回目の開催となる本年度は、国内外で活躍する35歳未満の起業家や研究者など10名のイノベーターを選出した。

その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの活動内容とその思い、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。

金井仁弘(マサチューセッツ総合病院)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界で7.8億人の感染者と700万人以上の死者を出した未曾有の感染症です。ヒト遺伝学者として、私はこのコロナウイルス感染症と遺伝の関係を研究してきました。

感染症のリスクは、換気や手洗い、マスク着用などの環境要因と、個人が持つヒトゲノムという遺伝要因によって決定されます。ヒトゲノムは、DNA中に書き込まれた30億文字の遺伝情報で、人類全体で99.9%が同一である一方、残りの0.1%(約300万文字)が個人間で異なっているとされています。インフルエンザやノロウイルス、HIBなど、既知の感染症は一定の割合で遺伝することがこれまでの研究で確認されています。

この新型コロナウイルスと遺伝の関係を解明するため、2020年に「COVID-19 Host Genetics Initiative」という国際共同研究コンソーシアムを立ち上げました。世界35カ国から3000名以上の研究者が参加し、新型コロナウイルス感染症患者22万人と健常者340万人のゲノムを比較分析しました。その結果、新型コロナウイルスへの感染のしやすさや重症化に関連する51カ所のゲノム領域を特定し、そのメカニズムの一端を解明しました。

特定された領域には、ウイルスの侵入経路や粘膜における生体防御、免疫に重要なタイプ1インターフェロンなど、生物学的に重要な領域が多く含まれていました。このようなゲノムに基づくメカニズムの解明は、新薬開発や既存薬の転用にも貢献しています。

新型コロナウイルス感染症は一旦落ち着きを見せていますが、次のパンデミックはいつ起きるかわかりません。今回の研究活動は、パンデミック対策における遺伝学者の貢献と国際共同研究の重要性を示しました。より良い未来の実現に向けて、国際的なゲノム解析を通じて感染症を含む幅広い疾患の遺伝的背景を解明し、パンデミックにレジリエントで健康な社会の実現を目指していきたいと考えています。

 

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